リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第9章〜大会編〜

閑話:教訓

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アディライトside


富裕層向けだけの事はある宿の部屋で休み、明けてモルベルト国の2日目。
疲れもなく、ディア様も元気満タン。
ならーー


「ふふ、街の散策♪」


ーーである。
ご機嫌で、ディア様は鼻歌を歌う。


「わぁ、あれなんだろう?」


好奇心旺盛。
そして、無邪気で天真爛漫。


「綺麗。」


ほぅ、と、吐息を吐くディア様の方がお綺麗ですと、声を大きくして言いたい。
が、そこはディア様。


「ねぇ、アディライト、皆んなのお土産に何を買って行こうか?」


集まる視線も、何のその。
全く、集まる、その視線の意味をディア様は理解していない。


「っっ、~~~!」


あ、ほら。
輝かんばかりに満面のディア様の笑顔に、真っ赤になる人達があちこちに続出。
この方は、罪な人である。


「ーーチッ、」
「・・不快、ですね。」


その度に、コクヨウとディオンの機嫌が急降下。
黒いオーラを周囲の人間、ディア様に見惚れる者達へと振りまく。


「はぁ、」


私は溜め息を吐き出すしかない。
分かるよ?
大切なディア様を、不埒な目で見られて不快になる気持ちは。


「・・?どうしたの、コクヨウ、ディオン?」


あぁ、ほら。
そんな貴方達を、ディア様が不思議がっているではないか。
もう少し上手く隠しなさいな。


「ディア様、コクヨウとディオンの事は、お気にせず。このまま、散策を続けましょう。」
「え?でも、」


チラチラと、2人に目を向けるディア様。
う、可愛らしい。


「っっ、ではなくて、ディア様。」
「うん?」
「どうやら、2人は人混みで疲れてしまったようなのです。」
「!?えっ、そうなの!?」


ディア様が驚く。
・・疑う事を知らないディア様の純真さが辛い。
私達の事を完全に信頼しているディア様。
それは嬉しいし、光栄な事だけれど、あまりに素直に信じられると罪の意識で胸が痛いのです。


「えぇ、ですので、どこかお店に入って休みませんか?」
「そうなら、早く言ってくれば良かったのに。私も丁度、喉も渇いたし、小休憩しよう。」


唇を尖らせたディア様は、きょろきょろとお店を探す為に視線を走らせる。
その必死に癒される。


「ディア様、喉を潤すのでしたら、この先に美味しいお茶を出すお店が御座います。」
「本当に!?」


ぱっと、輝くディア様の顔。
うん、可愛い。


「コクヨウ、ディオン、歩き疲れたでしょう?ゆっくり休もうね?」


自分の容姿の良さに鈍感で、私達の言う事を疑う事を知らないディア様は、今だって、2人の機嫌の悪さを、疲れからだと信じきっている。


「嫉妬と知っても、喜ばれそうだけど。」


愛情に飢えたディア様。
2人からの嫉妬なら、歓喜する事だろう。


「ディア様の喜ぶ顔、見たい!」


心底、見たいよ?
が、そんなディア様の麗しの表情を周囲の者達に見せたくなどない。
私の独占欲。
コクヨウとディオン同様、私だってディア様を敬愛しているのだから。


「そうですね、そうしましょう!」
「ディア様もお疲れですよね?さぁ、参りましょう、ディア様。」


私に同意見だろう2人。
ここぞとばかりに私の提案に賛同するように、ディア様をエスコートし出す。
その際に周囲に見せつけるようにディア様の手を握るのは、さすがとしか言いようがない。


「う、うん?そうだね?」


コクヨウとディオンにエスコートされ、不思議そうながらディア様が頷く。
・・チョロすぎです、ディア様。


「まぁ、そんなディア様の事は全力で私達がお守りいたしますわ。」


愛おしい人。
不埒な者達に指一本だって、触れさせません!


「お待たせいたしました。」
「わぁ、美味しそう。」
「っっ、」


注文した甘味に目を輝かせディア様。
運んで来た店員は、そんなディア様に顔を真っ赤に染める。


「「・・・。」」


そうなれば、当然コクヨウとディオンの2人が不機嫌になる訳で。


「ディア様、こちらのも美味しいですよ?」
「ふふ、私のも一口どうですか?」
「っっ、う、うん、いただきます。」


店員を牽制するように、コクヨウとディオンの2人の、ディア様への餌付けという名の見せつけを始めた。
照れながら、餌付けされるディア様。


「くっ、俺も、あんな美少女に食べさせてあげたいぜ!」
「う、羨ましい!」


コクヨウとディオンの、周囲への牽制は有効で。
ディア様に見惚れていた者達は、すごすごと引き下がるのだった。


「はぁ、」


教訓。
ディア様の可愛いらしさは、どこへ行っても変わらないようです。
周囲を魅了してしまうようだ。


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