284 / 424
第9章〜大会編〜
アレン王子のお願いと求愛
しおりを挟む目を見開く。
一瞬、自分の耳がおかしくなったのかと思った。
「・・アレン王子、今何と?」
「僕を、殺して下さい。」
が、無情にも、アレン王子は同じ事を言った。
顔が引き攣る。
「・・・貴方、王族。」
ーー何ですけど?
遠い目になった私は、絶対に悪くないと思う。
待て、どうしてこうなった?
微妙な空気と化す室内。
「「「「「・・・・」」」」」
私以外の皆んなも、無言でアレン王子を注視しているばかり。
沈黙が流れる室内。
周りからの助けは一切ない模様。
カオスである。
ど、どうするの、この空気!
「お、おほん、」
咳を一回。
・・よ、よし。
「アレン王子、急に殺して下さいとは、一体、どう言う事でしょう?きちんと説明、いただけますか?」
気を取り直し、説明をお願いします。
「・・はい。」
こくりと素直に頷くアレン王子。
「と、取り敢えず、アレン王子、お席にお座り下さいな。」
王族の貴方が目の前に跪くのは心臓に悪いから。
アレン王子へ着席を進める。
「はい。」
これにも素直に頷くアレン王子。
反抗の様子はない。
「で、アレン王子、説明をお願い出来ますか?」
「・・ずっと、考えていたのです。以前、ソウル嬢に言われた事を。」
「私が言った事?」
何の事だ?
「全てを捨てれない者を、ご自分のお側に迎え入れる事はない、と言う言葉です。」
「あぁ、」
確かに言ったね。
王子達の好意を、きっぱりと断る時に。
「で、それが、どうしてアレン王子を、私が殺す事に繋がるのですか?」
意味が分からん。
「本当に僕を殺して欲しい訳では無いのです。」
「・・どう言う事でしょう?」
「僕を死んだ事にして、ソウル嬢のお側に置いて欲しいのです。王族の身分を捨てた僕を。」
「っっ、そ、れは、」
眼目を見張る。
王族の身分を捨てて、私の側にいる為にアレン王子は一般人として暮らすと言うのか。
「・・ご家族は、その事を知っているのですか?」
「いいえ、知りません。」
「・・だから、内密に来れれたのですね。」
溜息を吐く。
陛下達に知られたら、絶対にアレン王子がここへ来る事は止められるだろう。
いや、あの王なら逆に喜ぶかも知れない。
ーーさて、どうしたものか。
「アレン王子、1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
アレン王子の瞳を真っ直ぐに見つめる。
偽りを見逃さないように。
「何でしょう?」
首を傾げる、アレン王子。
「私の側に置く者達は、皆、冒険者をしております。」
「はい、知ってます。」
「では、王族であるアレン王子も、その身分を捨てた後、他の子達と同様に冒険者として暮らして頂くことになりますよ?」
耐えられるのだろうか?
長年を王族の一員として宮殿で生きてきたアレン王子に、辛い冒険者としての生活が。
「構いません。」
私の懸念にも、アレン王子は迷いを見せない。
「私は、家族や王族としての責務よりも、ソウル嬢、貴方を選びます。」
「・・なぜ、そうまでして、私なのですか?」
幸福な道があるのに。
その未来を捨てて、アレン王子は私を選ぶと言うのか。
「ーーー・・好き、だから。」
「え?」
「何を捨てても、犠牲にしても貴方といたいと、そう思ってしまったから。」
「・・アレン王子。」
ーーーあぁ、心が満たされる。
どうして、こんなにも私は貪欲なのだろうか?
「僕は、この国の王族の一員です。その事実は、何があろうとも変えられません。」
アレン王子の目が伏せられる。
「・・・僕は、いずれ国の為の結婚を結ぶ事を決められています。」
国の為の結婚。
その血を、自身を外交の為に役立てる。
王族の役割。
「それが、第三王子である僕に求められている役割です。その為に、王族と言う立場を得ているのですから、僕はその役割を果たさねばならないのでしょう。」
苦笑する、アレン王子。
「ですが、僕は貴方に出会ってしまった。」
苦痛に歪む、アレン王子の顔。
「今更、貴方以外の他の人を妻になど迎えられない。例え、貴方の夫の1人になるのだとしても。」
向けられる、熱を孕んだ瞳。
伝えて来る。
「王族としての役目を果たせない僕は死ぬべきなのです。」
ーーー私が欲しいのだと。
「バカな子ね。」
こんな私なんかに、捕まって。
可哀想な子。
目の前のアレン王子に微笑む。
「ーーー良いわ、いらっしゃい、私のアレン。」
手を差し出した。
「っっ、良いの、ですか・・・?」
震える、アレンの声。
「ふふ、どうして驚くの?最初に自分で言い出した事でしょう?」
「・・だって、断れるかと。」
「断らないわよ。」
どうして、アレンの強い覚悟を断れると言うの?
こんなにも、愛おしいのに。
11
お気に入りに追加
2,256
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる