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第12章〜獣人編〜
蹂躙の幕開け
しおりを挟む私が何も知らないと思ったら、大間違い。
ルルーシェルのことを奪おうと考える人間を、私が見逃すと思っていたのなら浅はかだ。
「ねぇ、貴方が王妃の襲撃に紛れ込ませた人は帰って来た?もしかして、全員、ルルーシェルが倒したと思っていたの?」
抑えるのが大変だったんだよ?
ルルーシェルの主人である私の事を襲撃して、亡き者にしようなんて考えてくれるんだから。
皆んなが怒り狂い、目の前のルドガーへ奇襲してしまいそうだったんだから。
「でも、そんな簡単な終わり方なんて、とてもつまらないでしょう?だから、用意してあげました。」
貴方が苦しむステージを。
「っっ、なにを、」
「ーーー誰が話して良いと言った?」
コクヨウの剣が、ルドガーの首筋に突き付けられる。
「ディア様への不敬や襲撃を企ててた事に対して、僕達は怒りを抑えているんだ。これ以上、僕達の怒りを爆発させない為にも、口を噤め。」
「なっ、」
突如として自分の首筋に突き付けられた剣に、ルドガーが目を剥く。
「なぜだ!?武器は持っていなかったはず、」
「口を噤めと言った。聞こえなかったのか、無能な狐が。」
「っっ、」
黙る事のないルドガーに、突き付けた剣に力を込めるコクヨウ。
ルドガーの首筋から血が流れる。
「うふふ、武器など、どうにでも王宮内へ持ち込めますよ?貴方が知らないだけでね?」
私のスキル、空間収納とか?
大事なルルーシェルの事を奪おうとする王宮へ来るのに、丸腰な訳ないじゃない?
ちゃんと預けても良い武器を用意して、愛用品は私のスキル、空間収納の中に避難させただけ。
「自衛は必要でしょう?ほら、この部屋の外にいる、貴方の手下と遊ぶには。」
隙を見て私の事を暗殺って所かな?
物騒にも、物々しく武器を持った数人の兵と思われる獣人族が控えている。
「お城の警備上、中に武器は持ち込めないと取り上げた事は評価するけど、お粗末ね?私達が、ただの冒険者だと思っていたの?」
私達が、この場にいる理由を思い出せ?
「魔族を倒せる者が、安易に自分の武器を手放すと?実際、ルルーシェルは今日まで襲撃を受けていたのに?」
嘲の笑みを向ける。
「私達の事を、舐めすぎじゃない?」
王宮内なら安全だとでも私達が思うとでも考えたんだろうか?
そうであるなら、私達の事を舐めすぎだ。
「大丈夫、宰相様。ちゃんと、外にいる貴方のお仲間とも遊んであげるから。」
部屋の外に控える私の危険察知や、マップ上のマークが真っ赤なのだから、間違いなく敵だもの。
こちらに害意を向けようとしているのだから、私達だって同じ事をしても良いわよね?
「貴様っっ、」
「3度目だ。」
冷ややかに告げたコクヨウが、ルドガーの足を切りつけ、膝を地面につけさせる。
上がる、ルドガーの絶叫。
ぼたぼたと、絨毯の上にルドガーの血が零れ落ちていく。
「ルドガー様!?」
「今の叫びは何です!?」
「宰相様、いかがなさいましたか!?」
ルドガーの絶叫に、雪崩れ込んでくる、部屋の前で待機していた兵達。
「あら、ふふ、いらっしゃいませ、兵の皆様?」
私は笑顔で出迎えた。
ようこそ、ルドガーに与する兵の皆様。
地獄の入り口へ。
「なっ、ルドガー様!?」
「貴様ら、ルドガー様になんて事をした!?」
「この国の宰相様の事を傷付けた罪人だ!者達を捕らえろ!」
血を流すルドガーに目を剥いた兵達。
しかし、すぐさま私達の捕縛へと動く様に指示を出す、兵を率いていると思われる、犬の獣人。
「お下がりを、ディア様。」
「この場は、私達にお任せください。」
「「ディア様の玩具を捕まえるのー!」」
私の事を自分の背に庇うディオンに、一礼して兵達へと向かうアディライト、元気に飛び出すフィリアとフィリオの2人。
「ーーー無礼者を叩き潰せないのは、とても不本意ですが、それがディア様のお望みなら仕方ありません。」
最後のルルーシェルは素早く兵達の後ろに回り込むと、その退路を塞ぐ。
まさに袋の鼠状態。
「あらあら、皆んな本気になっちゃって。ふふ、まだ壊しちゃダメよ?」
ディオンに守られながら悠然と椅子に座り、皆んなへ指示を飛ばしながら活躍を見守る。
私が遊ぶ前に、大事な玩具を壊されたら困るもの。
「ひっ、」
「い、痛いっっ、」
「っっ、」
あっという間に、皆んなによって制圧される兵達。
多少の怪我をしながらも、誰も死ぬ事なく地面に蹲り、痛みに呻いている。
「ふふ、良い眺めだ事。ねぇ、そう宰相様も思いません?」
ゆるゆると口角が上がっていく。
「相手との力量さえ分からない者が、国を守る兵とは驚きました。よく、そんな兵の事を自慢できましたね?」
中傷を刻む。
「私の目の前でみっともなく這いつくばり、蹲って呻くだけの彼等が、貴方の言う、勇敢で強い精鋭などと。」
どう?
ご自慢の兵達が蹂躙される気持ちは?
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