リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第10章〜海竜編〜

コクヨウの不安

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こうして私の心を動かせるのは、家族である皆だけ。
邪魔な他の人達はいらない。
大事な人達だけが、私の側にいてくれればいいの。
そんな世界に、私は捕らわれていたい。


「コクヨウ、例え貴方の手が血に染まろうとも構わないわ。どんなコクヨウでも、愛してるの。」


ほら。
私の言葉に、コクヨウが嬉しそうに微笑んでくれる。
薄っぺらい愛なんかいらない。
人は平気で、愛を捨ててしまうから。


「ーーー・・ディア、貴方の事が欲しい。」
「ん、私も。」


頷けば、コクヨウに抱き上げられる私の身体。
キスを何度も繰り返しながら、そのままコクヨウによって寝室のベットへと運ばれる。
優しくベットへ置かれ、沈む私の身体。


「ディア・・?」
「う、ん?」


覆い被さるコクヨウを見上げる。


「好きです。」
「うん。」
「誰よりも、なによりも愛してます、貴方の事を。」


ゆっくりと脱がされる服。


「ーーー・・このまま、貴方と1つになれたら良いのに。」


剥き出しの私の肩にコクヨウが口付ける。
私達の愛は歪で、普通ではない。
でも、良いでしょう?


「そうすれば、不安も孤独も、ディアと全て分かち合えるのだから。」


それが、私達の愛し方。
この可笑しいと非難される狂気こそ、何よりも私達が求める愛なのだ。


「ふふ、そんなの困るわよ、コクヨウ。」
「困る?」


コクヨウが私の顔を覗き込む。


「だって、コクヨウとこうして抱き合えなくなるでしょう?」


そんなの嫌だ。
私に覆い被さるコクヨウの髪を梳く。


「私はコクヨウと、こうして抱き合うのが好き。」


目尻に。


「コクヨウに、名前を呼ばれるのも嬉しい。」


頬に。


「その瞳に私の事だけを見てほしいと思ってる。」


唇に口付ける。


「コクヨウ、私は貴方の全てが愛おしいの。」


悪女と呼ばれても構わない。
誰か一人を一番に選べない私は、全員の事を手に入れる。


「だから、そんな事を言わないで?」
「は、い、」


頷くコクヨウと手を繋ぐ。
重なる私達の手。


「ーーー・・もっと強く、コクヨウ、深く私を抱いて。」


出会えた奇跡。
この出会いを、運命と思いたい。


「コクヨウ、貴方が不安にならなくなるぐらいに。」


不安にさせている自覚はある。
今回は自分から敵を煽り、悪意を向けようとしているのだから。
私に過保護なコクヨウが不安にならない訳がない。


「・・ディアは、」
「うん?」
「どこまで僕を貴方に惚れさせるつもりですか?」


上がる私の口角。
どこまで?
そんな事、最初から決まっているでしょう?


「ーーー骨の髄までよ。」


どこまでも貪欲に。
私は貴方達からの愛を求めるの。


「昨日は、2人でお楽しみだった様ですね?」


コクヨウと抱き合い眠った翌日。
朝一で私の寝室へ来て不機嫌な表情を浮かべたディオンが、コクヨウに不満そうな眼差しを向ける。
当然、私達は裸な訳で。


「コクヨウ、1人だけずるいのでは?」


コクヨウとの昨日のあれこれが、ディオンにモロバレ状態。
別に隠している訳じゃないんだけどね?
恥ずかしいのである。


「・・あの、ディオン?」


身体をシーツで隠し、恐る恐るディオンの名前を呼ぶ。


「ディア様、何です?」
「ごめんね?」


しゅんと、肩を落とす。
ディオンからしたら、自分だけ除け者にされた気分だよね?
反省である。


「ディオン、済まなかった。」


コクヨウもディオンへと素直に頭を下げる。


「はぁ、ディア様、私もコクヨウと同じ様に愛してくださらないとダメですよ?オリバーだって、アレンだって悲しみますからね?」
「はい、ごめんなさい。」


ちゃんと反省します。
2度と、ディオン達の事を蔑ろにしません。


「で、一体、昨日はコクヨウに何があったのですか?」
「「え?」」


コクヨウと2人、目を瞬かせる。
何で知っているの?


「はぁ、分かりますよ、私でもそれぐらい。」


ディオンが呆れの表情を浮かべる。


「ディア様が、私に何も言わずにコクヨウとだけ寝室に籠られれば。」


正論すぎて言葉が出ない。


「で、昨日はコクヨウに何が?」
「えっと、私が少しコクヨウの事を不安にさせた?」


で、合ってるよね?
ディオンの眉がピクリと動く。


「ディア様?」
「は、はい?」


・・・何、だろうか?
がらりとディオンの雰囲気が変わったような気がするのは、私だけ?


「コクヨウが不安になるなんて、一体、今度は何を企んでいるんですか?」
「へ?何も企んでないよ?」
「・・本当に?」
「うん、本当。」


ディオンに疑いの目を向けられる。
え、何で?
何故か信じてもらえない私。
疑いの目をディオンから向けられたまま。


「ディア様、昨日から色々と企んでいるでしょう?」


苦笑いのコクヨウ。


「へ?」
「サフィアの事です。」


サフィア?
はて、と、私は首を横に傾げた。
サフィアに対する企み?
もしかしてーー


「んー、企むと言うか、あちらから何か仕掛けてくれないかとは思ってるだけだよ?」
「・・・ディア様、それが企みと言うのです。」


ディオンが、その顔を険しくさせた。


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