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第12章〜獣人編〜
魔族の襲撃
しおりを挟む会場中に爆風が舞い上がる。
広がる悲鳴。
「ーーーー・・あら、来たわね。」
魔族の奇襲である。
大会会場へ向けられた攻撃魔法。
私の優秀な子達が魔族の攻撃を魔法で相殺させたが、爆風は防ぎようもない。
鉄壁の結界の中にいる、私達以外は。
「ルルーシェルは?」
「精霊王様達の結界で無事のようですので、ご安心を。傷1つありません。」
ルルーシェルの身を心配する私。
周囲を険しい表情で会場中を見回すコクヨウが、ルルーシェルの無事を答えてくれる。
「そう、ルルーシェルが無事で良かった。でも、これでは大会どころの騒ぎじゃないわね。」
直撃は免れたとは言え、衝撃があった。
この場にいる無関係の人達を即死させるのは少しだけ忍びないと思い、私達が軽い手助けをしたとしても、その事実はなくならない。
「あ?まだ息のある奴が大勢いるじゃねーかよ。」
爆風の中から現れる魔族の男。
筋肉質の魔族の男は、不機嫌そうに会場内を見渡す。
「チッ、ゴミの分際でしぶてぇな。」
忌々しそうに吐き捨てる。
どうや、この場にいた人達に自分が思っていた被害がない事に不機嫌になっている模様。
「なっ、魔族!?」
「嘘だろ!!?」
魔族の姿を見た観客や出場者達から、先ほどとは違う悲鳴を上がった。
「っっ、逃げろ!」
「いやぁぁぁっっっ、」
パニックが会場中を支配し、我先にと逃げ出そうとする人達。
が、その中で魔族を冷ややかに見据える存在がいた。
「ーー・・ディア様、どうか私にあれの殲滅の許可を。」
「僕も欲しいですね。」
怒り心頭のディオンとコクヨウの2人。
「「「・・・。」」」
こら、アディライトとフィリアとフィリオの3人は、無言で武器を構えないの!
全員が無表情なのが、魔族への怒り具合の高さを表している。
「皆んな、落ち着きなさい。」
困った子達だ。
大方、あの魔族の男に私がゴミ扱いされたから怒っているのよね?
「喚くしか能のない駄犬など放っておきなさいな。」
「・・あ?」
嘲笑う様に笑う私の言葉に、魔族の男の眉が不機嫌に吊り上がる。
「そこの女、今なんて言った?」
「あら、駄犬は耳も遠良いのかしら?ふふ、さすがは駄犬と言えるわね。」
「・・死にてぇのか?」
怒りにか、ぴきぴきと浮かび上がる筋肉。
扱い易い男だ。
「ルルーシェル、貴方の敵よ。」
「はい、ディア様。」
私の言葉に、魔族の男へ向かうルルーシェル。
その瞳は増悪に染まっている。
「ディア様への暴言、絶対に許しません!お前如きが暴言を吐ける方ではないのだと身の程を知れ!」
「チッ!」
迫るルルーシェルへ後退する魔族の男。
魔法を放とうとする。
「ーー・・させません!」
が、ルルーシェルがそんな暇を与えない。
連続で斬りかかる。
「・・・っっ、ウゼーんだよ!」
防戦一方の魔族の男。
ルルーシェルの早さに翻弄されている。
「ディア様、一般の観客達の避難が終わったようです。」
アディライトの声に周囲を見渡せば、ルルーシェルが戦っている間に、兵達と武術大会に出場していた力に自信がある者達以外の一般の人達は、外へ避難を済ませたらしい。
怪我人もいたから、そんな遠くまで避難していないとは思うが。
「すげぇ、」
「なんて戦いだ。」
ルルーシェルの戦いに向けられる称賛。
畏怖と尊敬が兵達や、武術大会に出場していた者達の瞳に宿る。
「うん、ルルーシェルは可愛くて強いのよ!」
私は1人ご満悦。
どう?
私のルルーシェルは凄いでしょう?
声を大にして自慢したい。
「・・殺す。」
魔族の男の魔力が膨れ上がる。
魔力が増加した?
「ーーーーっっ、この魔力は、まさか!?」
目を剥く。
魔族の男に嫌悪感が湧いた。
「あの奴隷として集められていた子供達の命を対価とし、自分の魔力を増加させるなんてっっ、!!」
唇を噛み締める。
自分の家族以外がどうなろうと関係ない。
そう思っていた。
「でも、これはやり過ぎよ。」
禁忌の所業。
ニュクスお母様もお許しにはならない。
「コクヨウ、ディオンの2人はルルーシェルの手助けを。今のルルーシェルには、魔力が増したあの魔族の男の相手はキツイわ。」
私は椅子から立ち上がる。
「ただし、私が子供達を助け出すまで魔族の男を倒すのは止めて。下手に魔族の男を倒して、魔力の供給源になっている子供達への、術の効果が暴走するのは困るから。」
「はい、ディア様。」
「かしこまりました。」
コクヨウとディオンの2人がルルーシェルが戦う魔族の男の元へと向かう。
「アディライト、フィリアとフィリオの3人は私と一緒に来て、子供達の救出を手伝って。」
「分かりました。」
「「任せてなの!」」
頷く3人を連れて、私は魔族の魔力の供給源となっている子供達の近くへ転移で飛ぶ。
寂れた大きな屋敷。
私達は、その屋敷の中へ足を踏み入れた。
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