11 / 52
11.狼の本懐 ※
しおりを挟む分かったことがある。
どうやらダリアが言っていた僕たちが一線を超えたという供述は本当らしい。香油と呼ばれる滑りを良くする魔法のアイテムを使ってくれたお陰か、僕のお尻にそれほどの負担はなかったようだが、二度目の性交で僕は自分の内臓を抉るその剛直の感覚を思い出した。
「……っ…ヒューイ、きつい」
「あ、ごめ…なさ……っひゃん!」
ぬるりと引き抜かれたかと思ったダリアの肉棒が突き刺さるように再び体内に戻ってきた時、僕は一瞬意識が飛びそうになった。実際にたぶん少しの間は飛んでいたと思う。
部屋の中には僕たちの肌がぶつかり合う音、もう意味をなさない服が擦れる音、そして不慣れな僕の口から溢れる啼き声が響く。加えて、香油のせいで聞こえる卑猥な水音も羞恥心を高める役目を買っていた。
後ろから覆い被さっていたダリアが、僕の身体をくるりと上に向けた。異物が抜ける感じはやっぱり慣れなくて、僕はまた変な声を上げてしまう。
さっきまでシーツだけを見ていれば良かったのに、今、僕の目の前にはダリアの上半身がある。少し汗ばんだ肌の上に手を置くと、ダリアはピクリと反応した。それに呼応して彼の分身も僕の腹の上で揺れる。目を塞ぎたくなるぐらい雄々しい。子供みたいにつるぺたで筋肉の欠片もない僕とは対照的に、ダリアは画家の創作意欲をくすぐる程度には美しい身体をしていた。
そして、それは彼の下半身から伸びる陰茎に関しても言えることで、僕はぬらりの光るこの凶器が自分の薄い身体に本当に刺さっていたのだろうかと今更ながら恐ろしくなる。
「もう少しだけ、良いか?」
「………うん」
はっきり見えないけど分かる。
ダリアはきっとまた困った顔で、僕の様子を窺うように聞いてくれている。嫌ではないのだと伝わるように、なるべく気持ちを込めて返事をした。
くちゅ、と小さな水音を上げてダリアの肉杭が僕の穴に挿入される。息が止まるような圧迫感の中で、安心させるように頭を撫でられて僕はそっと顔を上げた。
ダリアが僕を見ていた。
黄色いお月様のような瞳は少し潤んでいる。僕は自分がいっぱいいっぱいで気付かなかったけれど、細やかな気遣いを欠かさないダリアだって、決して余裕があるわけではないのだと思った。
きっと、本当はもっと乱暴に、己の欲望のままに動きたいに決まってる。それをダリアは不慣れな僕のために、思い遣りを忘れずにゆっくりと丁寧に扱ってくれているのだ。
(どうしよう……嬉しい、)
今までいったい誰が僕にこんな風に接してくれただろう。通りを歩けば陰口を叩かれ、家では用無しの病人として肩身の狭い思いをする。肉親からすらも疎まれ、友達と呼べる存在も居なかった。
ダリアに出会うまで知らなかった。
誰かに想われることが、こんなに温かいなんて。
「ダリア、」
「ん?」
「ありがとう……僕、君と会えて初めて今まで生きてて良かったと思えた。ダリアが教えてくれたんだ」
「そんなこと、今言うな」
「え、なんで?」
「色々我慢してるんだよ、可愛いこと言わないでくれ」
そう言って片手で目を覆うと、ダリアは誤魔化すように僕の首元に顔を沈める。弱い首筋を舐められて、僕はもう何も言えなくなってしまった。
「っん、あ、ああっ!やめて、僕ほんとにそこは…!」
「だから良いんだろう?」
「ダリアの、いじわる……っ!」
我慢出来なくて僕は何度目かの絶頂を迎えて、シーツの上に白濁した液体を吐き出した。ムンと鼻を突く青い匂いに気が遠くなりそうになる。
寝具を汚すこうした体液が、ダリアのものなのか僕のものなのかはもはや分からなかった。
半分意識を手放している僕の上で、狼は少しだけ動きを早めて薄くなった精を僕の腹の上に出した。僕はもうほとんど夢の中で、優しい手が労るように頬を撫でるのを感じた。
31
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。
N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い)
×
期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい)
Special thanks
illustration by 白鯨堂こち
※ご都合主義です。
※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~
兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。
そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。
そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。
あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。
自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。
エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。
お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!?
無自覚両片思いのほっこりBL。
前半~当て馬女の出現
後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話
予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。
サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。
アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。
完結保証!
このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。
※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる