School-Defense

ばっちゃん〈O.B.A おーば〉

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1年生4月

第壱話 桜葉高等学校防衛部創立

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 20××年、高等学校は弱肉強食の時代へと走った。今時代、高等学校は少子高齢化の影響で子供の数が極端に少なくなり、私立高校の数は年々減り、とうとう「0」という数字になってしまった。ピンチに迫った日本政府は「高等学校優等補助法」という法案を与党が提議し、見事に可決された。この法案の趣旨は「たくさんの優等学生が入学したら、補助金を与える。」という法案で、逆を言うならば、「優等学生がたくさん入らなかったら廃校もやむをえない」ということだ。そのため公立高校の校長らは深く頭を悩まされた。
 この法案が制定されてから月日が流れるにつれ高等学校が暴走と言う形になっていってしまった。高等学校同士のスパイはもちろんのこと、今後の方針・活動内容の資料などの複写などをしてしい政府も手が付けない状況になってしまった。法にもそんなに触れることがないので警察もお手上げだった。

 そんな大変な時期に高校に入学した、ある男子学生がいた。
「今日から高校生か…」
この少年の名は「盛田 重三」。年齢15歳、成績はそれほど優秀ということではない。運動神経はそこそこと言う感じだ。将来はまだ考えてはいない感じだ。
彼がここに入った理由は単純に学力不足のためこの高校に入った。
言い損ねていたが、彼が入った高校の名は「桜葉高等学校」。普通科しかなく、全日制だ。クラス数は1年生が2クラスと2年生が3クラス、3年生が3クラスの計8クラスだ。

 彼のクラスは男子が10名と女子が22名の計32人。彼のクラスにはたくさんの個性ありふれる人たちがいるある人は見ただけで“オタク”と呼ばれるものもいれば、高校生ではありえないようなバストがでかい人などたくさんいる。
「盛田君だっけ?戦いってたのしいと思わない!?」
いきなり話しかけられたので、ビックリしてしまった。話かけてきたのは先程気になっていた、バストがでかい人だ。つい、「なんでそんなに乳が大きいのですか?」と、聞いてしまいそうになっていたのはさておき。
「えっと…あなたは…?」
と、盛田は言った。すると、この爆乳娘は答えた。
「これは失礼。私は桜葉高等学校防衛部に所属予定の『橋本 真里亜』であります!!」
と、彼女は敬礼をしながら言った。
「桜葉高等学校防衛部?」
と、首を傾げながら盛田は言った。
「え?知らないの?今年から創設された部活動の一種だよ?」
桜葉高等学校防衛部…
それは今年度の入学した生徒を対象とした部活動で、活動内容は他校からのテロ行為、スパイ、武力攻撃などなど、我が桜葉高等学校を護るために創立された組織である。簡単に言えば、我が校独自の警備隊、すなわち“自衛隊”だ。
では、なぜこの組織を校長は創設されたのだろうか。読者諸君らはこの時代の現状を見るかぎりわかると思われるだろうが、最初に述べたとおり、今時代、高等学校は弱肉強食の時代になり、あらゆる手を使っても、生徒数を増やしたいのが現状である。攻撃するのはたやすいことだが、守りが手薄になってしまったならば、城壁がない城と同じである。昔、某国が戦線を広くしたことにより、母国の防衛力が手薄となり、たくさんの敵爆撃機が侵入してしまい、大空襲が起こり沢山の民間人に被害が出てしまったということがある。つまり、そのようなことが起きないようにするためにも、防衛力は攻撃力より断然必要だ。「攻撃は最大の防御」とかいう詞があるが、それは非効率であると私自身は思っている。確かに敵の本拠地を叩くことにより、戦力が失われると思うが、仮にもしも敵が平等に散布していたことにしよう。敵の本拠地ということだから、味方はたくさんの戦力が本拠地に集結しているのだと思ってしまう。なので、その分の戦力と対抗するために大軍を送り込まなければならない。その隙をついて、敵は本拠地を一斉に叩くだろう。補給路を断たれてしまった大軍は敵の袋の鼠として一気に畳みかけるだろう。そのようなことは絶対にあってはならない。

 話を戻そう。この桜葉高等学校防衛部は今年度から創立し、今年の一年生を対象した部活動である。なぜ、今年の一年生のみを対象にしたのかと言うとこれにはちゃんとした理由がある。それは育成期間が二、三年生にした場合、極端に短いということだ。一年生から始めておくと、しっかりとした一流防衛隊員になるとまでは言わないが、ある程度なことはできると思い、一年生を対象とした。

 桜葉高等学校防衛部について橋本から聞いた盛田はだるそうに答えた。
「で、橋本さんは俺を勧誘しようとしているわけね。」
「その通り!堅もよさそうだし、いいかなーっておもったわけ。」
(俺そんなに堅よくないし、入ろうとおもっていないし…)と、盛田は思っていた。
「ね?だから一緒に入隊しようよ!ね?ね?」
盛田は少し冷や汗をかいた。初めて会ったのに対し、こんなにもなれなれしくされるとは思ってもいなかったのだから。
「よし。じゃ、俺も入るわ。」
と、つい口にだしてしまったのである。本当は「悪ぃ、俺、パスするわ。」と、言いたかったのにこの爆乳娘の乳がどうも近づいてきてしまったので、そう答えざるを得なかった。男と言うものはどうも女の色気で油断してしまうことがただあるのも過言ではない。実際、そういうことなのだから。
「いや、違う。俺は入部する気はない。」
と、言っていたが、どうもこの爆乳娘はテンションが上がりすぎて聞き耳をもっていないらしい。
結局、なんだかんだで盛田は桜葉高等学校防衛部に入部することになったのである。

「で、なんで部員がこんなに少ないんだ?」
「ははは…なんでだろうね…?」
事の発端は二時間前…
盛田と橋本の二人は入部届を提出し、それと同時に生徒指導の先生から宣伝用のチラシを配るようにとのことで学校内を歩き回って配っていた時である。
「防衛部だってよ。かっこいいわねー!」「めっちゃ、たくましそうだねー」「なんだ、あの胸は?」という感じのこそこそ話が聞こえてくる。
「今年創立したばかりなのにすごい人気やな。」
と、盛田が言った。すると、橋本がこう答えた。
「そりゃあ、そうでしょう。自分の学校を護るということなんだから、勇者だと言われてもおかしくないよ。」
「ということは、たくさんの部員が入部すること間違いなしやな。」
と、苦笑いをしながら盛田は言った。
「そうなると、重三モテモテだね。」
と、橋本が言った。すると、盛田は橋本が予想していなかった答えが返って来た。
「なあ、真里亜。俺は女子にモテたいからという理由でこの防衛部に入ったんじゃないんだ。そのことを覚えてくれ。」
と、真面目な顔で言った。だが、橋本はふてくされているような顔でこう言った。
「でも、最初勧誘したとき、私の胸に見入ってなかった?」
「ギクッ。」
「そもそも、重三って、おっぱいにしか興味がないんじゃないの…?」
「…悪かった…。」
「いい、もうわかったから。」
と、橋本が言うと、くどいように盛田に苦笑いしながらまた言った。
「重三がむっつりスケベっていうことがわかった。」

時系列は二時間後に戻る。盛田と橋本が部室…というよりか他の部活動の部室より遥かに大きく、かつ孤立しているプレハブにいた。そこが桜葉高等学校防衛部の部室であるらしい。中には武器庫だと思われる部屋や作戦室と思われる部屋などプレハブとは思えないほど数多くの部屋があった。すべて「思われる」としか言う事ができないのである。なにも説明もされていないのだから。
「で、なんでこんなに入部する人がいないわけ?」
と、盛田が橋本に聞いた。
「たぶん、他の部活動と違って、“命がけの組織”だからだろうね。少ないのも無理ないよ。」
と、橋本が言った。確かにその通りなのである。この防衛部は死と生との狭間で戦わないといけないかもしれないので憧れることはあるが、実際入部したいと思う事がないのである。さらに、今年になって初めて創立された部活動なのでなにをするのか謎すぎてわからない部活動なので入部しようと思っても怖すぎて入れないのが現状である。
実質、この盛田と橋本の二人もなにをするのかわかっていないのである。
「ま、とにかく部員の紹介をしてね。真里亜ちゃん。」
「前向きだね…。まぁ、いっか。まず右の子から自己紹介をお願いします。」
と、橋本から紹介を受けた子は一歩前に出た。
「この度、桜葉高等学校防衛部に入隊しました『星野 安奈』です。好きな乗り物は74式戦車です!よろしくお願いします!」
と、敬礼をしながら言った。
彼女は『星野 安奈』。戦車が好きだからという理由で入部したようだ。体格は小柄で髪はショートである。胸は平均的な女子高生のサイズである。真里亜と比べたらものすごくちっちゃく見えてしまう。こんなことを言うと、また真里亜からどつかれてしまう。ちなみに将来は陸上自衛隊の装甲科(戦車部隊や偵察部隊を主にする部隊)に入隊するために日々特訓しているのだとか。
「はいはい、よろしくねー」
と、だるそうに盛田が返事した。
「あなたが隊長なんですね!よろしくおねがいします!」
と、星野はペコリと小さくお辞儀すると言った。
「あー、そうだよ。俺がたいちょ…俺が隊長!?」
と、盛田はとび上がって言った。
「え、隊長じゃないの?」
と、星野は橋本を見つめながら言った。
「あー、そー言えばまだ隊長とか決めてなかったね。ま、それは後で決めるとして自己紹介の続きをするね。では次の方よろしくお願いします。」
すると、いかにも〝THEオタク〟のような人が一歩出てきた。
「どうも、この度入隊した『加藤 博』です。好きな銃は64式小銃です。よろしく。」
と、携帯を見ながら言った。
彼の名前は『加藤 博』。誰もが認めるオタクである。趣味がサバゲーということで、銃が扱えるからとの理由で入隊したらしい。ちなみに将来は二次系漫画を作ることで、現在、その準備ということで二次系漫画を作ってネットにアップしているようだ。ネットのコンクールにも投稿しているともいっているらしい。
「はい、よろくしねー。」
「では最後の方、よろしくお願いします。」
最後の人が前に一歩出ると誰も予想されなかった空気になった。
「は~い!桜葉高校のアイドル『谷村 飛鳥』だよー?趣味はねー、歌うことと撃つことかな?私に狙われたらイチコロよ!よろしくね!」
彼女は『谷村 飛鳥』。…まぁ、わかると思うが、自分がこの桜葉高校のトップアイドルだとおもっているらしい。はっきり言って、頭がおかしい奴だと思ってしまうが、なぜか知らないが男女問わずかなりの人気者らしい。将来はアイドル事務所に入るらしい。だが、なぜこの防衛部に入ったか、本人に問うと、「やっぱ、飛鳥って、筋力ないじゃない?だから、筋力をつけるために入部したってわけ。それと、もっと人気者になりたいし…」ということらしい。
「…よろしく。」
「というわけで、桜葉高等学校防衛部入隊数計五人です。」
「計五人か…これじゃあ学校を護るどころか、この防衛部すら護ることさえできないんじゃないか…」
と、盛田が言った。
「まあ、結成したばかりだし…その内、たくさん入部する人が多くなるよ。たぶん…。それに…」
そう橋本が言おうとした瞬間、部室内にある警報装置が作動した。防衛部では電探・逆探といった情報機器や学校内を監視をするための赤外線カメラ・熱探知式赤外線センサーといった防犯装置をコントロールできる、言わば情報管理センター的なことが部室内にある。
「熱探知式赤外線カメラに反応!メインコンピュータ室方向に侵入中!数は6人!」
と、橋本が言った。すると、盛田が言った。
「付近にあるカメラをモニターに表示せよ!」
「あれは隣町の帝国第二高校の戦闘部の偵察隊ですね。銃は…M5だけのようですね。こっちの89式5.56mm小銃と比べたら豆鉄砲ですな。」
と、加藤が言った。戦闘部というのは他校での軍事的活動をする部活動だ。この桜葉高等学校防衛部と違うことは「軍隊」ということだ。
「よし、総員戦闘配置!こっちの火力の方が上だが、油断をするなよ!」
と、盛田が言うと、全員が89式5.56mm小銃を片手に部室を後にした。

ここで我が桜葉高等学校防衛部の武装を紹介しておこう。基本のベースは日本の陸上自衛隊の装備品なのだが、たまに米軍のも混じっている感じである。現在の桜葉高等学校防衛部は創設したばかりなので、強力な火力の武器は予算上ということもあり、ほぼもっていない感じである。始めたばかりのRPGゲームだと思ってくれるとわかりやすいだろう。現在、もっている装備品は「89式5.56m小銃」「10mm個人携帯対戦車弾(LAM)」「9mm拳銃」「5.56mm機関銃(MINIMI)」「64式81mm迫撃砲」ぐらいである。あとは防弾チョッキや「M26手榴弾」「催涙弾」などと言ったものである。意外に火力が高い方じゃないか、と言う人がいるが確かにその通りなのである。だが、車両や航空機と言ったものがないので、近代戦闘においては不利である。スパイからの攻撃を防ぐのにはよいかもしれないが、大量な兵士が来た場合、対処しきれないのだ。この武装については後々また出てくるので今回はこんな話ぐらいで終わりとしよう。

「全員いるか?」
「全員います!…五人だけですが…」
「…よし、加藤、スマホで現在の敵の動きを確認してくれ。」
「現在、敵勢力は未だにメインコンピュータ室に進行中。」
「俺と橋本は正面から行く。他の三人は裏から回ってくれ。」
「了解!」
桜葉高等学校防衛部員は初めての実戦ということもあり、かなり緊張している。
「あと、加藤。もう一つ頼みがある。この三階の電灯類を消してくれないか?」
と、盛田が言った。すると、橋本がこう言った。
「なにをお考えですか?」
「まあ、俺に任せとけって。」
と、盛田は白い歯を見せながら言った。
一方、敵勢力はと言うと…
「隊長、易々と侵入できましたね。」
「当然だろう。この桜葉高等学校は未だに戦闘部を作っていないのだからな。」
他校のほうではこの桜葉高等学校が防衛部と言う名の自衛組織を創設したことが知られていないのだ。この時代でもSNSは流行してはいるものの学校関係のことをネット上にアップすることが禁じられているのだ。その為、学校内の情報は流出することがほぼないのだ。だから他校はスパイなどを派遣して情報収集するのだ。
「ですが、警報装置のようなものに引っかかりましたよ?」
「なーに、心配することはない。所詮、ただの脅しにすぎないのだ。」
「そうでしょうか…」
これから最悪のことが起こるということをこの隊長は理解できなかった。
「隊長!照明類が消えました!」

場所は盛田と橋本がいる場所に変わる。
「よし、加藤はうまくやったようだ。各員に告ぐ、全員、V8(個人用暗視装置)を装着せよ。」
「最初からこの“闇”が狙いだったんだね。」
と、橋本が言った。
「そうだ。敵は昼間に侵入したため、夜間までに伸びるとは到底思っていない。メインコンピュータ室周辺の廊下は窓がないということを知っていたから、裏をかいて照明を落とし、“闇”と言う名のステージを作ったのさ!」
盛田は自慢げに言った。それに反論するように橋本は言った。
「でも、まだ春だから日が落ちるのが早いということも考えていて、暗視装置を持っている可能性もないわけじゃないと思うよ。経験が多彩な隊長さんなら持って行かせるに決まっているよ。馬鹿じゃない限りね。」
「…」
盛田は固まってしまった。
「まあ、向こう(敵勢力)の隊長さん馬鹿だと願っておきましょう。」
と、盛田は開き直って言った。
「神頼みねー。」
苦笑いしながら橋本が言った。
「…それ以上言わないでくれ。心に穴が開くだろ…」

「隊長!照明類が消えました!」
「うむ、そのようだな。」
「いつもながらに暗視装置は持ってきていますよね!」
「…言いにくいが、この作戦が楽だと思って持ってきていない。」
「…」
班員たちが凍り付いた。
「なんでもってこなかったのですか!?」
「桜葉高等学校といったら、戦闘部がないので有名だろ!?そんな豪華なものなんて持ってくるはずがないだろ!」

盛田の言ったとおり、「馬鹿」であった。

一方、裏から回った、加藤、星野、谷村の三人はちょうど敵のすぐ近くの背後に隠れていた。
「ねえ、もう撃っちゃったらだめなのかな?」
と、谷村が言った。すると加藤が
「だめです。」
「ならさ、『あ、手が滑った!』みたいな感じじゃだめかな?」
「…だめです。」
「ならさならさ、『〝ア〟(安全装置)になってたつもりが〝レ〟(連射)になって引き金をひいちゃった』みたいな感じで、事故という形にできないのかな?」
「それって、さっきと変わらないじゃん。」
溜息をつきながら加藤が言い、そのまま続けて、
「そもそもそんな馬鹿はいないし、事故なんかに隠蔽出来ないって。」
と言った。
「まあ、そうだよねー。」
と、谷村が言った。ふと思い出したかのように谷村が続けた。
「そういえば、安奈ちゃんはなにもいわないけど、具合でも悪いの?」
そう言った瞬間、突然銃声が一回聞こえた。
「なんだ!?なんだ!?」
加藤は心中穏やかでいられない様子だった。
「お、お、落ち着いて!」
そう言う谷村も落ち着きを隠さなかった。
「てか、安奈ちゃんは大丈夫?けがはない?」
星野は口数が少ないからなのか、影が薄いとこの二人からは思われているようだ。谷村が星野に向かって尋ねたが、その背中は動かない。
「安奈ちゃん??」
二回呼びかけると、やっと口を開いた。すると、安奈はこう言った。
「あーあ、間違えて引き金ひいちゃった。このあとどーしよっかー。」
言い方は棒読みだった。加藤と谷村は最初は「へ?」みたいな顔をしていたが、その後、理性が戻ったようで、二人はこう思った
(わざとだろ…星野にも忠告すればよかった…)
(嘘が丸見え…私も撃っちゃえばよかった…)
二人の心は呆れ果てた脱力感と後悔の二つだった。

「いってーーー!」
言葉では表せないような強烈な痛みが彼を襲った。
「おい、どうした!?」
普通の隊長ならこう言うはずなのだが、作戦中ということもあり真面目な彼はこう言った。
「作戦中だ。私語を慎め。どうせなんかのとげにも刺さったんだろ。衛生、応急処置をしろ。」
「は!おい、どこをけがした?」
「足の付け根の部分です…くそ、こんなに痛いと思わなかったぜ…」
「!、隊長!こいつ、銃弾を受けています!」
「なんだと!?」
なぜこいつらが銃声に気づかなかったというのは置いといて、星野の射撃能力には感心した。実銃をもつのも初めてで、実弾を使うのも初めてという全てが初めてだらけというのにも関わらず、正確かつ慎重であるということがとてもひどく心を打たれた。しかも、暗闇の中、撃てたということも忘れないでいただきたい。どこかで練習をしていたかと思われるが、本人は「射撃場とかで撃ったことはない。サバゲーなら少々…」という感じで腕はアマチュアレベルだと思われた。人は練習ではダメダメだったけど、本番になると、プロも認めるぐらいの出来栄えを成功するという感じの〝奇跡〟ということが起こる。何回も起こることにより、〝奇跡〟が〝才能〟になることだってあるのだ。この星野という人間が〝奇跡〟から〝才能〟になることはたった数日の出来事になるのであった。
隊長は戸惑いを隠せなかった。なぜか。桜葉高等学校には戦闘部という軍事組織がないということであったからだ。仮にあったとしても、遂一週間前に創立したばかりだと思うし、どんなに優秀なプロの狙撃者がみっちり教えたとしても一週間ではとても上達などできないからである。だが、戦いには時にその概念を打ち砕く必要があるということだ。常にその概念にとらわれては先に負けてしまうので、その隊長はその概念を捨てた。
「これはもしや、この桜葉高校には我が戦闘部のような軍事組織があるようだな。」
隊長がこの台詞を発すると、隊員たちが先程の隊長と同様に戸惑いを隠せなかった。
「そんなはずはありません!」
「なにかの間違いです!」
と、隊員たちが言うと、隊長は
「だが、事実、『銃弾を受けている』と、衛生が言ったではないか。」
「しかし…」
隊員たちはどうもこの桜葉高校に戦闘部という軍事組織があるとは認めたくはなかったのである。
「確かに認めたくないのも正直わかる。だが、我が戦闘部の部員にとって重要なことは…」
隊長がそのまま言い続けようとすると、
「真実」
「正確」
「心」
と、隊員たちが言った。隊長はもうなにも言うことがないので、「フッ」という言葉を発した。

〝侵入者に告ぐ!この場から今すぐに立ち退かなければ、侵略とみなし、防衛なる武力行使を決行する。これは脅しではない警告だ。今ならまだ、見逃してやる。直ちに立ち退きを命ずる。私は桜葉高等学校防衛部、盛田重三である。〟

いきなりの放送に隊員たちはとてもビックリしたが、隊長は顔色を変えないままだった。
「隊長!」
「うむ。〝警告〟だとな。『だが、我々は突き進む』と、言いたいとこだが、ここには負傷者がおる上に完全なる装備も整えていない。従って、ここは敵の好意を受け取ることにしよう。撤収だ!」
隊長は「come backサイン」と言えばよいのかわからないが、両手で親指を突き立てて、肩の上を通すように後ろにやったり、前にやったりということを繰り返して、撤退を呼びかけた。
撤退する直後、隊長が最後に出るときに言葉を漏らした。
「桜葉高等学校防衛部、盛田重三か。覚えておくとしよう。」
と、隊長は桜葉高等学校を後にした。
これが機に、桜葉高等学校防衛部が創立したということが世間に広がったのである。
〝戦闘部〟というのではなく、〝防衛部〟という異例のことも週刊誌のほうで大きく取り上げられたのである。









続く…
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