290 / 411
第9章〜大会編〜
精霊王の謝罪
しおりを挟むこの国の食文化は、まだまだ進んでいない。
日本にいた私としては、蒸す、揚げると言った料理方法もないことに驚きなのだ。
「なんなら、いつでも食べに来てください。お2人が食べた事のない料理やデザートを用意しますから。」
てな事で、お誘いしてみる。
精霊王達にも、知らない料理を味わっていただきたいと思う。
色々と良くしてもらっているしね。
「え?まだまだ私達が知らない色々な物が食べられるの?」
「このまま、ここへ住み着こうかしら?」
「そうね、こんなにも美味しい物が食べられるなら、それも良いかもしれないわ。」
「ふふ、毎日、こんなに美味しい物が食べられるなんて幸せよ。」
私のお誘いに乗り気な2人。
どうやら、光と闇の精霊王が、この屋敷に住み着きそうです。
それを聞いたら、他の精霊王達も住み着きそう。
華やかになるから嬉しいけどね。
「ーーーで、私達がここへ来た理由だけど。」
パウンドケーキも全部食べ終わり、口直しにお茶を飲んだ闇の精霊王が口を開く。
ついに本題のようだ。
「はい、お2人はどの様なご用でいらしたのでしょうか?」
「んー、そんな大層な事ではないのよ?」
「闇と私の加護をディアちゃんにあげようと思っただけなの。」
おっとりと、光の精霊王が付け足す。
「お2人からの加護を、私にいただけるのですか?」
「えぇ、私達の母神様であるニュクス様も、それをお望みだし、加護を授ける事に何の異論もないもの。」
「闇も、私も、ディアちゃんに喜んで加護を授けるわ。」
「ありがとうございます。」
心強い。
加護を下さと言う2人に感謝である。
「ーーーそれと、」
「私達がここへ来た理由がもう一つあるの。」
「もう一つ・・?」
目を瞬かせる。
「貴方の存在を見つけて、驚いたわ。」
「今日は私達、貴方にも会いに来たの、コクヨウ。」
2人の視線が、コクヨウへ向いた。
突然2人から視線を向けられたコクヨウが身動ぐ。
「・・・あの、僕に、ですか?」
「えぇ、そうよ。」
「ディアちゃんへ加護を授けるのとは別に、私達は貴方に会いに来たの。」
こくりと頷く2人。
「ーーー・・それは、コクヨウが持つ『闇に愛されし者』の称号が理由なのでしょうか?」
私は口を挟む。
「・・ん、その通りよ、ディアちゃん。」
「今日はその事で闇のが、コクヨウ、貴方に謝りに来たの。」
たちまち、しょんぼりと元気を無くす2人の精霊王。
「精霊王様・・?」
元気のなくなった2人に、困惑するコクヨウ。
困った様に眉を下げる。
「私の加護の所為で、貴方には辛い思いをさせたわ。」
「その事に最初、天界にいた私達は気付かなかったの。」
2人は肩を落とす。
すごい落ち込み様である。
「今まで天界にお2人はいたのですか?」
「えぇ、ニュクス様の所に、ね?」
「精霊王の中で、私達2人がニュクス様に呼ばれていたの。」
首を傾げた私に、2人は頷く。
「天界で、ニュクス様にディアちゃんの事を頼まれたわ。」
「まぁ、私もディアちゃんの事が気に入ったから加護を与えようと思ったのだけどね?」
「ニュクス様が・・?」
驚く。
この世界の女神として信仰される尊い存在の女神ご本人が、私の事を気にしてくださっていたなんて。
「ディアちゃんの事を天界から見ていて、コクヨウ、私達はその時に貴方の存在を知ったの。」
「気付くのが遅くなって、ごめんなさいね?」
2人がコクヨウに頭を下げた。
「何百年も昔は、まだ私達精霊を見る事の出来る子は多かったのよ?」
コクヨウに頭を下げた2人の精霊王が話し出す。
遠い昔の思い出を。
闇の精霊は嬉しそうに昔の事を懐かしむ。
「でも、最近では私達や下位の精霊の姿さえ人間達には見えなくなっていたの。寂しい事に、ね?」
「一部の種族を除いて、精霊の姿さえ見えなくなっていた。それは、仕方ない事。」
「そんな時、ある1人の男の子に闇のが出会ったの。」
「それがコクヨウ、遠い昔の貴方よ。」
寂しげな表情で2人は微笑む。
「遠い昔の、僕?」
「そう、前世の貴方と言った方がいいかしら?」
「私が見える人間の男の子に最初は驚いたけど、段々と私達は仲良くなったの。」
「それこそ、闇のが加護を与えるぐらいには、ね?」
ほう、なるほど。
「つまり、その時に与えた闇の精霊王様の加護が、生まれ変わったコクヨウにも適用されてしまった、と?」
「そう言う事ね。」
こくりと闇の精霊王が私の言葉に頷く。
闇の精霊王の加護。
それがコクヨウの瞳が黒くなってしまった理由。
「まさか、私の色が魔族の同じだからって蔑まれるなんて、思わないじゃない?」
闇の精霊王の瞳に怒りが宿った。
11
お気に入りに追加
2,257
あなたにおすすめの小説
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる