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18 ツヤツヤ肌ツヤ
しおりを挟む「オリヴィア~!何か良いことあったでしょう!?」
「っは、えぇ!?」
後ろから抱き付いてきたジャスミンに、オリヴィアは慌てふためいて持っていた泡立て器を危うく落としそうになった。
振り返ればニヤニヤと笑う同期のお顔。
やり過ごすのは難しそうで冷や汗が走る。
「べ、べつに何も良いことなんて……」
「はい、嘘!貴女のこと、ここ一年あまり見てきたけど、こんなにお肌がツヤツヤだったことないもの。てっきりもう男に興味ないのかと思ってたからレズ風俗でも連れて行こうかと思ったけど、んふふっ」
「冗談やめてったら!べつに恋人とかじゃないわ!」
「あらあら、じゃあワンナイト?そういえば最近入った衛兵のルカエルとか結構かっこいいわよねぇ。オリヴィアのこと話したら興味あるって言ってたけど」
「待って、話を聞いてってば!私は何も肯定してないし、衛兵の人に変な話を流すのはやめて!」
「変な話じゃないわ。ムチムチしてておっとりした性格が好きって言うからオリヴィアをおすすめしたの」
「むっ……!?え、私って太ってる……?」
「太ってはないわよ。男はギスギスのスザンナみたいな体型よりも、付くところには付いた女の方がいやらしさを感じて良いんだってば」
私ももっと胸がほしい、と溜め息を吐く友人を見つめる。
いつの日か言われたネロの言葉を思い出していた。
彼は確かプリッとした尻がどうのと語った気がする。
自分が気付かなかっただけで、もしかして一般的な女性のサイズ感から少しはみ出しているということだろうか。昔から食べることは好きだけども。決して小さいとは言えない臀部をギュッと押さえると、自然と頭の中には昨日の夜のことが浮かんだ。
「わ…うわぁーー!!」
「きゃっ、何よどうしたの!?」
「いや、昨日の、昨日の夢の内容を思い出して……」
大丈夫?と心配そうな顔をするジャスミンに返事を返しながら手で顔を仰いでいると、今しがた名前が出たスザンナ・クロヴィッツが前を通った。
スザンナはオリヴィアたちと同じ時期に料理人として採用された若い女だ。ブロンドに青い目という男好みな見た目に加えて、細いウエストにしっかりとした胸を持つ理想的な体型。
(はぁ……羨ましい)
ジャスミンがなんと言おうと、きっと正解はあっち。
衛兵がその場のノリでオリヴィアに興味を持ったとしても、実物を目にしたらお人形のようなスザンナやソフィア王女に軍杯が上がる。
だって、そちらの方が連れ回した時に羨望の目を受けるだろうし。細くて可愛い女の子の方が希少価値は高い。適当に夜伽として相手をさせる女ならともかく。
ずんっと気分が沈んできたのを感じて、慌てて首を振る。
今日は眠る前に両親に手紙を書く予定なのだ。
来月は少し多めに仕送りが出来そうだと伝えて、次の休みには帰ると書いておこう。住み込みで働くことに初めこそ心配を示していた両親だけど、今となっては王宮であったことを話すと二人ともニコニコと嬉しそうに聞いてくれる。
「楽しみだわ……」
生まれ育った街並みを瞼の裏に思い描く。
始業を知らせる号令を聞いて、持ち場へと向かった。
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