リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

文字の大きさ
上 下
330 / 424
第10章〜海竜編〜

知った、あの日の真実

しおりを挟む


私達へ優しく微笑む美女。
目の前で私達に微笑む美女が、リグラルドセル大陸に生きる者の全ての母。


「・・ニュクス、様?」
「ふふ、えぇ、そうよ?ディアちゃん、そして貴方達も私に会いに良く来てくれたわね?」


慈愛の眼差しで私達の事を歓迎するニュクス様。


「さぁ、まずはお茶にしましょう?お茶とお菓子を用意するから席におかけなさいな。」


ニュクス様から席に座るよう勧められる私達。
気付けばいつの間にか、全員の分の椅子とお茶がテーブルの上に用意されていた。
驚きつつ、椅子に座る私達。


「皆んな、温かい内にお茶を召し上がれ。」


微笑むニュクス様に促され、用意されたお茶が入っているカップに口を付ける。


「・・美味しい。」


美味しさに、少しだけほっとした。


「うふふ、気に入ってくれたなら嬉しいわ。」


上機嫌なニュクス様も自分の目の前にあるカップを優雅な仕草で手に取ると、口を付ける。
目を奪われるような洗礼された仕草と、威厳。
この目の前に座る人は、本当にこの世界の母と崇められる女神なのだ。
人とは違う存在。


「・・あの、ニュクス様?なぜ、ニュクス様は私の事を呼んだのですか?」


まず問いかけたのは私。
そんな私に、ニュクス様は口元を緩める。


「今日は、貴方に伝えなきゃいけない大切な事があったから呼んだの。それに、自分の愛し子に会いたいと思うのは可笑しい事かしら?」
「それも、可笑しいと思います。」


そもそも、なぜ私なの?
この世界の全ての母と呼ばれるニュクス様が、私の事をなぜ愛し子と呼ぶのか。
困惑を浮かべる。


「そんなにも、私がディアちゃんの事を愛し子と呼ぶのが不思議かしら?」
「正直に言えば、そうです。」


こくりと頷く。


「あら、とても正直ね。」


ころころと、楽しげにニュクス様は笑う。


「でも、私がディアちゃんの事を愛し子と呼ぶのは当たり前だと思うの。だって、今のディアちゃんの身体を頼まれて作ったのは私なんだもの。」
「は・・?」


頼まれて、身体を作った?


「ちょ、ちょっと待ってください!」
「うん?」
「頼まれて私の身体を作ったって、一体、どう言う意味ですか!?」


意味が分からない。


「ディアちゃん、いえ、今は弥生ちゃんと言うべきかしら?」


おっとりと、ニュクス様は首を傾げる。


「っっ、」


はっと息を呑む。
・・その名前を、どうして。


「ニュクス様、は、全てを知って・・?」
「えぇ、知っているわ。日本んで生きてきた貴方の事を。」


ニュクス様が頷く。


「弥生ちゃんの身体は、あの日に命が尽きた。その事は、何よりも自分が理解しているわね?」
「・・はい。」


あの日。
私が学校の屋上から飛び降りた日の事だろう。


「弥生ちゃんの身体は、あの日に全ての活動を終えた。その貴方をこちらで新たな肉体を得られたのは、どうしてか疑問はなかった?」
「いえ、特には。」
「そう、弥生ちゃんの命尽きた身体から魂だけを取り出し、あちらの世界の神が私の元へ運んだのよ。リデル、貴方のお母様の願いを聞いた、あちらの世界の神が、ね?」


目を大きく見開く。


「リデルが、お母さん・・?」


口元が戦慄いた。
リデルが私のお母さんとは、どう言う事だ。


「えぇ、間違いなく、リデルは姿を変えていた貴方のお母様よ。」
「ーーーっっ、そんな!?」


愕然とする。
あの時に会ったリデルが私のお母さん?


「本当よ?貴方のお母様が娘の幸せを望み、どうにか出来ないかと日本の神に縋りついたの。」
「そんなの嘘です!!」


嘘だ。
そんなはずがない。
だって、そうでしょう?


「そんなの嘘なんですよね!私の事を憎んでいるお母さんが、そんな事をお願いする訳ないもの!」


強く拳を握る。


「どうして、お母様が弥生ちゃんの事を憎むの?」
「お母さんの命を奪ったのは私ですよ!?私が生まれていなければ、まだお母さんは生きていられたはずだわ!」
「そうね。貴方の言う通り、お母様は出産さえしなければ、その命をもう少し永らえさせていたかも知れないわね?」


カップを置くニュクス様。


「でも、なぜ、それが貴方の事を憎む事になるのかしら?」
「え?」
「ふふ、どこに自分の命が短くなると知っていながら、自らの選択で生んだ我が子を恨む母親がいるの?」


ニュクス様の瞳が細まる。
言葉を失う。
元々、身体が弱かったお母さん。
そんなお母さんの身体で、負担がかかる子供を生む事がそもそも無謀だったのだ。


「貴方の事を命懸けで生むと決めたのは、お母様。そのお母様の選んだ選択の先に、貴方にどんな責任があると言うのかしら?」
「っっ、そ、れは、」


1番、誰が悪かったのだろう?
死ぬかもしれないリスクがありながら、私を生むと選択したお母さん?
愛した妻の死を受けいられなかったお父さん?


「貴方は、お母様に望まれて生まれてきた、愛された子供よ。」


私の目から涙が零れ落ちた。
お母さんを殺してしまった私は、悪くなかったの?


しおりを挟む
感想 147

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

処理中です...