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第三章 テオドルス・サリバン

68.スリル ※

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 悪いことをしている、というスリルは私たち二人の気持ちを高めて、もう後に引けないぐらい勢いを付けた。

 ヴィンセントは私の脚の間に身体を丸めて、その顔を近付ける。ぬるりとした舌が肌の上を這う度に、奥底から泉のように蜜が湧き上がるのを感じた。ぐしゃぐしゃになったショーツはとうの昔に床に落とされている。


「………っ…あ、ああっ、だめ…声が出ちゃ、」

 与えられる繊細な刺激に身体が震えて自然と声が漏れた。
 聞こえないようにと当てていた手も意味をなさず、このままでは何事かと駆け付けた使用人に見つかるのも時間の問題だ。けど、我慢しろと言う方が無理な話。

「じゃあ…指、舐めててください」
「………っむ…!?」

 差し込まれたヴィンセントの指を思わず噛んでしまいそうになった。だってこんなの厭らしい。それでも、何かで塞いでおかないと私の声は止まらない。

 深いところまで探るように挿入された舌は、水音を上げながら私の膣内を掻き回す。

「……っ、ん、ンン……んあぁっ」

 何度目の絶頂に身体を震わせる私を見て、額にキスを落とした後、ヴィンセントはベルトを外して反り上がった自身を取り出した。

 そして、ふるふると首を振る私に微笑むと、一気にその凶器を最奥まで突き挿した。

「ーーーーっ!?」
「あ、イっちゃいましたね。ごめんなさい。でも、時間がないから先生が好きなところいっぱい擦っても良いですか?」
「……?……あっ、ああ、だめ待って、」
「すみません。もう、待ては止めたんです」
「ヴィンセントくん!声が…!声、我慢できない…っあ」

 肉壁を抉るように突き上げるから、私は何も考えられなくなった。へたって飛びそうになる意識が、また新たな快感に呼び起こされる。

 貪るようにキスをした。
 繋いだ手から伝わる体温はあたたかい。

「ジュディ先生……覚えててください、先生が、誰と居ても…どこに居ても。貴女のことを、一番想っているのは僕ですから」
「……っふ、あ、そこいや、またイく、イっ…!」
「先生、可愛い。真っ赤になってる」
「あ……っ!?…待って、一緒だめ、だめ…!」
「先生のダメって好きって意味ですよね?」

 ぐりゅっと押された肉芽から痺れるような電流が全身を駆け巡った。終わらない快感の波に私は頭の奥がチカチカする。

 こんなに激しく抱き潰されても気持ち良くて、他の男とは違った愛おしさを感じるのは何故なのか。愛されていると思ってしまうのは、どうして。

「………っ…ジュディ先生、忘れないで…、」

 最奥に放たれた白い欲がどろりと戻って来たのを、ヴィンセントの指が止めた。忘れるわけがないし、そもそも忘れることなど出来ない。


「今すぐには無理ですが、必ず、迎えに来ます」
「ヴィンセントくん…!」
「だからどうか…待っていてください」

 それきり、再び窓から姿を消してしまった私の犬は、もう夜に飲み込まれてどこに行ったか分からなくなった。

 重たい身体を抱えて私はベッドに倒れ込む。
 残った熱だけが、先ほどの逢瀬は現実なのだと教えていた。

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