リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第11章〜勇者編〜

復讐の狼煙

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犯罪行為に手を染め、牢屋に収監された元クラスメイト数名。
彼らは法の裁きを待っている。
他の元クラスメイト達の境遇は様々で、しかし全員が地獄の様な日々を過ごし始めていた。
誰もが例外なく。


「ヒヒ、髪と瞳が黒い奴隷とは、何ともいたぶりがいがありそうだ。」


聖皇国パルドフェルドを出た元クラスメイトのある1人の少女は早々と借金奴隷となり、ある国の貴族に買われる事となった。
少女が買われた貴族は、汚職と多額の賄賂でのし上がった男で嗜虐趣味を持つ。
毎夜、少女は苦痛の日々を過ごす事となる。


「っっ、いや、許して!」


そして、違う異世界から来た他の少女達は数人で固まって聖皇国パルドフェルドから出た後に運悪く盗賊に捕まり、何人もの男達に慰み者にされる日々を送っていた。
恐怖と屈辱。
少女達は地獄の様な日々を過ごしていた。


「おい、早く荷物を運べよ!」
「もたもたすんな!」


ある少年達は、何とか生きようと冒険者の荷物持ちとしても生活を送り始める。
しかし、そんな生活は上手くいくはずもなく、他のパーティーメンバー達との衝突が絶えることはなかった。
次第にそんな彼らを受け入れてくれるパーティーメンバーがあるはずもなく、食にありつくのも困難なほどに困窮していく事になる。


「兄ちゃん、俺達のシマで自分が何したか分かってるよな?」


ある担任だった男は、生活の為に詐欺を働いた。
それが運の尽き。
担任が働いた悪事がその国の闇を牛耳る元締めである男の耳に入り、暴行を受ける日々。


「っっ、助けて!」
「・・・もう、こんな生活、嫌だよ。」
「死にたくない!」
「い、痛い、許してくれ!」


誰もが痛みと屈辱に泣き、許しを請う毎日。
ーーー・・それはある日、その悪夢の日々は唐突に終わりを告げた。


「さぁ、ディア様がお待ちです。」
「最後の仕上げとまいりましょう。」
「しばし、安念を過ごせるのですから、良かったですね?」
「「感謝するの!」」


放逐された元クラスメイト達は、その意識を刈り取られていく。
暗転する意識の中、誰もが聞いた。
自分達を地獄へと誘う、楽しげに笑う声を。


「ディア様、全員をお連れしました。」


仄暗いボス部屋内。
コクヨウ達からの報告を聞いた私は頷く。


「お疲れ様、皆んな。私の玩具を運んで来てくれて、ありがとう。」


私の視線の先には、倒れ伏す元クラスメイト達。
一様に眠り続けている。


「ーーーさて、もう、終わりにしたい、勇者様?」


皆んなの事を労い、私が座る椅子の足元に座り、死んだ様な顔をした相馬凪の顔を覗き込む。


「もう楽になりたいかしら?」
「・・・ゆる、して、くださるのですか?」
「ふふ、勇者様が私のお願いを叶えてくれたら、少しは考えてあげても良いよ?」


ゆるゆると口角を上げる。


「・・願、い?」
「そう、分かるよね?勇者様なら私の願いが何なのか。」


耳元へ甘く囁く。


「貴方の願いを叶えるか考えてあげる。だから、私の復讐の最後の仕上げをお願いできるかしら?」


相馬凪の目の前に、一本の剣を落とした。


「それ、貸してあげるわ。」
「・・・。」


剣に落ちる相馬凪の瞳。


「ほら、貴方の大切な友達を全員、この場に招いてあげたんだから楽しみなさい?」


私達から離れた場所に倒れ込む元クラスメイト達を指差す。


「嬉しいでしょう?私達の同郷の元クラスメイト達に最後に会えて。」


パチリと、指を鳴らす。


「ん、」
「・・あ、れ、ここは?」
「俺達、何でこんな場所にいるんだ?」


私の闇魔法、睡眠が解かれて全員が目を覚まして周囲を見回して困惑し始める。


「ふふ、皆さんお目覚めの気分はいかがです?」


一斉に私へ向く視線。


「・・あの時の、冒険者、の人?」
「あら、私の事を覚えてくれていたんですね?ふふ、他人の事なんか道端の石ころの様にしか見えないのかと思っていましたよ。」


歪む私の口元。


「は?何、意味が分からない事を言ってるの?」
「てか、ここどこなんだよ!?」
「・・・な、なぁ、あの女の隣にいるのって相馬じゃないか?」


騒がしくなる元クラスメイト達。
私の隣にいる相馬凪へ、厳しい目を向ける者までいる。


「相馬、お前のせいで俺達がどんな苦労をしたと思ってる!?」
「責任取りなさいよ!」
「そうだ、全部お前のせいなんだぞ!」


罵り始める始末。


「・・貴方方はお変わりないのですね、あの頃から少しも。」


悪いのは自分以外。
周囲から責められると、全ての責任は自分ではないと罪を他人になすりつける。
何と醜悪だろう。


「少しは自分がした事を顧みてはいかが?今の貴方方の落ちぶれは、自業自得なのですから。」


鼻で笑えば、私へ敵意が向く。


「・・一体、お前に何が分かるんだよ?」
「関係ない人間がとやかく言うんじゃねぇ。」
「そうよ、これは私達の問題なの。部外者は黙ってて!」


関係ない人間、ねぇ。


「ーーー・・『日坂弥生』。」
「「「「!?」」」」


それも一瞬。
私が呟いた名前に、相馬凪を除く元クラスメイト達の誰もが息を飲んだ。
動揺を表す元クラスメイト達。


「っっ、あ、んた、何でその名前を・・?」
「お前、一体、何者なんだよ!?」


私に怯えを滲ませる。


「ふふ、皆さん、察しが悪いんですね?」


私は足を組むと椅子に肘を置き、元クラスメイト達へ呆れの溜息を吐き出す。


「皆さんの目の前にいる私が、日坂弥生ですよ。あぁ、元日坂弥生と言った方が良いかしら?」


浮かぶ嘲笑。


「皆さん、私と楽しく遊んでくれたでしょう?」


忘れたの、と首を傾げ悠然と微笑む。
見開かれるたくさんの瞳。


「貴方方の事は、私は良く知っているわ。その醜悪さも、汚さも。」
「「「っっ、」」」
「元クラスメイトとして、貴方達と無関係ではないのですもの。私は部外者じゃないよね?」


仄暗い目を向ける。


「今度は私が遊ぶ番。貴方達が私で遊んだように、ね。」


相馬凪を除く、この場にいる元クラスメイト達の全員が言葉を失った。


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