リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

文字の大きさ
上 下
308 / 424
第10章〜海竜編〜

アディライトの怒り

しおりを挟む


怒りの矛先をアディライトから私へと変えたサフィア。
うん、お馬鹿さん。
そんな事したら、1番ダメだったのに。


「・・サフィア、貴方は今、なんと言いました?」


ほら、反応した。
私の可愛いアディライトが。


「は?もしかして、アディライト、耳まで遠くなったの?」


サフィアの口元が悪に歪む。


「あんたのご主人様は、自分の奴隷も満足に管理も出来ないダメ人間だって言ったのよ!今度は聞こえたかしら?」
「・・そう、やはり、そう貴方は言ったのね。」


消えるアディライトの表情。
ゆらりと揺れたアディライトはサフィアにあっという間に近づくと、その首へと手を伸ばし、掴んでしまう。


「あっ、ぐう、」


アディライトに掴まれた首が絞まるのか、苦痛の声を上げるサフィア。
しかし、緩まる事のない力。
サフィアの首を締めならがら、アディライトはその身体を持ち上げてしまう。


「サフィア、貴方の事を早急に排除するべきでした。私の大切な主人に対して、暴言を吐く前に。」


淡々と告げるアディライト。
苦しがるサフィアを見る目は、旧友に対するものではなかった。


「私の主人を貶める人間は必要ありません。サフィア、私と主人の前から消えてください。」
「っ、あぁ、くっ、」


どんどん強まるアディライトの力に蒼白になるサフィア。
瞳も虚になっていく。
あらあら、しょうがない子ね。


「ーーー・・アディライト、止めなさい。」


ぴたりと止まる、サフィアの首に食い込んでいたアディライトの指の力が私の制止する声に緩まった。
ドサリと地面に落ちるサフィアの身体。


「かは、ゲホ、あぅ、」


地面に横たわりながら、サフィアが大きく咳き込む。
その顔は涙でぐじゃぐじゃだ。


「っっ、サファイ!?」


咳き込みながら、地面から起き上がれないで苦しむサフィアに駆け寄るトム。
え、今?
ようやくの動きに驚いてしまう。


「ディア様、彼はアディライトの行動に驚いて、ずっと固まっていましたよ?」


私にこっそりと囁くディオン。
トムの間抜けな所をばっちりと見ていた模様。


「へぇ、自分の記憶の中のアディライトと違う一面を見て驚いたって所かしら?」


人は自分の理想を相手に押し付ける。
そうあれと言うかの様に自分の理想と違う事をすれば幻滅し、裏切られたと嘆く。
勝手な生き物だ。


「ふふ、アディライトの一面しか見ていなかった坊やには、刺激が強過ぎたかもね。」


必死にサフィアの背中を擦るトムに笑う。
何が恋だ。
相手の全てを受け入れられない半端者が、私からアディライトを奪えるとでも?


「ーーー大丈夫ですか、サフィアさん?」


微笑みを顔に貼り付け、サフィアとトムの2人に近付く。
ようやく地面から起き上がったサフィアが、近付く私を睨み付けてくる。


「っっ、これが大丈夫に見える!?あんたの奴隷のアディライトに首を絞められて、私は殺されかけたのよ!?」


サフィアが吐き捨てる。
忌々しそうなサフィアの顔に私は内心で拍手喝采。
折れない心が素敵だ。


「申し訳ありませんでした、サフィアさん。私のアディライトはとても過保護で、暴言や敵対行動を許さないんですの。」


最初に喧嘩をふっかけたのは貴方でしょう?
言葉に滲ませる。


「まぁ、サフィアさんがアディライトと婚約者との関係を誤解するのも分かりますわ。だって、とっても素敵な婚約者さんなんですもの。」


特に、扱い易いと言う意味で。
サフィアを怒らせる起爆剤として、彼はとても優秀です。


「私も夫がおりますから、サフィアさんの気持ちが分かりますの。自分のお相手が素敵な方だと、不安になりますよね?」
「・・夫?」
「えぇ、こちらの2人が私の夫ですの。」


私の腰を抱くコクヨウと、そばに寄り添うディオンの事を2人をサフィアに紹介。
どう?
私の素敵な旦那様は?


「ふふ、私の夫も素敵でしょう?」
「・・そう、ね、とても素敵だわ。」


今までアディライトにしか目を向けていなかったサフィアは、私の紹介でコクヨウとディオンの2人に姿に釘付けになってしまう。
おい、お馬鹿さん。
貴方の隣に婚約者のトムがいるのに、人の旦那をガン見するな。


「あら、釘付けになるくらい私の夫を素敵だと思ってくださって、ありがとうございます。」
「っっ、~~」


困った様に微笑めば、サフィアの顔が羞恥に染まる。
そりゃ、そうよね?
トムに浮気だとか、アディライトに気があるって詰っておいて、自分は人の夫に見惚れているんだから。


「サフィアさんの不安なお気持ちも分かりますし、どうでしょう?お互いに今日あったことは見ずに流し、忘れると言う事で?」


こてりと、首と傾げる。


「サフィアさんも大事にはしたくないのでは?街の方が言ってましたが、今年の舞手に選ばれたのですよね?」


この提案は、貴方の為。
サフィアの事を思っての提案なのだと囁く。


「・・確かに問題を大きくしたくはないわ。でも、アディライトのした事を許せと言うの?」
「サフィア、これ以上はよそう?こんな揉め事が街中の人に知れ渡れば、君の舞手としての悪評となるんじゃないか?」


渋るサフィアをトムが宥める。
トムもこれ以上の揉め事に発展する事は嫌な模様。
うん、ありがとう、素晴らしいアシストです。

しおりを挟む
感想 147

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

処理中です...