リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

文字の大きさ
上 下
188 / 411
第6章〜宮廷編〜

王女への罰

しおりを挟む





私の、ここでの用は終わった。
2人に手を伸ばす。


「帰ろう、コクヨウ、ディオン。」
「かしこまりました、ディア様。」
「ディア様のお望みのままに。」


コクヨウとディオンの2人に引き寄せられ、私はそのまま王宮を後にする。


「ーー・・ふふ、次は彼女の番。」


ひっそり呟いて。


「お久しぶりですね、王女様?」


私が王宮へ舞い戻ったのは月明かりの綺麗な夜。
ある王宮の一室。


「っっ、おまえ、は、」


現れた私に顔を驚きの色に変えた第一王女、ミフタリアへと微笑む。
憔悴している様だが元気そうだ。


「ふふふ、王女様は元気でした?お顔がやつれた様に見えますけど、大丈夫ですか?」
「・・・一体、ここへ何をしに来たの?」
「え?哀れな貴方を見に。」


それ以外、私はここに用などないけど?
本音を告げてみた。


「なっ、」


かっと、ミフタリアの頬が朱に染まる。
さすが王女様。
プライドが高いのは筋金入り。


「っっ、お前、この私に、その様な口を利くなどっっ、!」
「許されるよ?だって、今の貴方はただの犯罪者でしょう?」


今の自分の立場を良く考えろ?
ミフタリア元王女様?


「は、犯罪者・・?この、私が?」
「自覚なかったの?罪人を牢屋から出して、殺人を唆したのに?」


呆然とするミフタリアに鼻を鳴らす。


「悪いけど私、犯罪者を敬う気持ちはこれっぽっちも持ち合わせてないの。」
「ーーーっっ、私は、そんなつもりは、」
「あぁ、言い訳は結構。貴方の父である、この国の王が決めた事は覆りませんから。」


ミフタリアを冷笑する。


「でも、貴方の事を哀れんでいるから、陛下へ処罰を軽くするようお願いしたよ?」
「・・お前が?」


信じられないと言わんばかりの眼差しを向けられる。


「うん、そう。貴方の処遇は、王族の地位を剥奪して、マリエンヌ修道院への追放に決まったって。」
「・・・、え?」


ミフタリアの目が開かれていく。


「ふふ、元王女様?ちゃんと私に感謝してね?」


惚ける元王女へ微笑んだ。


「私がマリエンヌ修道院に・・?王族の地位を剥奪されて?」
「そう、マリエンヌ修道院って戒律がとても厳しい所らしいね?愚かな王女様には最も相応しい場所だと思わない?」


険しい丘に建つマリエンヌ修道院。
肉親でも会うのは難しく、一度中へ入れば外へ出ることは叶わないと聞く。


「ーー・・うふふ、それでも、まだ死ぬよりはマシでしょう?」


地位も名誉もない。
あるのは犯罪者としての名だけ。


「そうそう、大切な元王女様に不埒者が近づくといけないから、私から貞操帯をプレゼントするね?」
「は?」
「ほら、元王女様が誰かに無理矢理に孕まされて、その子供を利用されるのは防がないと。国としても、王家の血を利用されるなんて困るでしょう?」


にんまりと笑う。


「元王女様?王女としての価値も、女としての尊厳も私が叩き壊してあげるよ。」


王家の血を残せない元王女に、なんの意味も価値もない。


「っっ、ぁ、この悪魔!」
「・・悪魔、ねぇ。」


目を細める。


「なら、私のディオンを欲しがり、叔父を犯罪に走らせた貴方は聖女様?」


笑ってしまう。
自分自身は清廉潔白だと言うの?


「ディ、オン?」
「気安く私のディオンの名前を呼ばないでくれます?とても不愉快なので。」


ほのかに灯る、ディオンへの恋しさ。
私を不快にさせる。


「貴方に未来永劫、私のディオンは与えない。何一つとしてね。」


ディオンは私だけのもの。
そのディオンを欲した自分の愚かさを、追放先で思い知るが良い。


「ミフタリア元王女様、マリエンヌ修道院で、どうか、いつまでもお元気で。」
「っっ、いや、いゃあああ!」


絶望に崩れ落ち、その場で泣き喚くミフタリアに背を向けた。


「その身を一生、神にだけ捧げなさい。」


ディオンを思いながら。
恋に溺れた人間の末路には相応しい罰でしょう?


「永遠に、さようなら。」


ミフタリアが泣き叫ぶ声を背後で聞きながら、無機質に扉が閉まった。
虚ろな瞳の、この部屋を警護する兵達の間をすり抜ける。


「ーーーー・・ディア様。」
「リリス、ご苦労様。もう用は済んだから家に帰ろう。」


暗闇から現れたリリスに微笑む。


「はい、ディア様。」


兵達に幻惑を見せてくれていたリリスと一緒に転移で家へと飛ぶ。


「ディア様、お帰りなさい。」


屋敷に帰って来た私の事を、とろける様な眼差しのディオンが抱き締める。
私が第一王女の所へ行く時からディオンは上機嫌。
どうやら私が第一王女に嫉妬した事が嬉しかった様で、あっという間に寝室に連れ込まれてしまう。


「ディア様、良いですか?」
「ん、」


頷いて、ディオンに身を任せる。


「ありがとうございます、ディア様。嬉しかったですよ、あの女にディア様が嫉妬してくださって。」
「だって、ディオンは私のものだもの。」


その瞳に映すのは私だけで良い。


「はい、私はディア様のものです。この先何があろうとも、未来永劫、私の全ては貴方の、ディアのもの。」


うっとりとした表情で私の頬をディオンが撫でた。
ひっそりと王宮に咲いた毒花は、太陽の光に触れる事なく踏み潰されて散る。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします

猿喰 森繁
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。 元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。 そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。 そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました

かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。 「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね? 周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。 ※この作品の人物および設定は完全フィクションです ※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。 ※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。) ※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。 ※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...