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第二章 ウロボリア王立騎士団

26 リンゴのお裾分け

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「はぁ……!?それ絶対チームの女の裏切りじゃない?」

 結局昨日は休みを取って、翌日廃病院であったことをクレアに話すと、彼女は私よりもご立腹のようだった。

「フランが来たから良かったものの、普通置いていくなんてことある?仮にもリーダーが居たわけでしょう?点呼とかしなかったわけ?」
「うーん……みんな不慣れだったのね」
「ローズ!おっとりし過ぎよ、一歩間違えたら今日ここに貴女が居なかったかもしれないのよ?」
「そうね。フランには感謝してる」

 後々聞いた話によると、彼は団長の指示で来たらしい。

 ロットバルズ精神病院は危険レベルを上げるか検討中と言っていたし、無事に浄化されたか団長自身の目で確認を取るつもりだったのだろうか。そんな大役を任されるとは、フランは結構信頼されているのかも。

「私、チームが一緒だった子に会ってくるわ」
「うぅ~大丈夫?一緒に行く?」
「いいえ。問題ないと思う」


 しかしながら、訓練の終わりに会いに行くと、オーロラ・ペルーシはすでに除隊したと伝えられた。同様に一緒にチームを組んだ他の二人も一昨日付けで王立騎士団を去ったという。

 もしかして、浄化の穴が団長の耳に入ったのだろうか。そうだとしたら、チームの一員だった私も責任がある。事実確認を取るかオロオロしていたら、通りがかったメナードに声を掛けられた。

「ローズさん!休憩中ですか?」
「メナード!」
「良かったら一緒に良いですか?田舎の母がリンゴをたくさん送ってくれたので、食べ切れなくて……」

 そう言いながら見せてくれた麻袋には、なるほど確かに大量の赤いリンゴが詰まっている。これを家から持って来たなんて、それだけで結構な訓練になりそうだ。

 良い感じの木陰を見つけて二人で腰を下ろす。
 味には自信があります、という彼の言葉の通り、丸々としたリンゴは蜜を含んでいて美味しい。美味しいものを食べると大切な人の顔が浮かぶというのは本当で、私は頭の中でプラムの笑顔が浮かんだ。

(そういえば……フランも果物は好きかも)

 いつの日か、デザートに出したドラゴンベリーのパイを彼は綺麗に食べ終えていた。普段コーヒーにも紅茶にも砂糖を入れない男が、比較的糖度の高いパイを完食していたのは不思議なことだったので記憶している。


「騎士団はどう?慣れた?」
「皆さん優しいですし、訓練も楽しいです!」
「メナードくんのやる気に私はちょっと遅れ気味だわ。頑張らなくちゃね!」
「もうすぐ実習訓練も実施するらしいですよ。フィリップさんが、東部の合宿場を借りるか検討していました」
「合宿……?」
「はい。東部に騎士団の管理するものがあるらしいです」

 初耳だけど、泊まり込みということだろうか?

 咄嗟にプラムのことを考える。組織に属する以上、そうした訓練があるのは仕方がない。今預けている子供園にはお泊まりなんてサービスはないから、誰か信用出来る知り合いが居れば良いのだけれど、生憎まだそこまでの人付き合いは出来ていない。

 眉間に皺を寄せて悩む私の顔を見て、メナードは心配そうに「何か不安ですか?」と問い掛ける。

「えっと…子供のことが少し、」
「あ、ダースさんに聞きました!小さいお子さんがいらっしゃるんですよね。フィリップさんに聞いたら参加を辞退出来るかもしれませんよ」
「うん。でも、なるべく参加する方向で何か策を考えてみる。教えてくれてありがとう」

 笑顔を向けると、メナードはつられて笑った後でお裾分けと称してリンゴをいくつか渡してくれた。プラムたちにお土産が出来たので私はありがたく受け取る。次はアップルパイにしても良いかもしれない。

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