198 / 411
第7章〜精霊編〜
旅立ちと伝承
しおりを挟む本日の天気は快晴。
雨の心配は今の所はなしの様だ。
まさに旅立ち日和。
「っっ、あぁ、ディア様、どうぞ、ご無事で!」
「お帰りをお待ちしております!」
皆んなからの大袈裟な見送りを受けながら、私は目尻を下げて頬を掻く。
・・・なんか、泣きすぎじゃない?
「一生の別れじゃないよ?」
「っっ、それでも、ディア様が自分達のお側にいないのは寂しいのです!」
私達が留守の間、この屋敷の管理の全てを任せるロッテマリーが食い付く。
ロッテマリーに同意とばかりに、他の皆んなも頷いていた。
「ロッテマリー、そんな風に言ってディア様の事を煩わせてはいけませんよ。」
「リリスさん。」
厳しい声で嗜めるリリスの登場でロッテマリー達の勢いも無くなる。
さすがは、リリス。
今日も、とても頼りになります。
「ディア様、さぁ、そろそろ行きましょう。」
「う、うん。」
・・・良いの、かな?
後ろ髪引かれる。
「くっ、リリスさんはディア様と一緒に行けるからって!」
「ずるいです、リリスさん!」
「僕もディア様と一緒に行きたいのに!」
悔しさに歯軋りをする皆んなを尻目に、私達は馬車へと乗り込んだ。
「じゃあ、皆んな行ってきます!」
皆んなへ手を振る。
きりっと引き締まる皆んなの顔。
「「「行ってらっしゃいませ、ディア様。」」」
一斉に皆んなが頭を下げた。
少しのごたつきはあったものの、無事に旅に出発です。
馬車が走り出した。
運転は馬車を引くエトワールに任せ、私は快適な中でまったり本を読んで寛ぐ。
「ディア様、お茶はいかがですか?」
「ん?」
アディライトの声に読んでいた本から顔を上げる。
「ディア様のお好きな紅茶ですよ。」
「ありがとう。」
読みかけの本に栞を挟み脇に置くと、笑顔でアディライトから紅茶の入ったカップを受け取った。
「ん、美味しい。」
口を付けたカップの中身は私の好きな紅茶。
しかも私好みの甘さの。
「それにしても、ディア様は先ほどからずっと何の本をお読みなのですか?随分と熱心に読んでいますね?」
「ん?ふふ、妖精族について、ね?」
私が馬車の中で読んでいるのは妖精族について書かれた書籍。
まずは、これから会うディオンのお父様や一族達である敵を知る事は大事でしょう?
「まぁ、妖精族の?」
「あと、エルフの事とか。ディオンいわく、エルフも一緒に森の中で暮らしているらしいから。」
あまり世間に知られていない、妖精とエルフの2つの種族。
書かれていることも少ないが。
「何も知らないよりは、自分達を調べられていた方が怖いと思わない?」
何も知識がないよりはマシ。
私が何も知らない無知のままでは、きちんと相手ができないもの。
「ふふ、しっかりと学習は欠かさないわ。」
遊ぶ相手の事は、ね。
書籍に書かれている事を要約すると、ある精霊の姫の子供が最初の妖精族であるらしい。
森を住処にし、精霊を信仰するエルフにとって妖精族は尊い存在なんだとか。
「信仰、ねぇ、」
ぱたりと読んでいた本を閉じる。
信仰が悪い事だとは言わないが、妄信的に信じるのはいかがなものか。
「頭が凝り固まっていそう。」
「多種族のことを見下し、人間との関わりを少なくしたので、それは仕方ない事なのでは?」
とは、ディオン。
「妖精族やエルフ族は身内だけで固まるしか能がないのですよ。」
「ディオン、辛辣ね。」
気持ちは分からないではないが。
その強い信仰ゆえ、片翼だったディオンは一族達から迫害されたのだから。
馬車はディオンの生まれ故郷へと進む。
「ーーーーもう少しでディオンの生まれ故郷へ着くわね。」
「はい。」
ディオンが頷く。
私達が旅に出てから2日目。
今回の旅の目的地である迷いの森へ着く。
「不安?」
「不安と言うより、あちらのディア様への対応が分かりきっているので怒りがこみ上げますね。」
「あら、その期待を裏切るかもよ?」
「ありえませんよ、ディア様。そうでなければ、とっくに人間達と盛んに貿易を行うはずですから。」
「なるほど。」
ディオンの言う事も一理ある。
今でも人間との交流がないのは、ディオンの知る自分達主義だからなのか。
「ふふ、なら、尚更この先へ行くのが楽しみ。」
その傲慢さ。
そして愚かしさを知ってもらわなきゃ。
「うーん、逆に私への暴言を吐きそうな者達を、皆んなが始末してしまう方が不安ね。」
溜め息を吐いた。
11
お気に入りに追加
2,257
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【※R-18】私のイケメン夫たちが、毎晩寝かせてくれません。
aika
恋愛
人類のほとんどが死滅し、女が数人しか生き残っていない世界。
生き残った繭(まゆ)は政府が運営する特別施設に迎えられ、たくさんの男性たちとひとつ屋根の下で暮らすことになる。
優秀な男性たちを集めて集団生活をさせているその施設では、一妻多夫制が取られ子孫を残すための営みが日々繰り広げられていた。
男性と比較して女性の数が圧倒的に少ないこの世界では、男性が妊娠できるように特殊な研究がなされ、彼らとの交わりで繭は多くの子を成すことになるらしい。
自分が担当する屋敷に案内された繭は、遺伝子的に優秀だと選ばれたイケメンたち数十人と共同生活を送ることになる。
【閲覧注意】※男性妊娠、悪阻などによる体調不良、治療シーン、出産シーン、複数プレイ、などマニアックな(あまりグロくはないと思いますが)描写が出てくる可能性があります。
たくさんのイケメン夫に囲まれて、逆ハーレムな生活を送りたいという女性の願望を描いています。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
男女比崩壊世界で逆ハーレムを
クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。
国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。
女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。
地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。
線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。
しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・
更新再開。頑張って更新します。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
異世界転生先で溺愛されてます!
目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。
・男性のみ美醜逆転した世界
・一妻多夫制
・一応R指定にしてます
⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません
タグは追加していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる