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第五章 エバートン家の花嫁
68.二人の初夜▼
しおりを挟むどうしてこうなったのだろう。
私は服を着てベッドの上に正座している。私の前には同じく服を着たままのルシウスが不安そうな顔で膝を突き合わせて座っている。頼むから、そんな顔をしないでほしい。というか、今まであんなにノリノリで進めておいて、そんなのってアリ?
「ごめんなさい、もう一度だけ確認するけど…えっと……未経験なのよね?」
「うん。だから、前にシーアが部屋に来るって言った時は焦ったよ。色々と本があったから」
「……そうなんだ」
それは勉強用の、ということだろうか。
「でも、あまりに手慣れていない?普通はもっと恥じらいとか…」
「あ…途中までは経験あるんだけど、挿入となるとちょっと避けてたんだ」
「避ける……?」
「そういう時の女の子って少し恐ろしいだろう?目がドロドロしているというか、」
それはいつも彼が私に向けているものだ。
彼自身気付いていないの?
いずれにせよ、コトを進めるためには私はこの関門を突破する必要がある。つまり不慣れな私がリードしてでも、ルシウス・エバートンを私の中に案内しなければいけない。出来るかどうかではなく、今日こそやる。
「学園に入ってからは、君にしか興味がなかったからそういう相手も居なかったし……」
「貴方、ロカルドの親友のわりには身持ちが堅いのね」
「好きでもない女の子とするのって気が進まない。それだけの話だよ」
「………そう」
サラッとのしかかる三年分の想いが、これからの行為にどういった影響を及ぼすのか危惧しながら、私はルシウスに向き直った。
「ええっと…じゃあ、始めるわね」
「うん、途中で止めても良いから無理しないで」
小さく頷いて、ルシウスのシャツに手を掛けた。途中まででも経験があるなら是非とも彼に積極的に進めてほしいのに、何故今日に限ってしおらしい態度を貫くのか謎だ。
プチプチとすべてのボタンがはだけると、肌色が目に入って急激に恥ずかしくなってきた。進められるのだろうか、この先を、私が手綱を握って。たぶん無理。
(いいえ、シーア……やるのよ)
目を見開いてルシウスの肩を掴む。そのまま首筋に口付けようとしたところで、私の額をルシウスの手が押し返した。
「なに?」
「ドラキュラが血を吸うみたいな怖い顔で迫るから、」
「だって……」
よく分からなくて、という言い訳がましい言葉は尻すぼみに小さく消えていった。ルシウスはいつもの調子で笑いながら私をそっと抱き締める。
そして、そのままベッドの上に組み敷いた。
「……え、ルシウス…?」
「じゃあさ、教えてよ…シーア」
「な、なにを、」
「分からないから、何が良いか全部教えて」
「ーーーっあ!」
大きな手が服の上から胸の肉を揉む。どういうわけか、ブラウスの下でホックが外されて、胸を覆っていた不要な布たちは私の首回りに集結した。
露になった淡い色の尖りを指先で弄られると、もうどうにも我慢できなかった。
「あ、ああ…っ、」
「ツンツンしてたら硬くなるね。なんでかな」
「わ、わかんな……ッ…あ、舌、だめっ」
大きく撫で回して肉の形をやわやわと変えながら、もう片方を口に含んで転がされる。犬のように甘噛みしたかと思えば、愛おしそうに吸ったりするから、何がなんなのか分からず私はずっと声を漏らしていた。
「んんっ、あ、ルシウス…!」
「ねえ、気付いてる?」
「……ん、なにが…?」
「シーアの腰ずっと動いてる。見てみようか?」
「………っ!」
恥ずかしくなって、全神経を集中して身体が動かないように意識するも、クリクリと胸の先端を摘まれるとまた何も考えられなくなった。
こんなの、抗えない。ずっと慣らすように植え付けられた気持ち良さを身体は覚えてしまっている。今更まともなフリをしろなんて無理な話。
「あ、すごい。シーアは濡れやすいの?」
「そんな…しらなっ、あ、ああ…ッ」
ショーツの上から割れ目を擦るように上下していたルシウスの指が、もはや役目を果たしていない布切れの隙間から蜜穴に差し込まれた。グチュッと耳を塞ぎたくなるような音を立てて中へ中へと侵入する。
私はこの指にもう知られてしまっている。
自分の弱いところ、涙が出るぐらい善いところ。
「えっと…確か、ここが好きなんだよね?」
「っひぅ!あ、そこだめ、んん、あっ」
「なんでダメって言うの?奥は嬉しそうなのに」
ヒクヒクして喜んでる、と耳元で甘えるように言われると、今すぐ気絶したいぐらい恥ずかしくなった。膣奥に辿り着いた指先はその天井を遊ぶように擦る。強弱を付けて触れられると、本当に応えるように収縮する感覚があって戸惑った。
「一回、気持ち良くなっちゃおうか」
「……?…え、あ、またそれっ!」
愉しそうなルシウスの顔を見上げるとすぐに、熱い芯芽を捉えられる。指を膣内に入れられたまま捏ねるように押されると、身体の中を何かが駆け上がってくるようで、私はそれが何なのかを知るために目を閉じた。
「ーーーーんんっ!」
自分を翻弄する指の動きに加えて、首筋を舐め上げられるゾクゾクした気持ち良さは大きな波になって私を呑み込む。気付いた時にはただぼーっと天井を見ていた。
「………シーア?」
「……ごめんなさい、また一人で、」
泣きそうになりながら謝ると、ルシウスは優しく頭を撫でてくれる。穏やかな表情に安心していたら、ひんやりした手が私の太腿の上に乗った。するすると肌の上を這ったその手はおへその下を撫でる。
「次は二人で……一緒に、良い?」
狡い男に誘われて、私はただ一つ頷いた。
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