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第四章 蛇と狼と鼠
53.狼を狩る▼
しおりを挟むベルトを外してズボンをずり下げると、ルシウスも観念したようで「もう知らない」とばかりに両目を閉じた。そっちがその気なら、こちらだって臨むところ。私は下着の上から、起き上がったそれに手を添えた。
「………っん、」
ルシウスの反応を確かめながら、そろりそろりと手を動かす。いつも自分がされる側だったことも、立場が変わるとこうも見え方が違うのかと驚いた。
鍛えられた腹筋に手を這わしてそのまま下着の中に侵入してみる。ビクッと彼の肩が震えるのに合わせるように、反り立った彼自身も大きく揺れた。
根本からゆるく扱くと、ルシウスの身体中の血液が集まっているかのように熱いそれは、ピクピクと反応を返してくれる。上下に動かすうちにどんどん大きくなっていくので、途中で恐ろしくなって私は手を止めた。
(こんなものが本当に人の身体に入るの…?)
私の素朴な疑問など知る由もなく、ルシウスは苦しそうに名前を呼ぶ。その甘美な響きに脳が痺れながら、それでも雄々しく揺れる未知なる生き物から目が離せなかった。
好奇心と羞恥心が数秒の間闘った結果、好奇心が勝った。
「……シーア…?」
「っん、」
「なにを…!?」
驚くルシウスの上に脚を広げて跨る。私は薄い布越しにルシウスの熱い鼓動を感じながら、短く息を吐いた。
「……はぁ、あ」
指先で触れるとツンと張った雄の先は少しぬるっとしている。彼自身期待しているのではないかと思うと、いつも意のままに弄ばれていた私は気分が良かった。
しかし、水気を帯びているのは彼だけではなく、私も自分の下腹部がずくずく傷んで、とろりとした蜜が下着を濡らしていることは分かっていた。きっと、下敷きになったルシウスも気付いていると思う。
「あ、あ、気持ちい……っあ、」
「シーア…!」
少し腰を動かすと摩擦でなんとも言えない気持ちよさが広がった。堪らなくなって私はより速く、的確な場所を求めて身体を揺らす。時折聞こえるルシウスの声も、嫌がる風ではなかった。
「ん…っああ、すごい、これ…」
「待って、そんなに動いたら!」
「ルシウスも気持ちいい…?ビクビクしてる…っ」
お互いの熱を分け合うように身体を擦り合わせると、触れ合う場所からはグチュグチュと水音が響いた。
終わることのない快感に、私は制御が利かない玩具みたいにずっと、自分の欲求を満たすためだけに腰を動かした。ひどく滑稽な姿だったと思う。知らない感覚に脳は麻痺していて、目尻には涙が滲んでいた。怖いぐらい気持ち良かった。
だから、強い力でルシウスに肩を掴まれた時、ハッとした。
いきなり冷水を被ったように頭が冷えていく。
「シーア、ダメだ。もう止めよう」
「……あ…ごめんなさい、私…」
「これ以上はよくないよ」
出来の悪い子供を嗜めるように、優しい口調で言われるとかえって情けなさは増して、私は恥ずかしくて泣きたくなった。不慣れな男の身体に発情して自分から腰を振った挙句、止められるという醜態。
「ごめんなさい、ルシウス……もう寝るから!」
なんとかそれだけ伝えると、弾かれたように立ち上がって、部屋を出た。転がり込んだ浴室でシャワーを浴びながら、なんてことをしてしまったのだろうと反省する。
冷静になる頭を嘲笑うように、先ほどまで触れ合っていた秘肉にはぬるりとした蜜がまだ絡み付いていた。
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