235 / 424
第8章〜外交編〜
書状
しおりを挟む今の私は、とてもご機嫌でうきうきである。
大国、聖王国パルドフェルド?
そんな事、私は知らん。
「っっ、ソウル嬢!?」
「まぁ、王様?震えた声を出されるなど、どうしました?」
「そ、そなたが物騒な事を言ったからだろう!?」
「物騒?」
私は、ただ、事実を言っただけなのだが。
首を傾げる。
「耄碌した老害達など、無くなって困る人がいるのでしょうか?」
「・・・。」
さらりといえば、絶句する王様。
「で、困ります?」
「・・ソウル嬢、もう少しだけ言葉を選んでくれ。」
がっくりと、王様が項垂れる。
が、項垂れるだけで、王様は私の問いに対して否定しない。
と言う事は、王様も私の意見に同意なんですね?
「ところで王様。」
ーーさぁ、種を蒔きましょう。
破滅への種を。
「・・?何だ?」
「実はここに1つ、王様への書状を預かっております。」
空間収納から、一通の書状を取り出す。
「書状?」
「はい、あの里、今はティターニア国と名をつけましたが、その女王陛下からの書状でございます。」
「何!?」
王様が驚きの声を上げる。
「どうぞ、こちらの書状をお読み下さい。」
「うむ、読もう。」
私の手から書状を受け取る王様。
書状の中に目を通す。
「ーーっっ、なっ、こ、これは、」
見開かれる、王様の目。
「書状をお読みになりました通り、かの里は古き因習を捨て、生まれ変わ始めております。そして、他国との関わりを持ちたいと、女王陛下はお考えなのですわ。」
書状の中身に驚愕する王様へ、私はにっこり微笑む。
ベストタイミングとは、この事である。
「・・ティターニア国、精霊の姫君だった方のお名前か。」
「さようです、王様。」
王様へ頷く。
妖精の始祖となった姫君の名前。
新しい里の名。
「これから先、あの里はティターニア国と名乗ると?」
「その様です。貴い姫君のお名前は、あの里にもっとも相応しいかと。」
あの里に屑達の名残は一切いらん。
新しく、ユリーファを長として、あの里は生まれ変わるのだ。
「まず、この書状のご覧の通り、これで王様の願いの1つは叶うかと思います。」
あの里と、誼を繋ぐと言う願いが。
「・・あぁ、そうだな。こうも用意が良いのが末恐ろしいが。」
「ふふ、少しの保険、ですわ。」
「保険?」
「王様が私に対して権力を持って何かを強要した場合、この書状はティターニア国の後ろ盾があると言う何よりの証明になりますでしょう?」
別の意味で役立ったが。
結果オーライなら、良いよね?
「ーー・・我が国を捨て、あの里、いや、ティターニア国へいつでも行けると言う、私への牽制にもなるの、か。」
「ふふ、好きにお取り下さい。」
にこりと微笑む。
「まぁ、ティターニア国の女王陛下は、そう思われても良いと思っている、とだけ言っておきますわ。」
「っっ、そこまで、あの里と誼を繋いでおるのか!?」
「誼と言いますか、女王陛下、ユリーファ様は、我が夫、ディオンの妹なのです。」
「何!?」
王様の視線が、ディオンへ向いた。
その存在を隠されていた、ユリーファ。
奴隷の身に落ちた、ディオン。
この2人が兄妹である事を知るのは、あの里の者だけだ。
王様が驚くのも仕方ない。
「・・ディオン殿は、妖精族と知っていたが、まさか、高貴なる血筋の方、だったのか。」
震えた声を王様が上げる。
「王様、今の私は、ディア様の奴隷であり、夫の身に過ぎません。どうぞ、いつもの通りに接して下さい。」
「しかし、」
「私はあの里から追放されたのです、王様。妹が女王陛下となろうと、私の身分には一切、何の関わりの無い事とご理解ください。」
きっぱりと、関係ないと言い切るディオン。
その顔には王族へや血筋に対する未練の欠片さえない。
「・・そこまで言うなら、分かった。これまで通りソウル嬢の夫として接しよう。」
「はい、ありがとうございます。」
ディオンが頭を下げる。
「ふう、ソウル嬢の周りには、凄い者達が集まるみたいだな。」
「まぁ、それは、お褒めて言葉ですか?」
「無論だ。」
王様が深く頷く。
「魔族を倒せ、王族と誼を持つ、到底、普通の人間にはなし得ない事ばかりだろう?」
「そうかもしれませんね。」
王族一家との交流は成り行きとは言え、私の周りは華やかな面々が集まっているのかもしれない。
11
お気に入りに追加
2,256
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる