リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第9章〜大会編〜

アレン王子のお願いと求愛

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目を見開く。
一瞬、自分の耳がおかしくなったのかと思った。


「・・アレン王子、今何と?」
「僕を、殺して下さい。」


が、無情にも、アレン王子は同じ事を言った。
顔が引き攣る。


「・・・貴方、王族。」


ーー何ですけど?
遠い目になった私は、絶対に悪くないと思う。
待て、どうしてこうなった?
微妙な空気と化す室内。


「「「「「・・・・」」」」」


私以外の皆んなも、無言でアレン王子を注視しているばかり。
沈黙が流れる室内。
周りからの助けは一切ない模様。
カオスである。
ど、どうするの、この空気!


「お、おほん、」


咳を一回。
・・よ、よし。


「アレン王子、急に殺して下さいとは、一体、どう言う事でしょう?きちんと説明、いただけますか?」


気を取り直し、説明をお願いします。


「・・はい。」


こくりと素直に頷くアレン王子。


「と、取り敢えず、アレン王子、お席にお座り下さいな。」


王族の貴方が目の前に跪くのは心臓に悪いから。
アレン王子へ着席を進める。


「はい。」


これにも素直に頷くアレン王子。
反抗の様子はない。


「で、アレン王子、説明をお願い出来ますか?」
「・・ずっと、考えていたのです。以前、ソウル嬢に言われた事を。」
「私が言った事?」


何の事だ?


「全てを捨てれない者を、ご自分のお側に迎え入れる事はない、と言う言葉です。」
「あぁ、」


確かに言ったね。
王子達の好意を、きっぱりと断る時に。


「で、それが、どうしてアレン王子を、私が殺す事に繋がるのですか?」


意味が分からん。


「本当に僕を殺して欲しい訳では無いのです。」
「・・どう言う事でしょう?」
「僕を死んだ事にして、ソウル嬢のお側に置いて欲しいのです。王族の身分を捨てた僕を。」
「っっ、そ、れは、」


眼目を見張る。
王族の身分を捨てて、私の側にいる為にアレン王子は一般人として暮らすと言うのか。


「・・ご家族は、その事を知っているのですか?」
「いいえ、知りません。」
「・・だから、内密に来れれたのですね。」


溜息を吐く。
陛下達に知られたら、絶対にアレン王子がここへ来る事は止められるだろう。
いや、あの王なら逆に喜ぶかも知れない。
ーーさて、どうしたものか。


「アレン王子、1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」


アレン王子の瞳を真っ直ぐに見つめる。
偽りを見逃さないように。


「何でしょう?」


首を傾げる、アレン王子。


「私の側に置く者達は、皆、冒険者をしております。」
「はい、知ってます。」
「では、王族であるアレン王子も、その身分を捨てた後、他の子達と同様に冒険者として暮らして頂くことになりますよ?」


耐えられるのだろうか?
長年を王族の一員として宮殿で生きてきたアレン王子に、辛い冒険者としての生活が。


「構いません。」


私の懸念にも、アレン王子は迷いを見せない。


「私は、家族や王族としての責務よりも、ソウル嬢、貴方を選びます。」
「・・なぜ、そうまでして、私なのですか?」


幸福な道があるのに。
その未来を捨てて、アレン王子は私を選ぶと言うのか。


「ーーー・・好き、だから。」
「え?」
「何を捨てても、犠牲にしても貴方といたいと、そう思ってしまったから。」
「・・アレン王子。」


ーーーあぁ、心が満たされる。
どうして、こんなにも私は貪欲なのだろうか?


「僕は、この国の王族の一員です。その事実は、何があろうとも変えられません。」


アレン王子の目が伏せられる。


「・・・僕は、いずれ国の為の結婚を結ぶ事を決められています。」


国の為の結婚。
その血を、自身を外交の為に役立てる。
王族の役割。


「それが、第三王子である僕に求められている役割です。その為に、王族と言う立場を得ているのですから、僕はその役割を果たさねばならないのでしょう。」


苦笑する、アレン王子。


「ですが、僕は貴方に出会ってしまった。」


苦痛に歪む、アレン王子の顔。


「今更、貴方以外の他の人を妻になど迎えられない。例え、貴方の夫の1人になるのだとしても。」


向けられる、熱を孕んだ瞳。
伝えて来る。


「王族としての役目を果たせない僕は死ぬべきなのです。」


ーーー私が欲しいのだと。


「バカな子ね。」


こんな私なんかに、捕まって。
可哀想な子。
目の前のアレン王子に微笑む。


「ーーー良いわ、いらっしゃい、私の。」


手を差し出した。


「っっ、良いの、ですか・・・?」


震える、アレンの声。


「ふふ、どうして驚くの?最初に自分で言い出した事でしょう?」
「・・だって、断れるかと。」
「断らないわよ。」


どうして、アレンの強い覚悟を断れると言うの?
こんなにも、愛おしいのに。

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