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15.赤ずきんの杞憂
しおりを挟む来るべき夜をどう過ごすべきか。
熱いシャワーを身体に浴びながら、思考はどうしても今夜のことに囚われる。ダリアはまた僕を抱くのだろうか。べつに嫌ではないけれど、どうしてこんな面白みのない身体を?
(………人恋しくて仕方なく…?)
ボタボタと水が流れ落ちる中、僕は自分の肢体を観察する。ストンとした胸に子供のように平らな腹、その下に付いた男の象徴も申し訳程度のもので、とてもじゃないけど自慢できるような状態ではない。
手を伸ばして自分の尻に触れてみる。
小さな後孔は指一本さえ入らないのではないかと疑うサイズ感だ。ダリアは昨日、こんな場所に彼のものを挿れていた。あの太くて熱く脈打つ凶器のような雄を。
さわさわと穴の周囲を撫でても、気持ち良さのようなものは感じず、僕は少しガッカリする。あの溶けるような感じを自分で体験出来れば良いのに。
ダリアの手はもっと大きい。
指だってもっと太くて、男らしくて。
(こんなんじゃないよ………)
僕が女の子だったら、きっとダリアのことを好きになるのだろう。いいや、誰だって好きになるはずだ。村に居る若い娘たちが彼を見たら、顔を赤らめて成りを整えるに決まってる。
狼がこんな姿をしていると知ったら、皆は我先にと「赤ずきん」という不名誉な生贄に立候補したかもしれない。
シャワーを終えて寝室に向かうと、ダリアはもうすでに毛布を被って丸まっていた。起こさないように隣に滑り込んで、寝息を立てる綺麗な顔を眺める。
僕は、その優越感に頭がクラクラした。
今、この美しい狼の寝顔を好きなだけ堪能して、共に眠りに落ちる権利を僕だけが持っている。それは実際問題この部屋には僕と彼しか居ないからで、彼の恋人に成る権利といった意味ではない。だけど、僕は幸せだった。
ダリアは僕と居ると幸せなんて言うけど、きっと僕が感じている気持ちはそれ以上だと思う。今まで誰にも必要とされて来なかった人間にとって、初めて与えられる優しさは中毒的な甘さを持っていた。
僕は、いつまでダリアと一緒に居られるのだろう。
神様は都合よく僕の寿命を延ばしてくれないだろうか?
「………ダリア、」
名前を呼ぶと閉じた瞼が少しだけ震えた。
この強く美しい獣のことをもっと知りたい。僕は、僕の命が続く限り、ダリアのことを頭に刻んで残していきたい。そうすればきっと、ずっと同じ景色を見続けることは出来なくても、抱えた記憶だけで満たされると思うから。
耳を澄ませば聞こえるかすかな息遣いに安心しながら、僕は深い眠りに落ちていった。
◆ご挨拶とおねがい
見つけてお読みいただきありがとうございます。
本作はBL大賞に参加中です。
もし可能であればポチッと投票いただけますと作者の励みになります。どうぞ宜しくお願いいたします。
年齢制限が関係するシーンが含まれるお話は朝更新しないように決めているので、朝更新がなければそういうことだと思っていただけますと幸いです(変なこだわりですみません……)
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