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第10章〜海竜編〜
アディライトからのお叱り
しおりを挟む大事な可愛いいアディライトに対して暴言を吐くと言う事は、この私に喧嘩を売ったも同前。
喜んで、その喧嘩を買いましょう。
「で?生まれて来なければ良かったの続きは?」
「あっ、」
私からの殺気に、身体を震わせるサフィア。
その顔は青白い。
「ふふ、どうしたの?あんなに良く喋る口だったのに。」
「っっ、」
「ーーーねぇ、聞いているんだけど?」
身体を震わせるサフィアの前まで歩き、殺気を強める。
「ひっ、」
あまりの私の殺気に、腰を抜かすサフィア。
地面に座り込んでしまう。
「サフィア!?」
突如として座り込むサフィアに、驚くトム。
直に私から殺気を向けられているサフィアとは違い、トムには何もしていないので、困惑するのは当たり前の事。
トムの顔に困惑が広がるばかり。
「無様ね。」
そんなサフィアを冷ややかに見下ろす。
「お前如きが、私の可愛いアディライトの名前を呼ぶ事さえ烏滸がましい。」
アディライトが汚れる。
見る事さえしないでくれるかしら?
「分かったの?」
「ひっぅ、」
涙を目に滲ませたサフィアが、粗相をする。
漂うアンモニア臭。
あらら。
「なっ、どうしたんだよ、サフィア!?っっ、お前、」
気付いたトムも顔色を失う。
その目に宿るのは、婚約者への失望?
「どうやら、サフィアさんは具合が悪いみたいですね?」
私は殺気を霧散させる。
サフィアの粗相も見られたし、ね?
溜飲は下がった。
「トムさん、早くサフィアさんの事を家で休ませてあげたらいかがですか?」
「・・は、い、」
呆然自失状態のサフィアを嫌そうな顔で抱き上げ、トムは足早に街中の方へと去って行く。
婚約者に、ひどい対応ですね?
笑いを噛み締める。
「ふふ、サフィア、これで簡単に終わりなんかしないのに。」
せいぜい、今の平穏を存分に満喫してね?
束の間の安息なんだから。
「ーーーディア様?」
去って行くサフィア達の背中を笑いながら見送っていた私を、アディライトの声が呼んだ。
「うふふ、説明いただけますよね?」
「へ?」
私が振り向いた先。
「サフィアとトムの婚約の事、なぜ、ディア様がご存知だったのでしょうか?」
にこやかに。
しかし、全く目が笑っていないアディライトがいた。
「ひっ、」
・・あっ、これ、すごく怒ってる。
聖母のように微笑みを浮かべるアディライトの背後に、般若の顔が見えた気がした。
「ディア様、どう言う事なんですか?」
「ご、ごめんなさい!」
半泣きになる私。
あまりのアディライトの怖さに泣きそうである。
「まず、説明を。」
「はい!リリスから、サフィアとトムの2人の情報を得ました!」
あっさりとバラす。
これ以上、アディライトの怒りが燃え盛ったら危険なので。
主に、私の精神が!
「あら、うふふ、サフィアに対して、ディア様は何もしないとおっしゃったはずですが?」
ーーー私の聞き間違いでしょうか?
そんな声が聞こえた。
「・・いや、あの、自衛は必要かな?って、」
「ディア様?」
「はい、正直に言います!サフィアに何かしらの仕返しができたら良いなって思ってました!」
「コクヨウと、その顔は、どうやらディオンの2人もディア様の共犯ですね?」
呆れたようにアディライトが溜め息を吐く。
「お2人がおりながら、どうして、ディア様の事をお止めしないのです?」
「僕達がお止めしたら、ディア様は1人でしますよ?」
「アディライト、まさか、その方が良かったですか?」
「いえ、とても英断です。」
「ちょっと!?」
2人に対して私よりお咎めが少ない事に抗議の声を上げる。
「しかも、最後のひどくない?私を何をするか分からない危険人物だとでも思ってるの!?」
「「「そうでしょう?」」」
むくれる私にアディライト、コクヨウ、ディオンの3人の声が揃った。
何で!?
「さて、ディア様とじっくりお話ししないといけませんね?」
最後にアディライトが微笑んだ。
そのまま街の散策が中止になったのは言うまでもない。
街の散策を中止し、宿へと戻って来た私達。
アディライトが満面の笑みを浮かべる。
「で、お聞かせくださいますよね、ディア様?サフィアに何もしないと言う私へのお言葉を、嘘になさったんのですから。」
宿に戻った私は、逃げることも出来ずにアディライトに詰問されてしまう。
「あの様にサフィアの事を怒らせて、ディア様は何を考えているのでしょう?」
「え?サフィアで楽しく遊ぶ事だよ?」
当然でしょう?
即答すれば、アディライトの目が細まる。
「ダメです、ディア様。あの様な害虫に近寄ってはなりません。」
「うん、無理。」
まさかの、元親友のサフィアの事を害虫扱い。
私への暴言に、アディライトのサフィアへの怒りは収まらない様子。
しかし、無理なのだ。
「だって、私の迷惑になるならアディライトは目の前から消えるでしょう?」
「っっ、」
あぁ、ほら、否定しない。
だから嫌だった。
「アディライト?貴方の全ては、私のモノなんだよ?」
なのに、私から離れるの?
私を捨てて?
「私の迷惑になる?だから、離れるのが正解?」
私の元から消えるなど許さない。
「ふふ、ほら、そんな事になるなら、そうなる原因を取り除かないとね?」
アディライトを私から奪う原因は、ちゃんと取り除かなきゃいけないでしょう?
私だけのアディライト。
「貴方を私から奪う、どうでも良い存在は必要ないでしょう?」
なら、消さなきゃ。
私からアディライトを奪う存在や噂を。
「貴方が思うのは、私だけで良いの。そうでしょう、アディライト?」
他は捨てて?
アディライトの心が私だけになる様に、いらないものは全部消してあげるから。
「大好きよ、私のアディライト。」
だから、離れないで?
何があっても。
「っっ、ディア様、私も大好きです。」
瞳を潤ませるアディライトの身体に抱き付き、自分の腕の中に閉じ込める。
私の大事なアディライトの事を。
「アディライトを煩わせるものは、要らない。だってアディライトが考えて思うのは私だけで良いんだもの。」
仄暗く笑った。
「・・あら、雨?」
計画は進む。
楽しい私の望む通りの展開へ。
その日から、ルドボレーク国に嵐が訪れ、雨が止む事は無かった。
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