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第13章〜帝国編〜
リュストヘルゼ帝国の宣戦布告
しおりを挟むあちこちで魔族の襲撃や暗躍が取り沙汰される中、リュストヘルゼ帝国が各国へ向けて宣戦布告を告げた。
唐突な宣戦布告に、激震が走る各国の上層部。
リュストヘルゼ帝国との戦争に向けての準備が、各国で慌ただしく進んでいた。
「魔族が動き出したと言う時に、リュストヘルゼ帝国は宣戦布告をするなんて、ね?」
各国の上層部の忙しさも何のその。
私はアディライトが淹れてくれた紅茶を、のんびりと自室で楽しむ。
国同士の戦なんて、私には関係ないし?
「・あの、ディア様?このままディア様は何もなされないのですか?」
アディライトが首を傾げる。
「ん?ふふ、アディライト、私が何もしない訳がないでしょう?」
ニンマリ笑う私。
リュストヘルゼ帝国は、私の可愛いロッテマリーとルルーシェルの事を傷付け、悲しませた元凶の国。
もちろん、私の報復の対象です。
「でも、こうして今はコクヨウとディオンの充電中なの。だから、もう少しだけ休憩。」
コクヨウの胸元に凭れ掛かる。
昨日から私から離れなくなったコクヨウとディオンの2人。
今もこうして、コクヨウは自分の膝の上から、ディオンは私の片方の手を握って離さない。
私も嬉しいから、そのまま2人の行為を咎めず、こうして甘えているのだ。
「ふふ、左様ですか。もしやディア様お1人で、リュストヘルゼ帝国を滅ぼしに向かわれるのかと心配いたしました。」
アディライトが安堵の息を吐く。
「あは、それでも良いけど、私に理由がないでしょう?国一つ滅ぼす正当な理由が。」
自分の奴隷を傷付けた国です。
だから滅ぼしますね。
なんて言い訳、許されないだろう。
「他国の領地へ兵を率いてリュストヘルゼ帝国が侵略したなら、良い言い訳になりそうよね?」
その侵略される先が、自分の屋敷がある街なら?
「偶然、自分の屋敷がある国が侵略されたら、反撃する事も可笑しくないもの。」
危険?
危ない?
「ふふ、どちらが敗者になるのか分からせるのも、とても楽しそうだわ。」
私は負ける気なんかない。
そう、例えーー
「今回のリュストヘルゼ帝国から出された宣戦布告を誘導したのが魔族だろうと、ね?」
くすりと微笑む。
「ロッテマリー?ルルーシェル?」
2人へ視線を向ける。
「貴方達の大切だった人を、街を奪った元凶は私が滅ぼしてあげる。」
これは、私のリュストヘルゼ帝国への復讐。
完膚なきまでに滅ぼしてあげる。
「今の皇帝は魔族である彼女の奴隷。きっと良い様に動いてくれるわ。」
魔族の狙いは、世界の破壊。
その為にリュストヘルゼ帝国の皇帝、ガルドフェインを誘惑し、自身の傀儡としたのだから。
「ディア様から聞かされた時は驚きました。まさか、皇帝陛下の寵妃、マリア様が魔族だったなんて。」
ロッテマリーが拳を握り締める。
浮かぶ、怒り。
皇帝ガルドフェインの寵妃マリア、又の名を魔族のマリージュア。
それが寵妃の本当の姿。
「ロッテマリー、ルルーシェル。2人の復讐相手は、ちゃんとあげるからね?」
祖国を。
大切な人を奪った元凶。
それなら、彼女達が復讐してもいいでしょう?
「ありがとうございます、ディア様。」
「ご期待に応え、間違い無く私達の手で息の根を止めて見せます。」
2人の瞳に増悪の光が宿る。
「ふふ、期待しているわ、2人とも。でも、まだ私達が動く時ではない。」
まず最初に狙われるのは、リュストヘルゼ帝国の隣に位置する、ガルムンド王国だと思われる。
リリスの放った子達の情報も、そうだった。
間違い無いだろう。
「特にあの国に私の屋敷もないし、守りたい子もいないのよね。」
既にロウエンは、ルーベルン国に避難させている。
私がガルムンド王国を守る義理はない。
「・・かと言って、国の立て直し中のガルムンド王国にリュストヘルゼ帝国を退ける余裕はないわよね。」
リュストヘルゼ帝国が喜ぶ展開なんて嫌だ。
私がつまらない。
「でしたら、ディア様がガルムンド王国の王宮に遊びに行けば良いのでは?」
「・・私が、ガルムンド王国の王宮に?」
アディライトの提案に目を細める。
「うふふ、たまたま、ディア様が国の立て直しの進捗状況の確認にガルムンド王国の王宮にいて、たまたま、リュストヘルゼ帝国が攻めて来た。あらあら、一体、どうすれば良いのでしょうか?」
上品に口元をてて隠し、アディライトがくすくすと笑う。
あら、素敵な提案。
「もちろん、ディア様は自衛の為に戦われますよね?当然の行為であり、何ら可笑しい事ではないですから。」
「そうね、そんな偶然もあるかも知れない。」
偶然は自分で作り出すもの。
なら、私達が動きやすい様に物事を誘導すれば良い。
「あー、とっても、ガルムンド王国の立て直しの進捗状況が気になりだした。」
棒読みで理由を作り出す。
私が動く理由を。
「てな事で、しばらくガルムンド王国でお世話になろうか?」
迷惑?
いいえ、泣いて感謝する事だろう。
「ニュクスお母様の愛し子である私が自分達の国にいるなら、ヒューイットのやる気も上がるでしょうし。」
私に利用されてね?
その分、ガルムンド王国があんまり破壊されない様に配慮はしてあげるから。
戦いを前に、静かにほくそ笑んだ。
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