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第一章 失われた記憶編

08.王子は追究する▼

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「昼、なんで無視したの?」

縮こまって眠るベッドの中でノアの腕が伸びてくる。背中から撫でるように這ったその手は、薄いキャミソールワンピースの上からゆるく胸を揉んだ。

もう愛なんて無いであろう彼が、それでもまだ私と寝室を共にするのはおそらくこのためだろう。昼間はカーラと恋人同士のような純粋無垢な時間を過ごして、汚れた欲は夜の間に私に吐き捨てる。会話らしい会話なんて無くても、行為は続行されて一方的に終わりを迎える。我ながら、とても便利な婚約者だと思う。

眠った振りを続けていると、面白くなかったのか、片手が何の断りもなく下へと下がった。

「……っあ、」

下着越しに擦られて思わず声を上げてしまう。
クチュクチュと水音が小さく響いた。

「ねえ、リゼッタ。起きているんでしょう?」

ノアの舌が耳の中へと侵入する。長い指は変わらずに良いところをずっと攻めてくるから、気がおかしくなりそうでギュッと目を閉じた。

「…やぁ…耳やだ、やめて」
「好きだもんね。こうやってされるの」

もう狸寝入りは難しそうだし、今日の彼はどうやら私と会話を楽しみたいらしい。

「娼婦だったら、色んな経験を積んでるはずだ」
「経験?」
「例えば…こことか」
「……っひぁ!」

触れられたのはお尻。スルスルと撫で回されて、なんとも言えない感情が湧き上がって来る。

「俺とこっちでもした?」

怖くなって、大きく首を振った。
ノアとどころか、そこは誰にも許したことのない場所だ。そもそも出来れば使うことなく一生を終えたいし、性行為においてお尻を使うことのメリットが私には分からなかった。

「でも娼館では普通だよね。やってみようか」
「や…やだ、やめて!お尻は嫌、」
「どうせ使用済みでしょう?」
「したことないの、本当に…!」
「じゃあ…尚更いいね」

言いながらノアは私を押さえ付ける。下着を剥ぎ取られるとお尻を突き出した状態で下向きにされた。

「お願い…ノア…!」
「痛かったらごめん、きっと直ぐ良くなる」
「ーーーっんん!」

身体の肉が内側から抉られるような感覚。異物の侵入を拒むために全身が警告している。押し返そうと無意識のうちに力が働いているのに、ノアはそれすら構わずに腰を深く沈めた。

裂けているのではないかと思うぐらい痛い。前に回された手が入り口を弄るから、少し意識は分散するものの、違和感はずっとお尻に残っていた。

「……っすごいドロドロ、溢れてるね」
「ごめんなさ…い、あ、」
「お尻好き?両方が気に入ったのかな」
「っちが、そんなんじゃ…!」

打ち付けていた腰の動きが一瞬止まった。

「あのさ、もし俺の記憶が戻らなかったら悲しい?」
「…それは…悲しいです」
「なんで?」
「覚えていてほしい思い出もいっぱい…あるので」
「……ああ、そう」
「っひぁ!」

より深く入り込んだ肉棒が、めり込むように奥を突いた。身体がブルブルと震えるとプシッと水が跳ねる。

「お尻でイっちゃったね、さすが娼婦だ」
「違うの、本当に経験なくて…!」
「そんなのどうでも良いよ。もう少し頑張って」

仰向けにされると、前の穴に勢いよく挿入されて、私はまた大きく震える。ノアは、彼にしては珍しく、急ぐように動きを速めると射精した。ドクドクという脈を感じながら私はノアと視線を絡ませる。

本当はキスして欲しかった。
甘い甘い口付けで安心したくて。

言葉に出来ない思いを抱えたまま、身体を離して、頭から服を被るノアの背中を私は見つめた。


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