上 下
29 / 99
第二章 夏の宴と死者の森

極地会第十八回目(議事録)

しおりを挟む


司会:前任者が負傷した関係で司会を引き継ぐことになりました。以後よろしくお願いいたします。

シャーロット・デボワ伯爵夫人:あら、随分と若い男じゃない。仮面を取ってみてくれる?

司会:極地会のメンバーである皆様に素性を知られることは命を握られることに繋がるとお聞きしています。私のことは、ただ司会者として扱ってください。

ベン・ダウ公爵:おい、オーリー!お前の嫁が司会の男に靡いてるぞ。天性の色男も老いには勝てねぇな!

オーランド・デボワ伯爵:ハニーは気が多いタイプでね。でも大丈夫さ、最後には僕の元に戻って来ると分かってるから。

シャーロット・デボワ伯爵:んまぁ!ダーリンったらゴミたちの前で恥ずかしいわ!

バジル・グリーン公爵:二人揃えばやはり目に余る痴態だ。司会、こやつらは無視して続けなさい。

(デボワ伯爵夫人が投げた花瓶がグリーン公爵の背後の壁に当たって飛散。事務局員が駆け付けて清掃に入る。デボワ伯爵の仲介によって夫人は着席。)


司会:畏まりました。皆様ご存知の通り、来月予定されていた春夏秋冬祭が延期になりました。理由としましては、レオン・カールトンの体調不良と伺っています。ご意見はありますか?

ディノス・ディノ公爵:白々しい聞き方をするな。意見だと?真相を知っているかと聞けば良いでしょう。

オーランド・デボワ伯爵:真相?なんだそれは?

ディノス・ディノ公爵:君のその青い目はサファイアか何かで出来ているんですか?物事を見極める力が無いなら力不足だ、極地会から抜けなさい。

(デボワ伯爵夫人が発砲しようとしたが、グリーン公爵が右手ごと凍結。医療班と共に伯爵夫人は退室。)

オーランド・デボワ伯爵:すまないね。妻はここ数日気が立っていて、聞いたところでは最近行ったお気に入りのデパートがちょうどストで閉鎖していたらしいんだ。許してやってくれ。

バジル・グリーン公爵:片方だけでも話が分かる人間で良かったな。貴様の妻は再教育すべきだ。

司会:お話し中のところ、失礼します。レオン殿下についでですが、ディノ公爵の仰る通り、ある噂が巷では広まっています。

オーランド・デボワ伯爵:噂?それは何だ?

ディノス・ディノ公爵:ここ暫く、王子の姿をまともに見ていない。報道機関が伝えるのは国王夫妻の近影ばかり。もうお分かりでしょう。

オーランド・デボワ伯爵:早めのバケーションか?

ベン・ダウ公爵:このすっとこどっこい!お前はあの娼婦と脳を共有しているのか?こいつがマーリン・マーリンの遠縁じゃなきゃ、オレは今ここで殺してるぞ。

ディノス・ディノ公爵:マーリンも自分の末裔がこんなに衰退したと知れば嘆き悲しむに違いない。

オーランド・デボワ伯爵:君たちは意地悪だなぁ。我々は知を得た生き物なんだ。言葉を使って説明してくれれば良いだろう。

司会:では、私の口からお伝えします。一部の人間はこう考えています。レオン・カールトンは病に伏しているのではなく、そもそも王宮に居ないのではないかと。

シン・リンレイ公爵:面白い推論だ。私もその考えを支持する。先日プリンシパル王立魔法学校に遊びに行く機会があったが、レオンと同じ魔力の気配を感じた。

ベン・ダウ公爵:なに?

バジル・グリーン公爵:王子は魔法学校に居ると言うのか!?

シン・リンレイ公爵:どうだかな。私が感じた魔力は極微量で、その魔力を纏っていた人間は王子ではなく別の女性だった。他にも気になる点はあるが、レオン・カールトンには幼い親戚が居るか?

ベン・ダウ公爵:意味が分からん。だいたいシン、お前はオレが呼んだゲストなのにどうして今日この場で話すまで黙っていた?

シン・リンレイ公爵:私はダウ公爵の補佐であって部下ではないので。

(ダウ公爵が魔術を発動したため、両隣のグリーン公爵とデボワ伯爵は離席。リンレイ公爵もまた魔術の発動を行ったため、極地会のルールに則って司会者が仲裁。両者はその場で離席。)


司会:書記、僕の革手袋も損失に計上しておいてくれ。対魔術のものでかなり高価だったんだ。支払いはそうだな……ダウ卿とリンレイ卿の折半で。



【出費】メンバー六人への水代。破損した花瓶の修繕費用はデボワ伯爵家に請求。司会者の革手袋についてはダウ公爵家とリンレイ公爵家に請求。




しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...