247 / 411
第8章〜外交編〜
閑話:ミンティシア①
しおりを挟むミンティシアside
この国の民、全ての為にあれ。
幼い頃から、それが王妃たるお母様からの教え。
王女として生まれた私の、なすべき事。
「良いですか、ミンティシア、自分が王族だからと言って、血筋や権力に驕ってはなりません。」
私に強く言い聞かせるお母様は、まさしくこの国の王妃。
凛として、何事にも動じない人だった。
私の理想で、憧れの女性。
「まぁ、見て、あの方の衣装の色を。」
「なんて不吉な色。」
「あの色を纏うなんて全く正気だとは思えんな。」
そんな理想である王妃であるお母様以外に、私が憧れた人が出来た。
黒い衣装を纏い、凛と微笑む人。
「この様な場所へあんな色を纏うとは、一体、何を考えているんだ?」
「全く、あんな色の衣装なんて信じられませんわ。」
驚愕、軽蔑、嘲笑、畏怖。
「ーー・・魔族と同じ、黒を纏うなんて。」
周囲からの咎めるような声にも凛として動じない、とても綺麗な女性。
ーーーディアレンシア・ソウル様。
「・・綺麗。」
その容姿ではなく、佇まいが。
誰にも臆する事なく、前だけをまっすぐ向く女性。
それがディアレンシア・ソウル様を初めて見た日の、彼女への私の第一印象だった。
「ーーーーっっ、黒を纏うなど、なんと不吉な!」
高鳴る胸は、その声で霧散する事になる。
「っっ、ミフタリア、お姉様。」
何という事を。
一気に血の気が引く私の顔。
「お前、私の話を聞いているの?」
「そうよ、ミフタリア様の御前よ?見た事のない顔だけど、どうせ貴方も薄汚い下賎な血筋の者なのでしょう?」
この国の王である、お父様のお客様を他国の者や自国の皆の前で罵倒し。
「はっ、どうせ格下の貴族の誰かにでも、卑しくもその身体で今日のパーティーへの招待状を強請ったのでしょう?少しは身の程を弁えなさい?」
あまつさえ、ミミリア様と一緒になってお姉様は権力を振りかざし、嘲笑する暴挙に出てしまった。
それは、決して許されることではない。
「ーーーっっ、急いでお父様を直ぐにこの場にお連れして!」
側に控える騎士に、私はすぐに指示を飛ばす。
慌てて去る騎士に背中。
「きっと男に媚を売るしか脳がないのね。」
「下賤なお前にはお似合いだわ。」
その間も止まらない嘲笑。
あまりに酷い言葉たちに、その顔を顰める人もちらほら。
「でも、下賎の身であるお前の頭でも理解できたでしょう?分かったなら、この場に相応しくないお前は、ちゃんとミフタリア様へ頭を下げてから帰りなさい?」
「ふふ、帰るなら、その妖精族の事は置いていってね?私の愛玩物にしてあげるから。」
「あら、ミフタリア様はその妖精族の事が気に入りましたの?」
「えぇ、とっても綺麗なんだもの。」
私も、お姉様達の嘲笑に扇で隠した口元が歪む。
そんな私や周りからの冷たい視線にも気付かず、お姉様達はお父様のお客様であるソウル様への行いは終わらない。
「この私がお前の事を大事にしてあげる。光栄に思いなさい?」
ーーーパートナーの引き渡しを要求してしまったのだ。
彼らは、ソウル様の奴隷だと言うのに。
お父様から、ソウル様はご自分のパートナーに奴隷の夫を連れて来るのだと聞いている。
ミミリア様は知らなかったとしても、お姉様は私同様、お父様様からソウル様とパートナーについて聞いたではないか。
「あぁ、」
絶望が胸の内に宿る。
誰かのものである奴隷を奪う事は犯罪だ。
その事実を、あの姉達は知っているのだろうか?
「~~~、もう待てない。」
もう、これ以上はお父様の到着を待ってなどいられない。
この場には、他国の方もいるのだ。
一歩、足を踏み出す。
「あらあら、とても面白い事をおっしゃいますね?」
ソウル様の声に、踏み出した私の足が止まった。
「そんなにも彼の事を欲しますか?うふふ、彼に心奪われてしまったのですね?」
ーー犯罪だと言うのに。
そんな、ソウル様の嘲る声が聞こえた気がしたのは気のせいだっただろうか?
ソウル様が、冷たく微笑んだ。
「あら、うふふ、ご覧の通り、彼は貴方の元へ行きたくない様なのですもの。お諦めくださいとしか申せませんわ。」
お姉様達への断罪は終わらない。
「この子は私の所有物ですの。例え誰であろうとも渡すつもりはありません。」
「無礼な!お前の様な下賤な人間は私の言う事を聞けば良いのよ!」
「この私やミフタリア様に対しての物言い、絶対に許しません!不敬罪でお前の事を捕らえてあげるから!」
「そうよ、もう少し態度を弁えなさい!見た目が良いからと天狗になっているのかしら?」
「ふ、ふふ、本当に可笑しな事を仰いますね?弁えるのは私ではなく、貴方達の方なのではありませんか?」
どんどん追い詰めていった。
6
お気に入りに追加
2,257
あなたにおすすめの小説
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる