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00.プロローグ
しおりを挟む「リナリー王太子妃万歳!」
「万歳!」
国民はそれぞれ喜びの言葉を口にして、新しい王太子妃の誕生を祝福しました。
雲ひとつない晴天の空の下、二本の剣と薔薇が描かれたアビゲイルの国旗が高らかに舞い上がります。群衆の目線の先には、白いドレスに身を包んだリナリーとその隣で優しく微笑むエリオットの姿がありました。
完全無欠、神々が設計した男と呼ばれたエリオット・アイデンも、この日ばかりは喜びの声を隠し切れなかったのでしょう。慈しむようにそっとリナリーを抱き寄せると、国民の歓声に応えて手を振ります。
田舎街で花売りをしていた平民出身のこの娘が、いつの日か強国の王子と結婚する時が来るなど、いったい誰が想像出来たでしょうか。
リナリー・ユーフォニア
彼女は、この上なく幸運な美しい蝶です。
プラチナブロンドの髪は太陽を受けてキラキラと輝き、同じく金色の髪を持つ王太子エリオットの隣に立つと、まるで一対の人形のようです。側から見ても一目でお似合いだと分かる彼らを模した人形は、既に様々な露店で人気商品として売り出されているほどです。
「そういえば、あいつはどうなったんだ?」
誰かが不運な悪女のことを気に掛けて、隣の男に問い掛けました。その名を覚えている者が、いったいこの場にどれだけ居るのでしょう。
おめでたい日にこのような話をするのは気が引けますが、語り手として説明せねばなりません。愛すべきヒロインであるリナリーの純粋な心を傷付けた、忌み嫌われた悪役令嬢アリシア・ネイブリーのその後について。
アリシアはデズモンドの塔に投獄された後、リナリーを崇拝する強き心の持ち主によって闇へと葬り去られました。食事に毒を混ぜられたというのが有効な説のようです。
因果応報とはよく言ったもので、何事も自分がした行いは返ってくるものなのですね。
さて、舞台はエリオットとリナリーの結婚式へと戻ります。
頭に白い薔薇の冠を乗せた美しい王太子妃を一目見ようと、多くの国民が広場へと押し寄せていました。リナリーはその一人一人に慈愛に満ちた眼差しを向けています。なんと広いお心なのでしょうか!
まるで全てが決まっていたかのように、リナリーは自らの手で着々と幸せを掴み取りました。孤児院で育った彼女は、花売りから王太子の婚約者、そして遂には王太子妃にまで上り詰めたのです。
リナリーは幸せの代名詞として語り継がれることでしょう。彼女のように成りたいと、少女たちはきっと夢見るはずです。
永遠に愛される美しい蝶
それがリナリー・ユーフォニアなのです。
ーーーーー『エタニティ・ラブサイコ』最終章より抜粋
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