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第13章〜帝国編〜
撤退の手伝い
しおりを挟むニュクスお母様の愛し子。
その名の威力は、この争いで重要な抑止力となる事だろう。
「愛し子様、他の国へのリュストヘルゼ帝国の寵妃が魔族であると言う通達はいかがなさいますか?」
「ヒューイット様、それでしたら既に各国の王へと私が手紙を送りました。リュストヘルゼ帝国の寵妃マリアが魔族で、皇帝陛下は彼女に魅了されて今回の各国への宣戦布告を出したのだと。」
その時、私の側に神気が降り立つ。
各国の王達へ手紙を届けてくれる様に頼んだ、サーラ、ステア、アーラ、ライア達だ。
「あら、皆んな、早いお帰りね?ありがとう、どうだった?」
「ふふ、急に現れた私に驚いていたわ。」
「後、ディアちゃんがニュクス様の愛し子である事と、リュストヘルゼ帝国の寵妃が魔族なのにも驚いていたわね。」
「でも、直ぐにディアちゃんの指示に従う旨の承諾を得てきたわよ?」
「皆、寵妃の計画を阻止し、討伐する事が最優先事項と分かっているからだろうけど。」
次々に渡される、各国からの手紙。
全ての手紙に、私の寵妃討伐への命令を受託する旨の返事が書かれていた。
「ヒューイット様、ルイン様、各国から受託のお返事をいただきました。何の憂いなく、リュストヘルゼ帝国との戦いに専念できますね。」
支援もするとの有り難い言葉も書いてある。
「ルイン殿、貴方の指揮下に無いリュストヘルゼ帝国の兵が我が国へ攻めて来るのはいつになりますか?」
「3日後に私の兵が先兵としてガルムンド王国へ攻め込む予定でしたが、どうなるか分かりません。私がガルムンド王国と手を結んだ事が寵妃様に魅力された者に知られれば、直ぐにでも攻め込んで来るかも知れませんね。」
「では、明朝にでもニュクス様の愛し子様からのお言葉として、リュストヘルゼ帝国の寵妃が魔族である事を我が国の兵達に先に通達いたしましょう。よろしいですか、愛し子様?」
ヒューイット達の視線が私へ向く。
「それで私は構いません。ヒューイット様達にお任せいたしますわ。」
にこやかに微笑んだ。
「事は魔族が関わるのですから、兵達の士気にも関わりますので、慎重にお願いいたします。」
「かしこまりました。愛し子様の存在もその時に伝え、兵達の士気を保ちましょう。」
ヒューイットが頷く。
「あと、ヒューイット様、リュストヘルゼ帝国が進行してくる国境の防壁の強化をいたしましょう。イーア、頼めるかしら?」
「もちろんよ、私の可愛い子。」
イーアが私の頬を撫でる。
「獣人の王、ディアちゃんのお願いだから国境の防壁の強化を土の精霊王である、この私がしてあげる。」
「感謝いたします、愛し子様、土の精霊王様。」
ヒューイット達、ガルムンド王国の重人達が私とイーアに頭を下げて感謝を示す。
防壁の件は片付いた。
あとするのは。
「ヒューイット様、リュストヘルゼ帝国との国境付近に暮らす方々の避難の進み具合はどうなっていますか?」
「・・何とか進めていますが、急な戦線布告で対応が遅れているのが現状です。」
「では、私達がお手伝いいたしますわ。」
今回の戦に巻き込まれない様、リュストヘルゼ帝国との国境付近に暮らす人達を避難させよう。
「愛し子様が?」
「はい、私や家族達は転移が使えますので、一気にリュストヘルゼ帝国との国境付近に暮らす方々を王都へ避難させましょう。ヒューイット様達を、国境へとお連れする為の転移も私がいたします。」
「・・愛し子様に出来ない事の方が少ない様ですね。」
私や家族達が転移を使えると知って驚き、ヒューイットは苦笑いを浮かべる。
それか、詳しい段取りを話し合い、ルイン達の部隊を早急にガルムンド王国へ連れて来る事に決まった。
その為、転移が使える私達が、その役目を担う事に。
「「「ルイン様!?」」」
転移で突如現れた私達に、ルインの指揮下の兵達が驚き、集まって来る。
一様に、その表情は固い。
「愛し子様が転移の魔法が使える事をロッテマリー殿やルルーシェル殿達から聞きましたが、実際に見ても驚きますね。」
「・・で、ガルムンド王国との会談は、どうなりましたか?」
「安心しろ、無事に我々の味方となってくれ事になった。しかも、他の国々も協力や支援を申し出てくれている。」
ほっとした空気が流れる。
「後方に控える兵達との戦いになるやも知れぬ。あちらには、まだ魅力された者がいるからな。」
ルインが視線向ける方向。
リュストヘルゼ帝国の兵の本隊がある場所だった。
「早急にこの場から我等は撤退し、ガルムンド王国と共闘して後方に控える祖国の本隊、そちらからの攻撃に備え、新たな陣を構える。」
ルインの指示に、慌ただしくなる本陣。
全てのテントを畳み、相馬や食料などの荷物をかき集めていく。
「愛し子様、撤退の準備ができましたので、お願いいたします。」
準備が整った報告をするルインに頷き、ガルムンド王国へと転移する。
ルインの部隊の全員を転移で連れて来た私達は、明朝まで休むようにヒューイットに進められ、ガルムンド王国の王宮内に借りている部屋へと戻って来ていた。
「ーーー・・誰一人として、リュストヘルゼ帝国の兵を我が国へ入れさせぬ。」
誰にも、この平和を奪わせぬ。
そんな決意を胸に、ヒューイットは兵達へと次々と支持を飛ばし。
「・・お前が愛した娘や祖国を、必ず守ってみせるぞ、カイン。」
月に亡き友の姿を浮かべ、ルインは誓う。
大事なものを守ると。
「あぁ、とうとう愛おしき魔王様の為に、たくさんの血の雨が降り始めるのよ!」
寵妃マリア、マリージュアはリュストヘルゼ帝国の王宮の自室で微笑む。
それぞれの思惑が絡み合い、各自が戦に備えて動き出していた。
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