リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第8章〜外交編〜

閑話:ミンティシア①

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ミンティシアside



この国の民、全ての為にあれ。
幼い頃から、それが王妃たるお母様からの教え。
王女として生まれた私の、なすべき事。


「良いですか、ミンティシア、自分が王族だからと言って、血筋や権力に驕ってはなりません。」


私に強く言い聞かせるお母様は、まさしくこの国の王妃。
凛として、何事にも動じない人だった。
私の理想で、憧れの女性。


「まぁ、見て、あの方の衣装の色を。」
「なんて不吉な色。」
「あの色を纏うなんて全く正気だとは思えんな。」


そんな理想である王妃であるお母様以外に、私が憧れた人が出来た。
黒い衣装を纏い、凛と微笑む人。


「この様な場所へあんな色を纏うとは、一体、何を考えているんだ?」
「全く、あんな色の衣装なんて信じられませんわ。」


驚愕、軽蔑、嘲笑、畏怖。


「ーー・・魔族と同じ、黒を纏うなんて。」


周囲からの咎めるような声にも凛として動じない、とても綺麗な女性。
ーーーディアレンシア・ソウル様。


「・・綺麗。」


その容姿ではなく、佇まいが。
誰にも臆する事なく、前だけをまっすぐ向く女性。
それがディアレンシア・ソウル様を初めて見た日の、彼女への私の第一印象だった。


「ーーーーっっ、黒を纏うなど、なんと不吉な!」


高鳴る胸は、その声で霧散する事になる。


「っっ、ミフタリア、お姉様。」


何という事を。
一気に血の気が引く私の顔。


「お前、私の話を聞いているの?」
「そうよ、ミフタリア様の御前よ?見た事のない顔だけど、どうせ貴方も薄汚い下賎な血筋の者なのでしょう?」


この国の王である、お父様のお客様を他国の者や自国の皆の前で罵倒し。


「はっ、どうせ格下の貴族の誰かにでも、卑しくもその身体で今日のパーティーへの招待状を強請ったのでしょう?少しは身の程を弁えなさい?」


あまつさえ、ミミリア様と一緒になってお姉様は権力を振りかざし、嘲笑する暴挙に出てしまった。
それは、決して許されることではない。


「ーーーっっ、急いでお父様を直ぐにこの場にお連れして!」


側に控える騎士に、私はすぐに指示を飛ばす。
慌てて去る騎士に背中。


「きっと男に媚を売るしか脳がないのね。」
「下賤なお前にはお似合いだわ。」


その間も止まらない嘲笑。
あまりに酷い言葉たちに、その顔を顰める人もちらほら。


「でも、下賎の身であるお前の頭でも理解できたでしょう?分かったなら、この場に相応しくないお前は、ちゃんとミフタリア様へ頭を下げてから帰りなさい?」
「ふふ、帰るなら、その妖精族の事は置いていってね?私の愛玩物にしてあげるから。」
「あら、ミフタリア様はその妖精族の事が気に入りましたの?」
「えぇ、とっても綺麗なんだもの。」


私も、お姉様達の嘲笑に扇で隠した口元が歪む。
そんな私や周りからの冷たい視線にも気付かず、お姉様達はお父様のお客様であるソウル様への行いは終わらない。


「この私がお前の事を大事にしてあげる。光栄に思いなさい?」


ーーーパートナーの引き渡しを要求してしまったのだ。
彼らは、ソウル様の奴隷だと言うのに。
お父様から、ソウル様はご自分のパートナーに奴隷の夫を連れて来るのだと聞いている。
ミミリア様は知らなかったとしても、お姉様は私同様、お父様様からソウル様とパートナーについて聞いたではないか。


「あぁ、」


絶望が胸の内に宿る。
誰かのものである奴隷を奪う事は犯罪だ。
その事実を、あの姉達は知っているのだろうか?


「~~~、もう待てない。」


もう、これ以上はお父様の到着を待ってなどいられない。
この場には、他国の方もいるのだ。
一歩、足を踏み出す。


「あらあら、とても面白い事をおっしゃいますね?」


ソウル様の声に、踏み出した私の足が止まった。


「そんなにも彼の事を欲しますか?うふふ、彼に心奪われてしまったのですね?」


ーー犯罪だと言うのに。
そんな、ソウル様の嘲る声が聞こえた気がしたのは気のせいだっただろうか?
ソウル様が、冷たく微笑んだ。


「あら、うふふ、ご覧の通り、彼は貴方の元へ行きたくない様なのですもの。お諦めくださいとしか申せませんわ。」


お姉様達への断罪は終わらない。


「この子は私の所有物ですの。例え誰であろうとも渡すつもりはありません。」
「無礼な!お前の様な下賤な人間は私の言う事を聞けば良いのよ!」
「この私やミフタリア様に対しての物言い、絶対に許しません!不敬罪でお前の事を捕らえてあげるから!」
「そうよ、もう少し態度を弁えなさい!見た目が良いからと天狗になっているのかしら?」
「ふ、ふふ、本当に可笑しな事を仰いますね?弁えるのは私ではなく、貴方達の方なのではありませんか?」


どんどん追い詰めていった。

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