リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第8章〜外交編〜

意外な行動力

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屑達の断罪が終わった後。
ユリーファの采配で私達は借りている元長の屋敷とは別の離れに通され、アディライトが淹れてくれた紅茶で一息つく。


「・・このお茶、美味しいです。アディライト様の淹れ方が良いのでしょうか?」
「まぁ、お口に合ったようで、良うございました。ユリーファ様、よろしければお菓子も召し上がり下さいませ。」


表情は変わらないが、アディライトが淹れた紅茶をユリーファは気に入った様子。
褒められた事が嬉しかったのか、お菓子を進めるアディライト。
ほのぼのする会話である。


「ディア様、あれらを地下牢とはいえ離れに暮らさせるのは不安です。」


渋い顔をするディオン。


「ーーそれは、ユリーファの身がって事?」
「はい、そうです。」


神妙に頷くディオンの背後から、その首に腕が回る。


「ディオンちゃん、ユリーファの身の安全は私達が守るわ。」
「ディオンちゃんの妹の事だもの、私達に任せなさい?」
「あれらを、ユリーファに近づかせたりしないから。」
「うっかり、私達があれらに攻撃しないかが不安よね?」


くすくすと笑う精霊王達。
実に楽しげだ。


「ふふ、ですってよ、ディオン?」
「・・ディア様。」
「これ以上ない、心強い護衛よね?」


カップを口元に運ぶ。
妹に構いまくりのディオンに妬いたりしたけれど、抜かりはない。


「全て、ディア様の掌の上、ですか。」
「あら、不満?」


カップをソーサーの上に置く。


「いいえ、ディア様に何と感謝すれば良いのか、悩んでいます。」
「わ、私も、ディアレンシア様には、感謝しても足りません。」
「・・2人とも、真面目、ね。」


私の為にした事なのに。


「・・何か、私にディアレンシア様にお返しできる事が有れば良いのですが。」


肩を落とすユリーファ。


「なにか、ね。」


ふむ、なら、あれを頼もうか。


「ねぇ、ユリーファ、1つ貴方にお願いが有るんだけど。」
「お願い?何でしょう?」
「この里にある迷宮を私達に攻略させてくれない?」


私のユリーファへのお願い事。
ーーこの里の中にある、迷宮、ダンジョンである。


「・・迷宮、ですか?」
「えぇ、ダメ?」
「いえ、構いません。」
「本当?ユリーファ、ありがとう。」


よし、許可ゲット。


「ですが、ディアレンシア様、それだけでよろしいのですか?」
「うーん、じゃあ、この里の湖の所に家を建てても良い?」


綺麗な湖だったんだよね。


「家?」
「そう、私達の別荘?拠点、かな?」


綺麗な湖のそばに立つ家。
うん、良い。


「まぁ、拠点!はい、構いません。」


身を乗り出すユリーファ。
・・あれ、思ってたより食いつきが良い?


「っっ、こうしては、いられません!さっそく、ノーム様達にお力を貸していただき、すぐさま家の建設に取り掛からなければ!」
「ちょ、ユリーファ!?」
「ディアレンシア様、楽しみにお待ちくださいませ!必ずやお気に召すお住まいをお作りいただきますので!」
「・・う、うん、楽しみにしてる。」

なぜ、そこまで張り切る?
あまりのユリーファの行動力に、私は顔を引攣らせるしかない。
私は、精霊の力を過信していた。
痛感したのは、数日後。


「ーー・・ねぇ、ユリーファ?」
「はい?」
「ちょっと聞きたいんだけど。」
「何でしょう?」
「3日前まで、ここ、何もなかったよね?」


可笑しいな。
何もなかったはずの場所に、立派な屋敷が建ってるんだけど?
思わず遠い目になる。


「それが、ノーム様達が寝ずに張り切って、あっという間にディアレンシア様に家を作り上げてしまいました。」
「・・寝ずに?」
「何でも、ディアレンシア様の為の家と聞いて、頑張ってしまったらしいです。」


・・何だ、それ。
唖然と言葉を失う。


「っっ、ちょ、イーア!!」
「呼んだ?」


呼び掛けにらふわりと私の隣に降り立つ、地の精霊王、イーア。


「どうしたの、ディアちゃん?」
「どうしたの、じゃないよ!寝ずに家を、しかも、こんな大きな屋敷を建てるなんて、皆んなどれだけ張り切ったの!?」
「あら、私達、精霊に寝食の概念はないから心配いらないのよ?」
「ぐっ、だからって、」
「・・もしかして、ディアちゃん、喜んでくれてない?」
「うっ、」


しょんぼりするイーアと、ノームの精霊達を、これ以上、私は責められない。
くっ、狡い。


「・・はぁ、作ってしまったものは、仕方ない。」


諦めも肝心だ。
・・そう、それがどんなに普通とかけ離れていたとしても。


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