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第三章 テオドルス・サリバン
47.5.お伺い ※
しおりを挟む私が仕事を終えて帰る日はいつも、ヴィンセントは私を求めては来なかった。それは身体を駆使して働いて帰った私への彼なりの気遣いなのだと思っていた。
だけど珍しく、その日は違った。
早く帰宅したので二人で過ごす時間もゆっくりと取れて、お互い他愛もない話をしながらベッドに入った。犬や猫が人にくっついて暖を取るように、ヴィンセントも私にくっついて来る。そこまではいつも通りだ。
しかしどうにも、もぞもぞと動く手が気になる。
定まらない手の位置が気になって「どうしたの?」と声を掛けると、小さな声でお伺いを立ててきた。
その恥ずかしそうな様子に押されて、快く了承したのが今から一時間ほど前の話。今、私は自分の決断を悔いている。
「っあ、あぁ……ッ…ヴィンセントく…っんん!」
「先生すごい、良い顔…蕩けてる」
「ん、はぁっ…そこ…っあ、深い、」
ゆっくりと抜かれた剛直を再び勢いよく挿入されると、まるで待っていたかのように自分の身体の奥がキュッと締まるのが分かった。眉間に皺を寄せる彼もまた、その収縮を感じているのだろう。
ヴィンセントが私に合わせてくれているのか、それとも私たちの相性が良いのか分からないけれど、私は娼館で客を相手にしている時とは比べ物にならないぐらい乱れた。
気持ちの良い波が何度も身体を駆け巡って、爪先から抜けていく。
若さゆえなのか、とにかく彼は元気だ。
長い間揺られて、ようやく解放されたと枕に頭を預けたのも束の間で、どろりと流れ出る白濁を押し戻すように再び硬いものが入り口を塞ぐ。
「も……っもう、無理、」
「ごめんなさい…あと一回だけ」
「さっきもそれ言って……っあん、」
胸と蜜穴を両方責められると私は何も言えなくなった。
だいたい、彼は知りすぎている気がする。
その年齢のわりには女の身体が何たるやを熟知しているし、他の男たちのように一方的な感じはなく、しおらしく奉仕することも出来る。
「先生、挿れながら触られるの好きですね」
「……そういうの、言わない…で……!」
「こっちも小さくて、可愛い」
肉芽が捕まり、二本の指で挟まれる。
強弱を付けて扱かれるとあまりの刺激に真っ白になった。
「っく、イく、またイっちゃ……ああぁっ…んっ」
背中に腕を回して、しがみ付いたままガクガクと私は震えて達する。そうすると決まってヴィンセントは満足そうな顔をして私の額に口付けてくれる。
「先生、よくできましたね」
「……誰の…せいで、」
「次は先生が僕に教える番ですよ」
「………っんむ」
大きく勃ち上がったそれを口に含みながら、私はヴィンセントの様子を盗み見る。私から教えることなんてもう何もないけれど、強いて言うならば、あまりこういった時の女性の表情はマジマジと見るべきではない。
何が良いのか、ヴィンセントは凶悪な雄を鎮めようと奮闘する私をいつも嬉しそうに観察していた。しかし、彼に余裕があるのも最初のうちだけで、徐々に上がってくる息が限界を知らせると、私は口を開けて青臭い精を飲み込む。
もう流石に続きはないようで、抱き寄せられてキスを落とされた。大きな犬が満足したのを確認して、私も目を閉じる。
窓の外で、空はもう白い朝を連れて来ていた。
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