リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第10章〜海竜編〜

幼馴染との邂逅

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トムの反応をコクヨウ達の背中越しに窺う。
しかも、トムと言う名前は、リリスからの情報で仕入れた最重要な人物なのだから。


「アディライト、久しぶりだな。元気、だったか?」
「私は元気よ。トム、貴方の方は?」
「あぁ、お陰様で俺の方も何とか元気だ。」


お互いにぎこちない様子で、当たり障りのない会話をする2人。


「そっか、アディライトが元気なら良かった。ずっと、アディライトと別れてからどうしているか気になってたからさ。」


アディライトの返事にほっとしたような表情を浮かべたトムに、私は心の内でニンマリと笑った。


「良い餌になりそう。」


何と言う幸運。
私が何かしなくても、こんな偶然に、最重要人物に会えるなんて。
アディライトを誘導する手間が省けたよ。


「ーーー初めまして、アディライトの主人、ディアレンシア・ソウルと申します。」


私を守るように立つコクヨウ達の後ろから出る。
トムから私へ向けられる視線。


「えっ、あ、主人?」
「ふふ、奴隷として売られていたアディライトを私が買ったんです。ですから、私は奴隷であるアディライトの主人なのですよ。」


困惑するトムに微笑む。


「トムさん、でしたっけ?私の奴隷であるアディライトのお知り合いのようですね?」


何度もアディライトが私の奴隷なんだと強調する。
さぁ、どうするかしら?
大切なそぶりを見せたアディライトが、奴隷の身分だと知って。


「なっ、アディライトが奴隷!?」
「えぇ、今では私の大切な奴隷であり、家族なんですよ?」
「っっ、本当の事なのか、アディライト!?」


アディライトにトムの視線が向く。


「本当よ。」
「どうして、何でアディライトが奴隷なんかになったんだよ!?」
「私が『厄災の魔女』だからよ。トム、貴方もその事を良く知っているでしょう?」


溜め息を吐くアディライト。


「もう良いかしら?私はディア様のお世話で忙しいの。」
「待っーーー」
「そうですよ、トムさん?で他の女性と親しく話す事は止めた方が良いと思いますよ?」


2人に近付き、私はアディライトの腕を引く。


「婚約者?トム、婚約したの?」
「そ、れは、」
「それなら、早く言ってくれれば良かったのに。トム、おめでとう。」
「っっ、」


アディライトの祝いの言葉に歪むトムの顔。
私は楽しくて仕方ない。


「さ、アディライト、そろそろ行きましょう。」
「はい、ディア様。」
「ちょっ、待ってくれ!」


アディライトに伸ばされる、トムの手。


「トム・・?」


手を伸ばすトムの後ろ。
1人の少女がトムの事を不思議そうに見つめていた。


「もう、こんな所で何をしているのよ、トム!私との約束の時間を忘れたの?」


目を釣り上げて怒った様に頬を膨らませた少女がトムの腕に抱き付く。


「貴方の事、ずっと探していたのよ?一体、誰と話してーーー」


その瞳が、トムからアディライトの方へと向いた。


「っっ、ア、アディライト!?」


見開かれる瞳。


「なっ、アディライト、何であんたがここにいるのよ!!?」


少女の金切り声が、その場に響いた。


「え・・?サフィア?」


婚約者であるトムの腕を強く抱き締めて、驚くアディライトの事をキツく睨むサフィア。


「っっ、ちょっと、馴れ馴れしくトムに近付かないでよ、『厄災の魔女』!もうトムは、私のものなんだから!」
「・・・えっと、」


睨まれ、困惑するアディライト。


「ふふふ、いらっしゃい、さん?」


私は1人、楽しく笑う。
困惑するアディライトの事を、婚約者であるサフィアに腕に抱き付かれたまま見つめるトム。
とても面白い、カオスな状況である。


「神様、ありがとう!」


だが、私はひっそり1人で神に感謝を捧げていた。
だって、何この美味しい展開。
おいでませ、私のターゲット、サフィア!


「アディライト、トムはもう私の婚約者よ!だから色目を使わないでちょうだい!!」
「・・色目?いえ、使っていませんけど。」


歓喜する私を他所に、アディライトへのサフィアの攻撃は一向に緩まない。
噛み付くサフィアに、ますます困惑を深めるアディライト。
何言ってんの?と言わんばかりの表情。


「何、痴話喧嘩?」
「なんだか、女の子2人が男の取り合いみたいよ?」
「あの子、今年の海竜祭の舞姫に選ばれたサフィアちゃんじゃないか?」
「相手の男の子は、サフィアちゃんの婚約者のトム君よね?」
「えっ、まさか三角関係?」
「いや、さっきから見ていたが、サフィアちゃんがもう1人の女の子に言いがかりみたいに罵ってるんだよ。」
「あのサフィアちゃんが?」
「あれ?サフィアちゃんに責められいる女の子、どこかで見たような・・・?」


周りからも大いに私達は注目を浴びてしまっていた。


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