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第8章〜外交編〜
迫る選択
しおりを挟む会話を交えながら、何事もなく進むお茶会。
アディライト作のタルトは、王家の皆様にはお気に召していただけた様子。
そんな時だった。
「ーー所で、ソウル嬢。」
王様が声を上げたのは。
「はい、陛下、なんでしょう?」
持っていたカップを置く。
「噂ではソウル嬢は珍しい生き物に馬車を引かせているのだとか。それは本当か?」
「馬車?エトワール、ペガサスの事を言っているのであれば、本当です。」
「なんとッ!」
驚きに息を呑む、王様。
「ペガサスと言えば、希少なモンスターではないか!?」
「その様ですね。」
ふむ、エトワールが王様の気を引いたかな?
ペガサスは希少種だし。
「そのペガサスも、ソウル嬢の従魔なのか?」
「はい、そうです。」
「・・はぁ、ソウル嬢には、本当に驚かされる事ばかりだ。」
大きく王様が溜め息を吐く。
あら、心外だわ。
自分では、まだ自粛してる気なんだけど?
「王様。」
「うん?」
「本日、私達がお茶会へ呼ばれたのは、ペガサスの事を聞く為ですか?」
「・・そう、でもある。」
頷いた王様が給仕していた人を遠ざけ、確信を切り出す。
「迷いの森を抜け、ソウル嬢達は隠れ里に住むエルフや妖精族と交流を果たしたのか?」
「・・なぜ、その様な事を聞くのですか?」
眉根を寄せる。
「冒険者ギルドに、討伐した大量のモンスターを販売したとルカリオ殿から聞いた。エルフや妖精族が住む里の迷宮の、な。」
ギルド長!
やっぱり、王様への情報源は貴方か。
・・余計な事を。
「冒険者についての情報は、秘匿はされないのですね。」
口元を歪める。
情報管理は大事でしょう!?
「うっ、許せ。それだけ、ソウル嬢達が持ち込んだものは重大な意味を持つのだ。」
「意味?」
「あの里の迷宮攻略は、エルフや妖精族の許可あって、迷いの森を抜けられた者にしかできぬ事。」
「・・・。」
「そんな討伐品を大量に売却したソウル嬢達が、あの里の者と交流があると考えるのが自然ではないか?」
さすがは為政者。
情勢に対する頭の回転は速い事で。
「ーー・・そう、であったなら、一体、王様はなんだと申されるのでしょう?」
でもね?
ふふ、王様、私も簡単には貴方や国に利用されてなんてあげないよ?
冷たい声で首を傾げた。
「私個人の交流関係に関して、王様へ逐一報告する義務はないかと思いますが?」
「「「なっ!?」」」
一緒に話を聞いていた王子様達から驚きの声が上がる。
護衛や側仕え達の視線もきつくなっていく。
無礼?
上等じゃないか。
「それとも、王様は王命で私から聞き出されますか?」
カップを持ち上げる。
「私は、別にそれでも構いませんよ?」
私は、ね?
その瞬間、私の敵に回った王族は可愛い皆んなの逆鱗に触れる事になり、容赦なく粛清の対象となるだろう。
皆んなが私の敵になった者を許すはずがない。
「その結果、どの様な事になっても私は一切の責任を持ちません。」
この国を私達が滅ぼすかは、王様の答え次第。
「決めるのは、王様です。」
どうします?
「「「「・・・」」」」
しんと、誰もが口を噤み静まり返るお茶会の会場。
私1人だけが、お茶を飲んでいる。
カオスな空間。
「ーーっっ、ソウル嬢、まさか、それは脅しか?」
「ふふ、まさか。」
厳しい顔になる王様へ微笑む。
脅し?
面白い事を言う。
「別に脅さなくとも、全く王様は私の脅威ではありませんもの。」
国王軍だろうと、負ける気がしない。
「お忘れですか?王様も、私の力はご存知でしょう?」
もしも、この国にいれなくなったなら、ユリーファの所でお世話になろうかな?
その場合、この国は浄土と化すが。
まぁ、私の敵になるなら何の容赦もいらないよね?
「王様、私は多少の事には寛容なつもりですが、それでも限度があります。こうも干渉が過ぎると、私も考えを改めなければなりませんよね?」
意味。
これ以上、私に干渉するな、である。
私にも、我慢の限度はあるのだ。
「・・はぁ、ソウル嬢、誤解を与える様な聞き方をして、すまなかった。」
「誤解?」
「そうだ、ソウル嬢の行動を把握したかったから聞いたのではない。誤解を与えたのなら、謝罪する。」
「では、なぜ?」
「我が国は、あの里と、誼を繋ぎたいと思っている。その為に、ソウル嬢から色々と話を聞きたかったのだ。」
ほう、あの里と誼、を、ねぇ?
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