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報告書 1
日報 17
しおりを挟む「ぬおぅりゃあぁぁぁぁっ!」
バーサーク・ボアの拳を受け止めた左腕に力を込めて、一気に押し返すキルマオー。
ーー「ブッ!ブゴォオッ⁉︎」ーー
その勢いは凄まじく、バーサーク・ボアの巨体がタタラを踏み、大きく後ろへと後退する。
自分より遥かに小さな存在に力負けしたことが信じられなかったのだろう。驚愕に染まった目を大きく見開いて、驚きの声を上げるバーサーク・ボア。
「おお⁉︎ 本当にパワーが上がってるじゃんっ!」
『だから言ったのである!今や、この程度の力でのゴリ押ししか出来ぬようなケダモノなど、相手にもならないのである。何だったら【魔装鎧】を解除してみるといいのである。全然余裕なはずなのである!』
「ほお…!さっきブッ飛ばされた時はパワーだけなら【イーヴィル】の怪人並だと思ったけど、そんなにパワーアップしてるのか…!」
先程システィーナを庇い、バーサーク・ボアの一撃で大きく弾き飛ばされてしまった時のことを思い出して、感嘆の声を上げる救人。この様子なら、キルバインの言う通り変身を解いても大丈夫かもしれない。
「でもまあ?"ヒーローは正体不明がお約束"だからな、このまま行こうぜ爺ちゃん!」
『お、おお!そうであるな!(ジイィ~~ン…爺ちゃん……、何度聞いても良い響きであるぅ!)』
孫の言葉に感動している元魔王ジジィはさて置き、取り敢えずはいつもの正体を隠し、あくまでも正義のヒーロー【キルマオー】で行く方針で決めた救人。
「さぁて、他に被害が出てもいけないからな、サクッと決めさせてもらうぜ!来い、【黒魔槍】‼︎ 」
掲げた手の中に、光の粒子となって膨大な魔力が凝縮され、やがて【魔装鎧】の意匠によく似た一本の黒槍が顕現する。
「貫けっ!〈夢幻刺突〉‼︎ 」
円を描くように大きくグルリと振り回した槍を引き、バーサーク・ボアに向かって鋭い突きを放つ。
だが、ただの一突きでは無い。それは一瞬で数十を超す突きへと変化し、バーサーク・ボアの身体には、巨大な散弾銃で撃たれたかのように無数の穴が穿たれた。
ーー「ブギュ?ブ…ゴアァァァァァアッ‼︎ 」ーー
自らの身に何が起きたかも理解出来ぬまま、断末魔の絶叫を残してバーサーク・ボアの巨躯は一瞬にして黒い塵として解け、跡には鈍い光を放つピンポン球ほどの大きさをした"魔石"だけが残された。
「よっしゃ!決まった……っ!」
もう一度大きく黒槍を振り翳し、ピタリと決めポーズを取るキルマオー。
何故やたらと艶々と光る【魔装鎧】に、ややシルエット気味なのかは謎だ。聞いてはいけない。
「(よし、あとはこのまま撤収して、急いで変身を解いて救人に戻ってからシスティーナさんと合流だな。早くミーナさんを病院に連れて行かなきゃいけないしな。ってか、病院ってあるのかな?…まあいいか、さっさと変身を解いてこよう)」
そう考えた救人は、一言システィーナに残してからこの場を去ろうと振り向くが、そんな救人の元へとシスティーナが走り寄って来ていた。
その顔にはまだ涙の跡は残るものの、先程までの絶望の色は無い。目立った外傷も無さそうだ。
「(良かった。システィーナさんには怪我はなさそうだな )」
そんなシスティーナの姿に、【魔装鎧】の中で、ホッと安堵の息を吐く救人だったが、次の瞬間、駆け寄るシスティーナ口から驚くべき言葉が放たれた。
「キュウトさんっ‼︎ 」
「………………………………………………………………………………………………………………………………え?」
システィーナの口から発せられた言葉に固まる救人。それも無理は無いだろう。今、彼女は間違い無くこう言ったのだから。『キュウトさん!』と。
「(えっ!ちょっと待ってっ?今システィーナさん『キュウト』って言ったよな?え!あれ?何でバレてるんだ…っ⁉︎ )」
システィーナの言葉に大混乱する救人。だが、何とか誤魔化さなければ!と再度言葉を重ねようとした救人に、辿り着いたシスティーナがヒシと抱きついて来た。
「ありがとうございましたキュウトさん!」
「(やっぱり………!完全にバレてる~~~~っ⁉︎ 何でっ⁉︎)」
「いや、その…、俺はキュウトじゃ…… 」
「キュウトさん!ああっ!良かった……、モンスターに殴り飛ばされた時はもうダメかと………っ!良かった……、本当に良かった!」
何とか誤魔化そうとする救人だが、新たに歓喜の涙を溢れさせて抱きついてくるシスティーナは、自分達の窮地を救った黒い鎧の主が救人だと完全に確信しているようだ。
「(あっれ~~~~~~っ!何でだ?何でバレたんだ⁉︎)」
謎のヒーロー【キルマオー】は、異世界での初変身、初戦闘で、何故かその正体は即バレしてしまったのであった ーーーー‼︎ (笑)
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