リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第8章〜外交編〜

似た者兄妹

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この迷宮のボスである、ワイバーンと対峙する私達。
各自が戦闘体制をとり、武器を構える。


「ぐぉおおおぉお!!」


上がる、咆哮。
ワイバーンの咆哮に、ビリビリとした振動が部屋内を震わせる。
低レベルの冒険者なら身体が竦む事だろう。


「もしかして、トカゲと言われた事にお怒りなのでは?」

が、しかし、私達が怯む事はない。
咆哮するワイバーンに対して、笑いながら弓を構えるディオン。
ふむ、私達の言葉を理解しているのかしら?


「ーーなら、このまま楽しく、お怒りのトカゲ退治といきましょうか。」


私の構えたレイピアが、きらりと輝いた。


「ディオン。」
「はい、ディア様、お任せください。あのワイバーンの邪魔な羽根を、先ずは射抜きます。」


期待通り、ディオンの矢がワイバーンの羽根を射抜く。
さすがの命中力。


「ぐ、ぉおおおおお!!!!」


途端、上がる絶叫。
ディオンの攻撃によって、傷付いた羽根で飛ぶ事が出来なくなったワイバーンが地面へと墜落する。
砂埃が舞うボス部屋。
舞う砂埃で視界を遮られる、が。


「ーー貰い、ます。」


そんなもの、私達には何のその。
すかさず、墜落したワイバーンを捉えんと、アディライトの鎌が胴体へと向かう。
が、さすがは、Bランクのワイバーン。
アディライトの攻撃は、ワイバーンに躱されてしまう。


「「逃がさないの!」」


しかし、フィリアとフィリアの2人がワイバーンが逃げる事を許さない。
一瞬で、2人がワイバーンに距離を詰める。
が、また躱されててしまう。


「ーーあら、大きな図体にしては素早い、わね。」


ポツリと呟く。
あの素早さは厄介だ。


「なら、足止め、と、いきますか。」


私は魔法を放つ。


「『アイスストーム』。」


放たれる魔法。
私の魔法が、逃げるワイバーンの足を凍らせる。


「ぐるっ!!?」


驚きに止まる、ワイバーンの動き。


「ーー終わり、だ。」


凍った足で逃げることが不可能になったワイバーンの首を、コクヨウの剣が切り落とす。
その瞬間、血を吹き出したワイバーンの身体が地面に崩れ落ちた。


「やった!」


ワイバーンの討伐性に、私の口から笑みが零れ落ちる。
これで、この里の迷宮の攻略も終了。
ワイバーンを無事倒して迷宮攻略を終えた私達は、湖の側の屋敷へ戻り、疲れを癒す為に早々と就寝。
寝不足はいけないからね。
その為、朝の目覚めは良かった。


「ユリーファ。」
「はい?」


だから、朝食をユリーファと一緒に食べていた時、その話を切り出す事にする。


「この里の迷宮攻略も終わったし、そろそろ、ルーベルン国へ戻ろうと思うの。私の1番の目的も終わったしね。」
「ーーっっ、!?」


私の前の席に座っていたユリーファが、手に持っていたフォークを落とす。


「なっ、確かに迷宮攻略を終えた事は聞きましたが、ディアレンシア様達はもう、帰られるのですか!?」
「うん、結構、この里に長居しちゃったと思うしね?」


ちょくちょく、ルーベルン国にある屋敷へは転移で帰ってたけど、さすがに、これ以上は、ね?


「・・そう、ですか。」


しょんぼりと肩を落とすユリーファ。
表情も悲しげだ。


「ユリーファ、すぐにまた来るから、そんなに落ち込まないで?」
「本当、ですか!?」


テーブル越しに身を乗り出すユリーファに、私は仰け反る。
・・ユリーファさん、近くないですか?


「うっ、まぁ、この里の屋敷の管理を任せる子達を、あちらから連れて来る事になるし?」


せっかく手に入れたあんな立派な屋敷を、そのまま放置はできない。
ので、直ぐにこちらに来る事ななるだろう。


「ーー分かり、ました。」


ユリーファが頷く。
寂しげな表情では、あるが。
だいぶ、ユリーファも表情を出すようになって、安心だ。


「ディアレンシア様と別れるのは、寂しいですが、また来て下さるのなら、我慢いたします。」
「ん?」


私と離れるのが寂しい?
兄である、ディオンとでは、なく?


「ユリーファ、ディオンと離れるのが、では、なくて?」
「はい?お兄様と離れるのも寂しいですが、ディアレンシア様との方が辛いです。」
「ディア様、私がユリーファと話すのは、いつも貴方の事ですよ。」


くすくすとディオンが笑う。
まさかの、衝撃の事実発覚である。


「いやいやいや、せっかくなんだから他の事を話そうよ!?」
「他の事、ですか?」


ツッコミを入れれば、キョトン顔のディオン。


「ほら、せっかく会えた兄妹なんだから、もっとなんか話す事があるでしょ?」
「無いですね。」
「無いですわ。」


すぐさま無いとディオンとユリーファの2人に断られる。


「無い、の?」
「ありませんね。」
「ありませんわ。」


同時に仲良く頷く兄と妹の2人。


「私はディア様の事を話す方が幸せですので。」
「お兄様と私も同意見ですね。ディアレンシア様の事の方が大事です。」


似た者兄妹ね。
私は苦笑いを浮かべた。


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