286 / 424
第9章〜大会編〜
聖皇国パルドフェルドの動き
しおりを挟む気だるい身体を、ふかふかなベットに沈める。
私の隣には、眠るアレン。
その頬を撫でる。
「ーーーう、ん、ディア、様・・?」
うっすらと開く、アレンの瞳。
その瞳が私を見つめる。
「・・どう、されました?」
「ふふ、起こしちゃった?アレン、ごめんね?」
「いいえ、大丈夫です。」
甘く微笑むアレン。
アレンの頬を撫でていた手に口付けられる。
「・・・ねぇ、アレン?」
「はい、何でしょう、ディア様。」
「国の、両親、家族の事について、どうして何も聞かないの?」
私に何も聞かないアレン。
自分の死の偽装の後、どうなったのかさえ。
「気になるなら、教えるよ?」
両親さえ切り捨てさせたとは言え、アレンの偽装葬儀の後の様子ぐらい聞いても怒らないのに。
「いえ、必要ありません。」
「っっ、でも!」
知りたいと思うのが普通でしょう?
家族の事なんだし。
「ディア様?今の僕にとって、ディア様、貴方が全てだ。」
「・・・。」
「家族、を、気にならないと言ったら嘘になります。ですが、あの王宮へ戻りたいとは思っていません。」
「・・そう。」
アレンの胸元に擦り寄る。
「ご家族は、ご健康よ。アレンの死を悲しんではいるけど。」
アレンの胸元で呟く。
本当の家族にさえ死んだ事にしたアレン。
アレンの家族は、本当は生きているとう言う事を誰一人として知らない。
真実は闇の中。
ーーー私達だけが知る真実。
「・・あの王は、気が付いているかも、だけどね。」
小さく呟く。
「ディア様・・?」
これから先、アレンは家族に会えない。
その心臓に、家族に会わず、一切の接触を断つと言う誓約の楔が私の手によって打ち込まれているから。
これは、アレン自ら望んだ事。
『これは、ディア様への誓い。そして、愛の証。』
そう言って。
「愛してるわ、私のアレン。」
「僕も貴方の事を愛しています、ディア様。」
嬉しそうに、アレンが微笑んだ。
「ずっと、これからもディア様のお側にいさせてください。」
「ん、」
アレンの温もりの中、目を閉じる。
きっと、もう。
ーーーー私は大事な存在である、アレンの事を手放せない。
心地良い微睡みに身を任せた。
「ディア様。」
しばらく、アレンの腕の中でうとうとしていた私。
リリスの声で起こされる。
「んん、リリス?」
「起こしてしまい、申し訳ありません。」
「良いけど、どうしたの?」
目を擦り身を起こす。
「聖皇国パルドフェルドに動きがありました。」
「聖皇国パルドフェルドに?」
「はい、勇者召喚を行うようです。」
「勇者召喚?」
思わず眉根を寄せる。
「何の為に?」
「魔王が復活すると、神からのお告げがあったようです。その為、魔王を倒せる存在、勇者を異世界から召喚すると聖皇国パルドフェルドが全ての国に通達しました。」
「へぇ、」
神様からのお告げ、ねぇ。
「ディア様、魔王復活はどの国でも一大事です。聖皇国パルドフェルドが古の勇者召喚魔法を使うのも、致し方ない事かと。」
アレンがリリスの報告に補足する。
「アレン、勇者召喚って、古の魔法なの?」
「はい、そうです。確か、前回に召喚魔法が使われたのは、100年ほど前の事です。」
「あぁ、本で読んだわ。」
前回の召喚された勇者は、男性だったはず。
「アレン、その勇者召喚って、そんなに頻繁に行われるの?」
「いえ、国の危機の時だけです。国の危機を憂える神がお力を貸してくれ、勇者召喚は成功すると勉強を教えてくれた方から聞きました。」
「なら、今回も勇者召喚は成功する、と。」
「はい、神からのお告げがあったらな、確実でしょう。」
難しい表情でアレンが頷く。
「・・魔王の復活と勇者召喚、ねぇ。」
きな臭くなってきた。
新しい魔王が、この世界に生まれるのか。
それとも、100年前に勇者に倒されたとされる魔王が生きていたのか分からない。
が、魔王の復活が私の平穏な生活を脅かす事は必定。
「これまでの魔族との戦闘も、魔王復活の前触れなのかしら?」
だとしたら、とても面倒な事だ。
「しばらくは静観ね。勇者が優秀なら、私が何かする必要がないもの。」
私の子達に被害が出たら話は別だが。
「勇者召喚を見守りつつ、情報集めかしら?」
召喚された勇者が、あっさりと魔王を倒してくれるなら、それが良い。
魔王の討伐なんて面倒ごとは、勇者様に任せましょう。
それが、勇者のお仕事なのだから。
「リリス、聖皇国パルドフェルドの動きを重点的に監視してちょうだい。それと、召喚される者の事も詳しく知りたいわ。」
「かしこまりました。ディア様。詳しく情報を集めてまいります。」
リリスの身体が私の影に溶けていった。
11
お気に入りに追加
2,256
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる