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第四章 蛇と狼と鼠
45.横恋慕の恋泥棒▼
しおりを挟む正解なんてよく分からなかった。
大人たちが言うように、善悪で物事を判断するのであれば、きっとルシウスの行動を私は許すべきではない。無理矢理に仕組まれた横恋慕の一途な情に絆されるなんて、どうかしている。
でも、それで良いと思った。
溺れることは覚悟の上で受け入れるのだから。
「……シーア…夢みたいだ、」
何度も肌の上に落とされる接吻は、赦しを乞うようだった。私は濡れた服の上からルシウスの肩を掴んで、ただその心地良い愛撫に身を任せる。
いつも以上に敏感な身体は絶え間なく与えられる甘い刺激にただただ悦びの声を漏らすだけで、私はぬるくなった湯船の中で自分が溶けていくような気がした。
「……貴方のせいよ、」
「?」
「貴方が私にそんな目を向けるから、私は…」
「どんな目?」
私の両手を取ってルシウスは自分の顔へと近付ける。
「ドロドロの目、ずっと見てたら変になりそう」
「そうなってくれたらいいのに」
責任は取ってくれるのだろうか。水を吸ったブラウスを脱がせてルシウスは私の鎖骨の上に赤い痕を残す。ゆっくりと下へ降りていく唇は、ピンク色の下着の上で止まった。
「外しても良い?」
こくりと頷くと、すぐに背中に回った手がホックを外した。
恥ずかしくなって湯船の中に身を沈めると、ルシウスの両手に引っ張り上げられる。
私の身体をバスタブの縁に押さえつけるようにして、ルシウスは柔らかな胸に顔を沈めた。水槽の中の金魚みたいに私は何度も口をパクパクさせる。小さな抵抗や受け止めきれなかった快感は音となって浴室の空気を揺らした。
「……っん、ルシウス…」
「可愛い…どんな顔も全部見せてほしい」
「あ、そんなに噛んじゃ……っああ!」
痺れるような甘い痛みが胸の頂を襲う。
ルシウスは片手で大きく膨らみ全体を揉みしだきながら、空いた手を私のスカートの中に差し入れた。
チャプン、と水面が揺れる。節くれ立った指がショーツの上から割れ目をなぞると、お湯ではない何かが水に溶け出しているようで、思わずギュッと目を閉じた。
「大丈夫だよ、今日は挿入しない」
「本当…?」
「無理はさせたくない。君の準備が出来るまで待つよ」
「…そんなの一生掛かっても訪れないかも」
「それは辛いなぁ、」
笑いながら、指で柔らかい肉の上を擦られると脳の奥まで電流が走ったように気持ちよくなった。
「ルシウス…驚かないで聞いて」
「どうしたの?」
「私、ロカルドから媚薬を盛られたの。本当はずっとすごく身体が暑くて気持ち悪い」
「……シーア、」
「どうしたら良いか教えて…?」
「………っ」
ルシウスの喉が上下して、瞳の中にぼんやりと光が灯ったのが見てとれた。
もっと触ってほしい。もっともっといっぱい。
遠慮がちに優しく触れる手が好きだったけれど、今はそれでは物足りなく感じていた。上りきれない軽い刺激の連続は、まるで生殺し状態で、こんなこと直接は言えないけれど、もっと本能を剥き出しにして求めて欲しかった。
「お願い、ルシウス……」
大きな手に自分の指を絡ませる。
精一杯の懇願を込めて見つめると、ルシウスは観念したように目を閉じた。
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