352 / 411
第11章〜勇者編〜
カティアの怒り
しおりを挟む落ちる沈黙。
カティアの言葉に誰もが固まった。
「ふふ、精霊王の加護を与えられるのって難しいのでしょう、カティア?」
「当たり前よ。私達精霊王が簡単に加護を与える事はないわ。」
頷くカティア。
「だから、本当なら私の加護を得たコクヨウは貴重な子なのよ?普通なら、大事に育てられるはずなだけど、お前達の価値観は普通とは違う様ね。」
コクヨウの両親にカティアが冷ややかな目を向けた。
「ーーっっ、闇の精霊王様の加護をあんな化け物が受けているですと!?」
「嘘ですよね、精霊王様!?」
カティアに涙を滲ませながら縋るコクヨウの両親。
必死である。
だって、自分達がした事は、ニュクスお母様の使者として世界の安念に尽力している精霊王の加護を得た子を迫害してきたのだから。
「あら本当よ?そんなコクヨウを虐げ、見捨てた行為の代償を払う覚悟は出来ているのよね、貴方達は?」
「「っっ、!?」」
みるみる内に青ざめるコクヨウの両親の顔。
2人は恐怖に後ずさる。
「ディアちゃん、私もこの2人の事を許せないの。貴方の復讐の手助けをするわ。」
釣り上がるカティアの目。
「嬉しいわ、カティア。一緒に楽しみましょう?」
カティアと2人で微笑み合う。
前世からコクヨウの魂を気に入ってるカティアとの共闘です。
全く負ける気がしない。
「で、さっきから私の旦那様の事を化け物呼ばわりですけど、謝罪は?お義父様、お義母様?」
「闇の精霊王たる私が加護を与えるくらい気に入っているコクヨウの事を化け物呼ばわりしたんだもの、もちろん、他の皆も謝ってくれるのよね?」
カティアと2人、満面の笑顔を周囲へ向けた。
許すまじ!
「後、他の皆さんもですよ?先ほど、私の大事な夫を、闇の精霊王の加護を得た方を侮辱し、罵りましたから、当然、謝罪はいただきたいんですけど?」
先ほどコクヨウの事を貶した者の顔と声を私達は忘れてなんかいないよ?
全員、私とカティアの敵認定にロックオンされております。
カティアとコクヨウの両親と周囲を攻める。
「当然、土下座でしょう?コクヨウに心かの謝罪をするなら、ね?」
「あら、良いわね!」
「ふふ、ルドボレーク国でも、貴族の皆さんが謝罪の時にしてくれたんだよ?だから、これが誠意ある謝罪として皆さんもしてくれるでしょう?」
簡単な謝罪で許すものか。
じっくりと、その身でコクヨウへの誠意を見せてもらいましょう。
「コクヨウの事を鑑定持ちの方に見ていただいていたら、この結末は変わったはずなんですよ?お義父様、お義母様、そう思いません?」
コクヨウが持つ『闇に愛されし者』の称号を与えられるような存在が精霊王以外にいるだろうか?
あの頃、コクヨウの事を鑑定していたらな、その価値は分かったはずなのだ。
「ただ黒い瞳と言うだけで、貴方方は自分の息子であるコクヨウの事を家の中に隠した。自分達の保身や見栄の為だけに。」
その時のコクヨウの気持ちなど、何も考えもせずに。
全ては自分達の保身の為。
『化け物』を生み出したと言う汚名を聞きたくなかったからでしょう?
「分かる?コクヨウがどんな気持ちだったか?」
期待して、絶望する。
決して自分は愛される事のない日々。
「ーーー・・ねぇ、貴方達も、拠り所を奪われる恐怖を思い知るべきではないかしら?」
うっそりと微笑む。
「っっ、一体、何を・・!?」
「愛し子様、どう言う事でしょう!?」
「分からない?精霊王たる方の加護を受けた者を害した貴方達が信仰の場に相応しくないと言っているのよ。」
「「なっ!?」」
愕然と、コクヨウの両親が目を開く。
「これから先、ニュクスお母様の愛し子としてお前達が一切の信仰の場に立ち入る事を禁ずる!ふふ、もっともお前達に相応しい罰でしょう?」
思い知れ。
自分達が犯した罪の重さを。
「っっ、あぁ、そ、んな、あんまりです、愛し子様!」
「理不尽な!」
コクヨウの両親が、大粒の涙を流して地面に崩れ落ちた。
「理不尽?なら、幼く何も出来ない子供を虐げ、売り払う事は当然の行いと言うのか!」
ふざけるな。
どこまで、自分本位なのか。
「本当、どうしようもない人間ね。今だに自分達が悪いなんて思わないんだから。」
ぶちぎれれば、カティアもキレる。
「私も罰として、加護を与えしコクヨウを非難したお前達にしばらくの間、闇の祝福を与えない。それが私からの罰。」
カティアの手に闇が圧縮されていく。
「今、この瞬間に全ての闇は我が元へ帰った。闇魔法、そして、夜もお前達の元へは来ない。」
冷徹に周囲を見下ろすカティア。
「お前達の罪の大きさを身をもって知れ!」
カティアが吐き捨てた。
後に一切の闇魔法、夜が消えた現象を引き起こした者達に対して民衆が激怒し、貴族と教会の権威が大きく失墜する事になる。
11
お気に入りに追加
2,256
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる