リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第6章〜宮廷編〜

王女への罰

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私の、ここでの用は終わった。
2人に手を伸ばす。


「帰ろう、コクヨウ、ディオン。」
「かしこまりました、ディア様。」
「ディア様のお望みのままに。」


コクヨウとディオンの2人に引き寄せられ、私はそのまま王宮を後にする。


「ーー・・ふふ、次は彼女の番。」


ひっそり呟いて。


「お久しぶりですね、王女様?」


私が王宮へ舞い戻ったのは月明かりの綺麗な夜。
ある王宮の一室。


「っっ、おまえ、は、」


現れた私に顔を驚きの色に変えた第一王女、ミフタリアへと微笑む。
憔悴している様だが元気そうだ。


「ふふふ、王女様は元気でした?お顔がやつれた様に見えますけど、大丈夫ですか?」
「・・・一体、ここへ何をしに来たの?」
「え?哀れな貴方を見に。」


それ以外、私はここに用などないけど?
本音を告げてみた。


「なっ、」


かっと、ミフタリアの頬が朱に染まる。
さすが王女様。
プライドが高いのは筋金入り。


「っっ、お前、この私に、その様な口を利くなどっっ、!」
「許されるよ?だって、今の貴方はただの犯罪者でしょう?」


今の自分の立場を良く考えろ?
ミフタリア元王女様?


「は、犯罪者・・?この、私が?」
「自覚なかったの?罪人を牢屋から出して、殺人を唆したのに?」


呆然とするミフタリアに鼻を鳴らす。


「悪いけど私、犯罪者を敬う気持ちはこれっぽっちも持ち合わせてないの。」
「ーーーっっ、私は、そんなつもりは、」
「あぁ、言い訳は結構。貴方の父である、この国の王が決めた事は覆りませんから。」


ミフタリアを冷笑する。


「でも、貴方の事を哀れんでいるから、陛下へ処罰を軽くするようお願いしたよ?」
「・・お前が?」


信じられないと言わんばかりの眼差しを向けられる。


「うん、そう。貴方の処遇は、王族の地位を剥奪して、マリエンヌ修道院への追放に決まったって。」
「・・・、え?」


ミフタリアの目が開かれていく。


「ふふ、元王女様?ちゃんと私に感謝してね?」


惚ける元王女へ微笑んだ。


「私がマリエンヌ修道院に・・?王族の地位を剥奪されて?」
「そう、マリエンヌ修道院って戒律がとても厳しい所らしいね?愚かな王女様には最も相応しい場所だと思わない?」


険しい丘に建つマリエンヌ修道院。
肉親でも会うのは難しく、一度中へ入れば外へ出ることは叶わないと聞く。


「ーー・・うふふ、それでも、まだ死ぬよりはマシでしょう?」


地位も名誉もない。
あるのは犯罪者としての名だけ。


「そうそう、大切な元王女様に不埒者が近づくといけないから、私から貞操帯をプレゼントするね?」
「は?」
「ほら、元王女様が誰かに無理矢理に孕まされて、その子供を利用されるのは防がないと。国としても、王家の血を利用されるなんて困るでしょう?」


にんまりと笑う。


「元王女様?王女としての価値も、女としての尊厳も私が叩き壊してあげるよ。」


王家の血を残せない元王女に、なんの意味も価値もない。


「っっ、ぁ、この悪魔!」
「・・悪魔、ねぇ。」


目を細める。


「なら、私のディオンを欲しがり、叔父を犯罪に走らせた貴方は聖女様?」


笑ってしまう。
自分自身は清廉潔白だと言うの?


「ディ、オン?」
「気安く私のディオンの名前を呼ばないでくれます?とても不愉快なので。」


ほのかに灯る、ディオンへの恋しさ。
私を不快にさせる。


「貴方に未来永劫、私のディオンは与えない。何一つとしてね。」


ディオンは私だけのもの。
そのディオンを欲した自分の愚かさを、追放先で思い知るが良い。


「ミフタリア元王女様、マリエンヌ修道院で、どうか、いつまでもお元気で。」
「っっ、いや、いゃあああ!」


絶望に崩れ落ち、その場で泣き喚くミフタリアに背を向けた。


「その身を一生、神にだけ捧げなさい。」


ディオンを思いながら。
恋に溺れた人間の末路には相応しい罰でしょう?


「永遠に、さようなら。」


ミフタリアが泣き叫ぶ声を背後で聞きながら、無機質に扉が閉まった。
虚ろな瞳の、この部屋を警護する兵達の間をすり抜ける。


「ーーーー・・ディア様。」
「リリス、ご苦労様。もう用は済んだから家に帰ろう。」


暗闇から現れたリリスに微笑む。


「はい、ディア様。」


兵達に幻惑を見せてくれていたリリスと一緒に転移で家へと飛ぶ。


「ディア様、お帰りなさい。」


屋敷に帰って来た私の事を、とろける様な眼差しのディオンが抱き締める。
私が第一王女の所へ行く時からディオンは上機嫌。
どうやら私が第一王女に嫉妬した事が嬉しかった様で、あっという間に寝室に連れ込まれてしまう。


「ディア様、良いですか?」
「ん、」


頷いて、ディオンに身を任せる。


「ありがとうございます、ディア様。嬉しかったですよ、あの女にディア様が嫉妬してくださって。」
「だって、ディオンは私のものだもの。」


その瞳に映すのは私だけで良い。


「はい、私はディア様のものです。この先何があろうとも、未来永劫、私の全ては貴方の、ディアのもの。」


うっとりとした表情で私の頬をディオンが撫でた。
ひっそりと王宮に咲いた毒花は、太陽の光に触れる事なく踏み潰されて散る。


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