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第11章〜勇者編〜
終わらない悪夢
しおりを挟む固まって言葉を失う元クラスメイト達と担任の事を、満面の笑みを浮かべたまま私は眺める。
そうだ、もっと恐怖に怯えろ。
「うふふ、お久しぶりですね、皆さん?」
地獄を味わえ。
「どうでした?私が導いてあげた悪夢のご感想は?」
思い知れ。
お前達が犯した罪の重さを。
「な、に?」
「導、い、た・・?」
「あら、分かりませんか?皆さんが数ヶ月間の間味わった悪夢は、全て私が起こした事なんですよ?」
ますます私の笑みが深まった。
「偶然、盗賊にかち合う確立は?裏の世界の元締めさんの耳に、先生の悪事の事が知れ渡るのが早いと思いませんでしたか?」
こてん、と首を傾げる。
「全て私が皆さんの事を悪夢の方へ導いてあげました。ふふ、皆さん私に感謝してくださいね?」
笑いが止まらない。
こんなにも楽しい事はあるだろうか?
「楽しい遊びだったでしょう?悪意と絶望の中を生きる日々は。」
かつて、私が過ごした日々。
その日々を、お返しに彼らに与えただけ。
「ーーーっっ、な、最低!」
「良くも、あんな事が出来たよな!?」
「俺達へ復讐のつもりか!?」
爆発する怒り。
元クラスメイト達が私を罵り出す。
「そう、復讐ですよ。」
仄暗く、私は元クラスメイト達へと微笑んだ。
それ以外に何があると言うのだろうか?
「私が皆さんに復讐して、一体、何が悪いと言うのでしょう?」
向けられた悪意を、私は返しただけ。
非難される謂れはない。
「最初に私で遊びを始めたのは、皆さんの方です。そのお礼をしただけで、私が貴方達に批難される理由はないと思いますが?」
虐めと言う名の遊び。
なら私も同じように遊んで、何が悪いと言うの?
「そうやって私の事を責めるなら、ご自分達が始めた遊びについて、まずは詫びてからが筋なのでは?」
私だけ責めるなんて理不尽だ。
自分達が最初に始めた遊びの責任は最後までもってね?
「貴方達に私を責める資格はないわ。」
事後自得。
因果応報。
まさに、身から出た錆である。
「痛かったでしょう?理不尽に暴力を振るわれるって?」
奴隷になった少女へ笑う。
「どうでした?毎夜、男達に犯される感想は?」
盗賊に捕まっていた子達を憐れむ。
「蔑まれ、罵倒されるのは辛いって理解したかしら?」
他の面々を見つめ、私は首を傾げた。
「私も、貴方方と同じ思いをずっと感じていたんですよ?」
味わえたかしら?
私と同じ、苦痛と絶望の日々を。
「貴方方に復讐したい。でも、貴方方を地獄へ誘導する事は出来ても、私が直接この手で殺してしまっては犯罪者になってしまうでしょう?」
だから考えた。
私の代わりに復讐する者を作り出すと。
「さぁ、勇者様?」
静かに俯き地面に座り込んだままの相馬凪を見下ろす。
私を直接冤罪で断罪した相馬凪は犯罪者。
だから、彼の事をクレイシュナから手に入れたのだ。
「そろそろ貴方の出番ですよ?存分に最後の遊びを楽しんでくださいな。」
最後の楽しいショーの開幕だ。
私の声に、ゆっくりと俯いていた相馬凪の顔が上がる。
「ひっ!?」
「な、凪、君・・?」
「嘘だろ!?」
相馬凪の顔を見て、誰もが驚愕した。
落ち窪んだ目元。
こけた頬。
生気を失い、変わり果てた姿の相馬凪が立ち上がる。
「うふふふふ、さぁ、皆さん楽しい最後のショーの開幕といきましょう!」
私の哄笑が響き渡った。
元クラスメイト達を連れて来たのは、聖皇国パルドフェルドの迷宮、70階層。
最後のボスが待つ部屋の中である。
「私が貴方達と遊ぶに相応しい場所をご用意しました。ここなら誰にも余計な邪魔などされないので、皆さん存分に楽しんでくださいな!」
嬉しいでしょう?
私と存分に遊ぶ事が出来て。
「ふふ、頑張ってボスを倒したと褒めてほしいわね。」
一度ボスを倒せば、この部屋の中は無人と化す。
新しいボスが出現するまで、この部屋の中を私が自由に使う事が出来るのだ。
「な、何をするつもりだ?」
「おい、どうして凪は手に剣なんか持ってるんだよ!?」
「・・・凪の様子、可笑しくないか?」
顔を恐怖に強張らせて、じりじりと後退し出す元クラスメイト達。
「ーーー・・これで、楽になれるんだ。」
相馬凪が剣を持ち上げた。
始まる殺戮。
武器も防具もない元クラスメイト達は、相馬凪の狂気の殺戮に悲鳴を上げて逃げ惑う。
「な、凪、止めろ!」
「っっ、お願い、死にたくない!」
「や、こっちに来ないで!」
悲鳴と懇願。
相馬凪は眉1つ動かす事なく殺戮を繰り返していく。
まるで地獄絵図。
「あはは、ふふふふふ、本当に最高よ、勇者様?」
私はうっとりと目の前の光景に見惚れる。
涙を流し、必死に出口へ向かうも、ドアは開かず絶望する元クラスメイト数人。
「お願い、日坂さん、私を助けて!」
私に助けを乞う少女。
「ーーーっっ、凪、お前、ふざけないよ!」
勇敢に相馬凪へ立ち向かう少年。
全てが楽しくて堪らない。
「助かりたくば、相馬凪から逃げ切り、私の後ろにある外へ出る為の転移装置を使えば良いのでは?」
助けを乞う少女に微笑む。
「まぁ、簡単には転移装置の元へは行かせないけど。」
私と少女の間を阻む結界。
その結界が、彼らの脱出を無情にも拒む。
簡単に許してやらない。
「精々、私を満足させるぐらいに足掻いてくださいな。それが貴方方への罰なのだから。」
まだ悪夢は終わらない。
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