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第二章 ウロボリア王立騎士団

31 訓練合宿

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 いつかのメナードが言っていた訓練合宿は現実となり、気温が上がって来た初夏のある日、フィリップの口から第三班のメンバーに合宿の決行が言い渡された。


「東部のベルトリッケ地方にある合宿場を借りることが出来ました。生憎貸し切りではないのですが、二週間ほど籠って訓練に精を出しましょう」
「二週間ってかなり長期じゃねーか?」
「ベルトリッケのあたりで街を荒らす魔物が居るそうです。そこまで大型ではないようなので、第三班が合宿ついでに討伐するよう命令を受けました」
「うげぇ~合宿と討伐遠征のセットってわけね」

 嫌そうな顔で舌を出すクレアをフィリップが嗜める。

「何か質問がある方はいらっしゃいますか?」

 私は脳裏にプラムのことが浮かんだ。
 どういう風に言い出せば良いだろう。メナードに話を聞いた日に、子供園で長期の預かりが可能か確認したけれど、管理者の返答は良いものではなかった。仕方がないことだ。向こうも何かあっては責任が生じるから。

 頭の中で悶々と葛藤を繰り広げる私の隣で、フランが手を上げた。私はハッとしてそちらを見る。

「ローズには子供が居る。今回の合宿からは外してほしい」
「フラン……!」

 彼の口から私のことが出るとは思わなかったので驚いた。
 だけども、そんな特別措置が出来るほど仕事が甘くないことも分かっている。どうしたものかと答えの出ない私に向かってフィリップが微笑んだ。

「一緒に連れて来ますか?」
「えっ?」
「ベルトリッケは空気も綺麗で、合宿場には食事など騎士の補助をする事務員が駐在しています。訓練の間は見てもらうことが出来ると思いますよ」
「でも、そんなこと……」
「私たちもローズさんの参加を望んでいます。もちろん、危険が伴う場所へは同行は難しいですが」
「フィリップさん、」

 私はフィリップの青い瞳を見つめる。
 深い皺の刻まれた目元が少しだけ輝いた。

「実はもう、申し込みしたんですけどね。八人分」
「八人………?」

 私たちは揃って首を傾げる。
 フィリップをリーダーとして、クレアにダース、新人のメナードにフランと私とプラムを足しても七人だ。てっきり彼が数え間違えたのかと疑ってしまった。

「はい、きっちり八人です。八人目の正体はベルトリッケの合宿場に行けば知ることができますよ」

 いたずらっ子のように笑うフィリップを前に、私たちは互いに顔を見合わせる。しかし直ぐに、遠くから集合の声が掛かったので、慌てて昼食のトレイを持って返却に向かった。

 家に帰ったらプラムに合宿のことを話そう。
 きっと彼女は喜ぶだろうけれど、今回の合宿は仕事なのだし、無理を言ってプラムを受け入れてもらうのだから私としてもいつも以上に気を引き締めたい。

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