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第6章〜宮廷編〜
牽制と売り込み
しおりを挟む微妙な表情になる王家一家。
だってさ、この会場で初めて絡んで来たのがあの常識の欠片さえなかった第一王女様達だよ?
他の人は遠巻きに見てくるだけだったし。
「・・ソウル嬢」
「はい、国王陛下、なんでしょう?」
「その、すまなかった。」
あらあら。
気まずそうに目を逸らす王ミハエル様へ微笑む。
「私がSランク冒険者となろうが、国で最も高貴なる方が簡単に謝罪の言葉を紡いではいけません。貴方様の事を認めない者達に侮られますよ?」
まだカーシュ公一派は健在。
カーシュ公が裁かれる日まで、王ミハエル様には頑張ってもらわなくては。
「これは必要な事だから良いのだ。ソウル嬢との友好の為なら、こうして私は何度でも頭ぐらい下げよう。」
その瞳が語る。
私の逆鱗に触れれば国が滅ぶと危惧していると。
この国を守る為なら、自分の意地もプライドも捨てて私との友好を取るのだと告げられる。
「私は両陛下も、第二王女殿下の事も困らせたい訳ではありません。が、あの者達を野放しにするなら、その限りでは有りません。」
「・・自身が動く、と?」
「もちろん、不要な火の粉がこちらに向かうのであれば私自身が動きますわ。」
当然でしょう?
もう被害は受けているんだから。
「ですから、彼女達の事をきっちり教育をしてくださいね?」
私の可愛い子達を奪おうとして?
来たくもなかったパーティーに出れば、さっさと帰れと言われる。
「次はありません。ここまでされて私が寛容でいられるのも、そろそろ限度がありますから。」
よく耐えた自分。
褒めてもいいと思うんだけど?
「カーシュ公の事もそうです。国王陛下、カーシュ公を裁くのに、あれは十分役に立ったのでは?」
「っっ、やはり、あれは、そなたかッ!」
「ふふ、」
目を見開く王ミハエル様へ私は微笑んだ。
カーシュ公の悪事の証拠を届けたのは私だと言葉にして認めてないよ?
ただ、微笑んだだけ。
「・・はぁ、かの者の事は明日、全て終わらせる。既に主要な貴族達を集めてあるからな。」
「左様、ですか。ふふ、明日は無事に終わると良いですね?」
「・・・ソウル嬢、不吉な事を言わんでくれ。」
嫌そうに王様が顔を歪める。
「あら、私は心配しているのですよ?手負いの獣はみっともなく最後に足掻くと申しますし。」
あれ、じゃあね?
「今回は何があっても許されん。裁かれるには十分な悪事の証拠も揃っている事だしな。」
「そう、ですか。」
なら、王ミハエル様のお手並み拝見といきますか。
頑張って下さいね?
私に国を滅ぼされたくなければ。
「ーー・・で、第二王女殿下の疑問にはお答えにならないのですか?」
「!?」
固まる王様。
やだなぁ、この話を終わらせるなんて誰も言ってないぞ?
「・・・そなた、」
「なんでしょう?」
「良い性格をしておるな。」
「まぁ、ふふ、ありがとうございます。」
それ、褒め言葉ですよ?
談笑を続ける私達。
王ミハエル様達は、あえて私の所にいるのだろう。
「陛下。」
「ん?なんだ?」
「私は役に立ちました?他国への牽制になったなら良いのですが。」
周囲へ見せつける為に。
Sランク冒険者となった私達との仲を示せば、安易に無茶な要求は出来まい。
「・・・ふぅ、ソウル嬢、そなたは鋭いな。」
「あら、私は愚かに見えました?」
心外だわ。
ほら、私を軽視する様な発言にコクヨウ達も王ミハエル様に対して剣呑な眼差しになってるし。
憤っているらしい。
「コクヨウ、ディオン、アディライト。」
「っっ、すみません。」
「ディア様、お許しを。」
「反省しております。」
コクヨウ達3人の名前を呼んで咎めれば、その剣呑さもなくなる。
うん、良い子。
「陛下、3人が大変ご無礼いたしました。どうかお許しを。」
王ミハエル様へ向き直り、頭を下げる。
すぐさまの謝罪。
「気にするな。私の言い方も悪かった。」
「ありがとうございます。」
これで私達の粗探しを目論んでいる人達への攻撃は防げただろう。
「陛下、使えるものは利用する。それは悪い事とは思いません。」
王として正しい判断と言える。
「ですが、私達は人の多い場所は得意ではないのです。」
私達は庶民の人間ですよ?
いきなり貴族のパーティーへ駆り出されるのは、いかがなものか。
「許せ、ソウル嬢。その分、後ろ盾となり王の力で愚か者達を牽制しよう。」
周りを見渡して王ミハエル様が言い放つ。
最強の後ろ盾を得た様だ。
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