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第11章〜勇者編〜
鬼ごっこ
しおりを挟む恐怖の2日目。
相馬凪の瞳に、怯えの色が消えない。
そのことが心の底から嬉しく、この時間が楽しくて仕方なかった。
「・・っっ、頼む、お願いだ、もう、許してくれ!」
半泣きで私へと必死に縋り付く。
あらあら、情けない。
まだ遊び始めて、1日しか経っていないよ?
「ねぇ、貴方が私で遊んだのは、どれぐらいだったかしら?覚えている?」
「そ、れは、」
「ふふ、せめて、貴方が私で遊んだぐらいの時間を楽しませて?じゃないと不公平でしょう?」
口角を吊り上げる。
「今日は昨日とは趣向を変えて、楽しい鬼ごっこをしようね?昨日と同じ遊びだと、貴方もつまらなくなっちゃうもの。」
そんな相馬凪を蹴り飛ばし、私は楽しげに微笑んだ。
今日は昨日とは少し趣向を変えて、違う遊びをしようと思う。
色々と楽しみたいしね。
本日の遊びのテーマは、鬼ごっこデスゲーム。
「・・・は?鬼、ごっこ?」
「そう、もちろん、鬼はモンスター達です!ふふ、死に物狂いで逃げたくなるでしょう?」
喜べ?
たくさんの鬼と遊べるよ?
「捕まったら最後のデスゲーム。ねぇ、とても楽しみな遊びだと思わない?」
「っっ、」
「うふふ、楽しみすぎて言葉も出ない感じなの?」
震える相馬凪の身体。
「その貴方の足と手の拘束はちゃんと解いてあげるから安心して?だから無様に、私を楽しませる為に頑張って鬼から逃げてね、元勇者様?」
優しいでしょう?
遊びだから、ちゃんとフェアにしてあげるよ。
「コクヨウ、相馬凪の足と手を縛っている縄を解いてあげて。」
「はい、ディア様。」
私の指示に相馬凪の足の拘束をコクヨウが解く。
「?ふふ、早く逃げなくても良いの?直ぐに捕まってゲームオーバーになっちゃうよ?」
「っっ、い、いゃだ、」
「嫌だ?何を言っているの?貴方に拒否権はないよ。」
逃がさない。
この地獄の時間からは。
「私が飽きる迄、どんなに傷ついても何度でも回復だけはしてあげる。死なれたらつまらないし。」
なんて優しいんだろう。
私の時は、誰も傷ついてもお構いなしだったと言うのにね。
「ほら、さっそく貴女の遊び相手の鬼が来たよ。貴方と遊んでくれる鬼さんが。良かったね、相馬凪?」
ゆっくりと、モンスターが姿を表す。
恐怖に染まる相馬凪の顔。
「今日は結界のアンクレットを嵌めていないから、モンスターから攻撃を受けた大変だと思うから頑張って?」
「あっ、あ、うわぁぁぁ!!」
モンスターへ背を向け、一目散に相馬凪が走り出す。
楽しい鬼ごっこの始まりだ。
「ふふふ、相馬凪、存分に楽しんでね?」
元勇者様である相馬凪は精神耐性のスキルがある為、簡単に心が壊れる事はない。
何度でも、あの男で遊べると言う事だ。
「ーーーっっ、ひぃ、い、痛い、助け、!?」
転んで鬼に捕まった相馬凪。
鬼であるモンスター、アンデットの持つ剣が相馬凪の身体を貫く。
舞う鮮血。
「ーーー・・ディオン?」
「はい、ディア様、すぐに回復させます。」
ディオンの回復魔法で、傷付いた相馬凪の身体が癒されていく。
何度目の回復か。
数えるのも億劫なほどに相馬凪は、こうして私の指示により地獄の様な時間を過ごしながら生かされている。
「あっ、あぁ、」
絶望に相馬凪の瞳が染まった。
「た、のむ、」
私に伸ばされる相馬凪の手。
「殺して、くれ。」
「ふふ、殺す?私が、貴方を?」
目が細まる。
「どうして、楽しい玩具を私が壊さないといけないのかしら?」
「っっ、おね、がい、だ、死なせてくれ、よ。」
死なせる?
私が、この男の事を?
「ーーーっっ、ふざけるな!?誰がお前の事を簡単に楽にさせるものか!」
相馬凪の胸ぐらを掴む。
「お前は、私への虐めを止めてくれた!?私のお願いを聞いてくれたの!?」
ある日始まった虐め。
その虐めの理由も分からず、私は困惑するだけ。
「理不尽に虐げられ、死にたいと願った私の気持ちが少しは分かったなら、お前はもっと地獄を味わうべきよ!それがお前が受ける罰なんだから!」
涙が滲む。
簡単に許してなるものか!
「とことん、絶望を味わって?お前に希望なんか与えないわ。」
死は救いだ。
だからこそ、私は死ぬ事を選んだのだから。
「お前は気が狂う事さえも許されず、私の気の済むまで遊びに付き合ってもらうから。」
精々、絶望しろ。
そして、自分のした事への代償を払え。
「うふふ、あははは、ほら、新たな鬼がお前の事を捕まえに来たよ?」
相馬凪の胸ぐらを離し、口角を上げる。
「死ぬほど、後悔しろ。これはお前がした遊びへの復讐なのだから。」
だから、私も遊ぶ。
相馬凪、お前と言う玩具で。
ーーー・・それから1ヶ月、相馬凪への遊びは続いた。
「アディライト 、あれ達の成果は?」
「この世界の常識はほとんど詰め込み終わりました。そろそろ、放逐しても良いかと。」
相馬凪で遊び始めて1ヶ月。
段々と反応も鈍くなってきた相馬凪で少し遊び飽きた私は、ルーベルン国の屋敷でまったりと過ごしている。
安息の後に地獄へ突き落とすのも面白そうだし。
今は元クラスメイト達の事だ
「ふーん?頑張ってこの世界の知識を全員が詰め込んだんだ?」
「ふふ、私達がその身に嫌と言うほど、死ぬ気で全員に覚えさせましたから。」
美しくアディライトが微笑んだ。
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