381 / 424
第12章〜獣人編〜
折れる音、壊れた心
しおりを挟む私達の力量を見誤ったルドガー。
本当に私の事を暗殺出来ると思っていたのだろうか?
「ねぇ、そんなにルルーシェルの事が欲しかったの?私の暗殺を企ててまで、さ。」
ソファーから血を流す、ルドガーを見下ろす。
「っっ、当たり前だろう!私達、獣人族は力こそが全て!」
ギラギラとした目をするルドガー。
「魔族を倒せるほどの力を持つルルーシェル様がお生みになる子供こそ、この国の次代の王に相応しい!なら、お前の様な人間の小娘が奴隷としてルルーシェル様の事を縛り付けるなど、許せるはずがないだろう!」
激情に吠えた。
「獣人族は力こそが全て、ね。」
その為なら、私の暗殺も厭わないと言うのか。
狂っている。
私も人の事を言えないが、力に固執するルドガーを狂っていると思う。
ルドガーは力に、私は愛に狂ってしまった。
「なら、私が貴方に力を示せば、ルルーシェルの主人として相応しいと言う事ね?」
「・・は?」
惚けるルドガーに近付き、愛用のレイピアの切先を突きつける。
「ルルーシェルは、私の一部。そのルルーシェルを失う時は、私自身が死ぬと言う事。」
ルドガーは狂っている。
しかし、私はそれ以上に愛に狂っているのだ。
「欲するなら足掻きなさい。私から大事なルルーシェルの事を奪おうとするなら。」
見せてみろ。
お前が言う、獣人族が人間より優れている所を。
「今のままじゃ、十分に戦えないでしょうから、私が傷は治してあげる。」
「な、にを、」
困惑するルドガーの傷を癒す。
後で、その傷があったから負けたと言い訳されても面倒だし。
「っっ、傷が、」
「ほら、これで準備は整ったよ?獣人族が人間である私より優れていると教えてくださいな。」
どうした?
ちゃんと戦えるように傷も治したんだから、私に挑んできなさい?
「舐めるなよ、小娘が!?」
私の方へと伸ばされる、ルドガーの手。
「遅い!」
躊躇なく、腕を切り落とす。
上がる絶叫。
「あ、あぁ、腕がっっ、」
痛みに悶えるルドガーを冷ややかに見下ろす。
「どうしたの?貴方の言う獣人族の力って、こんなものなのかしら?」
ふむ、自慢げにしていた割には弱い。
この程度なの?
「分かった、武器を持っていないからね!」
肉体派かと思ってた。
だから、武器を与えなかったんだけど、それがいけなかったみたい。
「じゃあ、次は武器も貸してあげる。好きな武器わや選んで使って良いよ。」
空間収納の中から色々な種類の武器を取り出し、ルドガーに選ばせる。
切り落とした腕も回復させ、第二ランド開始。
「ふふ、次は楽しませてくださいな。人間よりも強いと言うなら、一瞬で終わらせないで。」
「っっ、」
じりじりと、私との距離を詰めるルドガー。
その手には、私が貸した槍。
「殺してやる。」
「あら、素敵。簡単に壊れない玩具は大歓迎!」
増悪を向けてくるルドガーを大絶賛。
「壊してあげる。」
私の大事なルルーシェルの事を奪おうなんて考えられなくなるぐらいに。
うっとそりと笑った。
「さぁ、来なさい、ルドガー。何度でも、貴方の心を壊してあげるから。」
「うぉぉぉっっ、」
雄叫びを挙げ、私へと突進するルドガー。
ひらりと避ける。
「んー、まだまだ、だよ?そんなんじゃ、つまらないじゃない。」
もう一度、ルドガーの腕を切り落とす。
「武器を持っても、その程度?ご大層に私の事を人間だからって貶していたくせに?」
これなら、まだ魔族との戦いの方が楽しめた様な気がする。
不満だ。
「次よ。私が満足する様な足掻きを見せてみなさい。」
切り落とした腕を回復させては、戦うの繰り返し。
「ひぃ、うっ、」
何度も。
「や、め、」
ルドガーの心を壊すまで続けていく。
「っっ、たすけて、」
「もう終わり?がっかりだわ。」
立ち上がれなくなったルドガーに吐き捨てる。
「ひぅ、ゆるして、ください。」
「何を許せと?」
私の事を暗殺しようと企てと事?
大事なルルーシェルの事を奪おうとした方かしら?
「貴方の謝罪に、1ミリの価値もないわ。」
ふざけるな。
「この遊びは、貴方が始めたのでしょう?なら、最後までやり遂げなさいな。」
謝罪したから許せと?
なら、私が受けた奪われる恐怖を忘れろと言うの?
「私へ貴方の企んだ暗殺の切先は届かなかったけど、ルルーシェルの事を奪われるかも知れない不安と苦痛を、謝罪一つで許せなんて、可笑しいと思わないかしら?」
始まった遊びは終わらない。
相手が飽きるまで。
「遊ばれていた私も、そうだった。どんな言葉も、遊んでくる相手には届かない。」
どんなに理不尽でも。
辛くて、苦しくても、遊びは続いていく。
「言ったでしょう?貴方の事を、壊してあげるって。」
この結末は、決まっている。
最初から。
「自分が犯した愚行を悔やんで、壊れて?」
「ぁ、あぃ、」
楽しく笑い武器を向ける私に、ぽきりとルドガーの心が折れる音がした。
20
お気に入りに追加
2,259
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる