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第1章〜序章編〜
異世界へ
しおりを挟む魔法が使える異世界。
それは、わたしにとって、とても素晴らしく心躍る言葉である。
「ところでリデル、異世界って、どんな所があるの?」
「そうですね、いろんな世界がありますが。逆に聞きますが、貴方はどんな世界が良いですか?」
「私?う~ん、多くは望まないよ?でも衛生面はちゃんとしていれば、良いかな?」
日本人としては、毎日お風呂に入れないのは嫌だし、衛生環境が整備されていないのは我慢が出来ないかな?
リデルが、目を瞬かせる。
「えっ、異世界への希望は、それだけですか?」
「まぁ、ね?どこも住めば都って言うじゃない?」
「ふふ、そうですね。」
多くは望まない。
少しの幸せがあれば、私は嬉しい。
リデルと笑い合った。
「分かりました。では、魔法が使え、衛生面がしっかりした異世界、と。」
淡い光がリデルの手の平に集まり、おさまると、一冊の本が。
おおっ、これぞファンタジーだね。
心の中で喝采を上げる。
「えっと、」
ぱらぱらと、リデルが本をめくる。
その中に、異世界についての情報が載っているのかな?
わくわくしながら、リデルの反応を待つ。
「・・・リグラルドセルと言う世界は、どうでしょ?」
「リグラルドセル?どんな所?」
「人口は地球よりも少ないですか、多種多様な種族が住む世界です。もちろん、ちゃんと魔法も使えますよ。」
「おおっ、多種多様の種族。」
なんて、良い響き。
「じゃ、じゃあ、そこで!」
「即答ですか。まぁ、良いですが・・・。なら、行き先は、リグラルドセルで決定ですね。」
「あっ、リデル。異世界転生ではなくて、異世界転移でお願い出来るかな?」
異世界転生では、また最初から人生を始めなくちゃいけなくなる。
それは、困るんだ。
「分かりました。異世界転移ですね。容姿はそのままをベースにしますか?」
「容姿・・・・、う~ん、変えようかな?」
特に今の自分の容姿に対して、思入れがあるわけじゃないし。
未練もない。
お母さんには悪いと思うけど、愛着はないのだ。
「なるほど、容姿は変える、と。新しい容姿について、何か希望はありますか?」
「あちらの世界で目立たないような髪色と、容姿は醜くないぐらいで良いかな?」
「・・欲がありませんね?」
少ない私の要求に微笑ましそうにリデルが笑う。
「絶世の美女とかにも、容姿を変える事が出来ますよ?権力者のお妃さまにだってなれる可能性だってあった方が良いのでは?」
「はっ?絶世の美女なんか、どうでも良いし。余計な厄介ごとなんかに巻き込まれたくないもの。」
容姿で、お偉いさんに目を付けられるとか最悪でしょ。
「・・そうですか。では、新しい容姿は、こちらで調整しますね。後は、・・・僕から与える特殊技能はどうしますか?」
「特殊技能?」
「要は、欲しい能力の事です。スキルとでも言いますか、新しい異世界へ行く貴方へのプレゼントですね。1つだけ欲しいスキルとして付与が出来ますよ。」
「1つだけ?なら、決まってる。創造魔法が欲しいわ。」
強奪系のスキルも捨て難いが、相手を倒すとか、接触が条件とか制約が多そうだし。
なら、創造魔法で決まりでしょ。
欲しいスキルを、自分で作り出せるんだもの。
「分りました、特殊技能は創造魔法ですね。それなら可能ですので、スキルとして付与させて頂きます。」
「あっ、転移先は人に見られないぐらい無難に街から少し離れた、安全な森の中にしてくれる?突然現れた姿を見られて、面倒な事になりたくないの・」
「もちろんです。それぐらいならお任せ下さい。」
よしっ!
転移先で、即死亡は免れた。
しばらく時間が稼げれば、創造魔法で色々と魔法を作れる。
「後は、あちらの世界で使えるお金と、当分の食料も与えますね?どうぞ、これを。」
リデルが私へ差し出したのは、1つの指輪。
「リデル、これは?」
「この指輪の中にお金と、食料を入れておきました。後、護身用に武器となる短剣も。あぁ、指輪の中の物は直ぐに取り出して下さいね?1時間ぐらいで効力が無くなり、指輪は自然に中の物ごと消滅しますので。」
「えっ、消えちゃうの?」
「すみません、神界のものは、長時間下界に持っていけなんです。」
「・・そっか、分かったわ。」
指輪を自分の指にはめながら、異世界に転移したら直ぐに創造魔法でアイテムボックスを作る事を心にメモする。
それと、武器ね。
短剣だけじゃ、自分の身を守るには心許ないもの。
「では、僕からの話は以上です。他に何か質問や聞きたい事はありますかね?」
「うーん、大丈夫かな?」
転移する世界の詳しい情報は、街にでもたどり着いたら集めていこう。
その方が冒険みたいで楽しそうだし。
「では、異世界への転移を開始します。心の準備は良いですか?」
「了解!いつでも良いよ!」
頷けば、私の身体が魔法陣らしきもので輝き出す。
「幸せになって、“ーーー”。」
リデルが何か呟いたのを最後に、私の意識が暗転した。
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