リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第9章〜大会編〜

変貌のゲスナン

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いくら悪事を張り巡らそうとも。
多額の賄賂を手渡したとしても、貴方の勝ちはない。


「だって、ゲスナンの作った作品より明らかに性能はトウカの方が上だもの。」


汚い不正をされたら?
ーーーそれを上回る作品を出せば良い。
誰が見ても、優勝に納得するような圧倒的な作品を。


「っっ、ふ、不正だ!!」


次の瞬間、急に喚き出すゲスナン。


「まだ小娘のルミアが、そんな凄い武器を作れるはずなどない!!」


そうだろうと言わんばかりに、ゲスナンがぐるりと会場内に集う人々を見渡す。
困惑の声が会場内に広がる。


「見苦しい。」


そんなゲスナンにディオンが不快感を表す。


「まぁ、良いじゃないの、ディオン。彼に最後の悪足掻きぐらいさせてあげましょうよ。」
「・・ディア様が、それでよろしいのでしたら。」


文句はないとディオンが引き下がる。
安定の私至上主義だわ。


「・・貴方は、それでも本当に鍛治師ですか?」


怒気を孕んだ声を上げたルミア。
軽蔑の眼差しをゲスナンへと向けている。


「なっ、何だと!?」
「鑑定されている方には、製作者の名前が分かるのですよ?貴方は、一体、どうやって、その方を欺けると言うのですか?」


ルミアは怒っていた。


「あの武器、トウカは間違いなく私が作った作品です。」


鍛治師として。


「それとも、それを欺ける方法があるとでも貴方は言うのでしょうか?」
「っっ、そ、それは、」


ルミアへの答えに窮するゲスナン。
その姿に、会場中からゲスナンへ非難の目が向けられた。
四面楚歌。
間違いなく、ゲスナンは会場中の顰蹙ひんしゅくを買った愚か者だろう。


「ルミア嬢の言う通りだ。」


その中で非難の声を上げたのはゲルマン王。


「あに、陛下。」
「ゲスナン、根拠も証拠もなく言い掛かりでルミア嬢を貶めるような行動は控えよ。この神聖なる大会を汚すな。」


兄、ゲルマン王が弟であるゲスナンへ向ける目は厳しい。


「良いな、ゲスナン?」
「・・・はい、かしこまりました。」


ゲスナンの目が伏せられる。


「ーーーとでも、俺が言うとでも思ったか、兄貴?」


その瞬間。
ゲスナンの身体から膨大な魔力が噴き上がった。


「なっ、」


見開かれるゲルマン王の瞳。
ゲスナンの変貌に、ゲルマン王の顔が驚愕の表情に固まる。


「・・・ゼンイン、コロシテヤル。」


先ほどまでとは違う声が、ゲスナンの口が呟いた。
その瞳もほの黒く染まっている。


「はははっ、存分に会場内の奴らを殺し尽くせよ、人形!!」


ゲスナンの背後で、1人の魔族が愉快そうに笑う。


「魔王様に大量に血と恐怖を捧げろ!」


ーーー狂気を孕んだ瞳で。
怒号と悲鳴。
会場中がゲスナンへの変貌にパニックに陥る。
逃げ惑う、観客達。


「くく、」


そんな観客たちの悲鳴を聞き、魔族の男は満足そうに笑う。


「ーーー何が、そんなに面白いの?」
「!!?がはっ、」


振り向こうとした魔族の男の心臓に突き刺さる、私のレイピア。
その口から血が零れ落ちる。


「ぐうっ、お、お前、は、っっ、」
「ちょっと鈍いんじゃない?もう少し鍛えた方が良いわ。」


嘲笑い、レイピアを抜く。
魔族の男が現れた瞬間に、そに背後に私は回り込んでいた。
その事に気付かないとは、この目の前の魔族の男もたいした事はないらしい。


「き、貴様っっ、!!」


私へ掴みかかろうとする魔族の男に向かい、魔法を放つ。


「そのまま、永遠に凍てつきなさい。」


発動される私の魔法。
私の魔法で、魔族の男の身体がみるみるうちに凍り付いていく。
数秒で完全に凍り付く、魔族の男の身体。
氷の彫像の完成だ。


「っっ、ま、魔族を倒した!!?」
「なっ、あんな簡単に!?」


驚愕の声に反応せず、ゲスナンの方へと視線を向ける。
あちらの方は、どうなったかしら?


「コクヨウ、ゲスナンは?」
「はい、意識は刈り取りましたが、目覚めたら、また暴れ出すかもしれません。あと、例え魔族を倒しても、元の姿に戻るかは不明ですね。」


私の命で、皆はルミア達の護衛とゲスナンの身柄の確保を指示していたのだ。
きっちり、やり遂げてくれたらしい。


「そう、正気を保ってくれていると良いのだけど。」


断罪するのも、意識があった方が良い。
人形の様な相手を断罪しても面白くないし、絶望感に打ちひしがれる様子も見たいしね。


「しかし、変貌までしてまで、この大会でルミアを勝たせたくなかったとは驚きだわ。」


想定外。
それとも、ルミアを手に入れたいと言うゲスナンの執念が強かった結果なのか。


「鍛治師としてより、ルミアを取るとはね。」


溜め息を吐く。
これまでの自分の培ってきた栄光やキャリヤより、そんなにも、ルミアの方が大切だったの?


「ーーーまさか魔族を倒すとは、そなたは一体、何者だ?」


考え込む私の元に歩み寄るゲルマン王。
困惑と恐怖。
様々の感情をその瞳に宿していた。


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