リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第11章〜勇者編〜

血に飢えた化け物

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目の前に広がる血の海。
勇者一行と一緒に来た兵とルイド達もモンスター達へ必死に応酬するが、戦闘に不慣れでパニックに陥った元クラスメイト達は逃げ惑うだけ。
世界を救う勇者一行と言うのに不甲斐ない事、この上ない。


「で、勇者様?そんな風に地面にへたり込んでばかりいないで、ご自分の大切な同郷の皆さんを助けたらいかがです?」


魔力を枯渇させてへたり込んで苦しそうに肩で息をする相馬凪へと、私は視線を向けた。
だから言ったのだ。
もう少し考え、余力を残して戦えと。


「っっ、この状況で、出来る、訳、が、ないだろう!」
「あらあら、だから言ったんですよ?無駄な魔法を使わず、いざって時の為に魔力を温存してくださいって。」


細まる、私の瞳。


「全部、この惨状は私の忠告に全く耳を傾けて下さらなかった貴方の責任でしょう?弱音なんか吐かないでください。」


目の前の惨状を指差す。


「貴方が引き起こした惨状です。良い加減、現実を見たらどうですか?」


甘えるな。
こうならない道も、お前は選べたのだ。


「貴方がしっかりと戦い方を学び、私達の忠告へ耳を貸していたら、こうならなかったかも知れませんね?」
「ち、違う!」
「違う?倒れている勇者様の同郷の方々にも、勇者様は同じ事を言うのですか?」


ゆるゆる上がる私の口元。


「自分は何も悪くないとでも?今、そこに倒れている方が悪いのだと、そう皆さんに言える?」


確かに、彼らにも原因がある。
が、相馬凪には勇者としての恩恵があるのだから、その力を磨くべきだった。
例え偽りの勇者と知らなくとも。


「貴方のくだらない1つのミスが、皆んなの事を殺すんです。ふふ、勇者様は、人殺し、ですね?」
「っっ、」


顔が蒼白になった相馬凪が、身体を震わせた。
目の前の相馬凪の姿に歓喜する。
あの相馬凪が無様にも地面に膝を折り、見っともない姿を私の目の前に晒すなんて。


「うふふ、貴方、今とても良い顔ですよ?」


心が弾む。
こんなにも楽しい事はあるだろうか?
もっと絶望しろ。
惨めに地べたに這いつくばり、死を懇願するまで。


「っっ、なんで、どうして、この惨状を見て、お前は笑っていられるんだよ!?」


叫ぶ相馬凪が涙を流す。
どこか私を責める相馬凪の瞳。


「人が、知り合いが目の前で死にそうなのに、お前は何とも思わないのか!?」
「・・・何とも、ねぇ?」


首を傾げる。


「悪いけど、まだ会ってから1日しか経っていない、良く知りもしない貴方達が生きようが死のうが、私にとってはどうでも良いんだけど?」


私をとことんいじめ抜いた元クラスメイト達に対して愛着などある訳がない。
あるのは、増悪と嫌悪感。


「なっ、俺達は勇者一行なんだぞ!?」
「だから何?自分達は特別だから、誰からも守られると当然の様に思ってた?」
「っっ、違っ、!」
「しかも、自分の無能を棚に上げて何で私を責めるの?迷宮内に入れば、こうした命の危険があると知っていて、貴方達はこの場にいるんでしょう?」


冷ややかに見つめる。


「誰かを恨むなら私ではなく、この場に貴方達を送り込んだ皇王なんじゃないの?」
「っっ、」
「ほら、勇者様が召喚された理由の魔族がいますよ?戦って、皆んなを助けないと、ね?」


言葉を失う相馬凪。
先ほどまでの傲慢さの欠片もない。


「まぁ、今の無様な貴方では、無理でしょうけど。」


鼻を鳴らす。


「ーー・・まだ貴方を死なせる時ではないから、今回は特別に助けてあげる。」


レイピアを構える。


「ん?今度はお嬢ちゃんが私と遊んでくれるの?」


私にレイピアの切っ先を向けられた女魔族、マキアは楽しそうに笑った。


「逆、よ。」
「は?何言って、っっ、!?」


マキアは突如前に現れた私に目を剥き、慌てて飛び退る。


「っっ、な、お前!?」
「楽しく遊ぶのは、この私だもの。」
「・・面白い事を言う。」


笑う私に剣呑に光る、マキアの瞳。
これからが本番かな?


「ディオン、今の内に怪我をした皆の治療をお願い。誰1人として、死なせないで。」
「はい、ディア様。」


私の指示に、ディオンの放つ光魔法が傷ついた者や、倒れ伏す全員の身体に行き渡っていく。
みるみる内に回復していく傷口。


「コクヨウ、アディライト、フィリアとフィリオの4人は雑魚のモンスターを片付けて。」
「「「「御意。」」」」


モンスターの元へ4人が四方に散る。
4人の手によって、呆気なく屠られるモンスター達。


「くっ、全員を一度に治癒させる、か。しかも軽々と私の可愛いモンスター達を屠るなんて、お前達は化け物か!?」
「ふふ、化け物?それは、貴方の方でしょう?」


レイピアの先を向ける。


「ーーー・・ねぇ、血に飢えた化け物さん?」
「っっ、お、前!」


嘲る私に、マキアの顔が怒りに歪む。


「はっ、お前は、この私がただ血を流して遊ぶ為だけにこの場にいるとでも言うのか?」


私に対して怒りを孕む、マキアの瞳。
ぎらぎらと光り輝いた。


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