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第5章 脅威襲来、そして王都へ
第27話
しおりを挟むーーシャランッッ!!ーー
涼やかな音と共に、蒼く美しい刀身が月光に照らされ光の軌跡を描いて降り抜かれる。
しかし、その軌跡の先に居た者達はその美しさなど二度と感じることはないだろう。
二度、三度と蒼い光の軌跡が閃めく度に十数匹の魔獣の命が絶たれていく。蒼い光の煌めきが美しいだけに、それは一種異様な光景にも感じられた。
「奥方!ボサッとするでないぞ!一匹抜けて来たぞ!! 」
いけない!ヒロト様の戦うお姿に見惚れてボーッとしていた。ハッ!としてノア様の方を向くと確かに背中から大きな棘を生やした狼の魔獣【スパイクウルフ】が、手負いになりながらもヒロト様の攻撃を逃れこちらへと向かって来ていた。
すぐさま私も愛刀”夜叉姫”を構え、スパイクウルフを迎え討つ。
ーーヒュオンッ!ーー
ノア様の触腕が風の魔力を纏いスパイクウルフに襲いかかる。ギリギリでそれを躱すスパイクウルフだが、躱される所までが全てノア様の読み通りだったようだ。………何故なら…、
「やあぁぁぁぁぁぁっ! 」
ーー斬ッ!!ーー
「ギャウゥゥゥゥンッ!? 」
ノア様の攻撃に気を取られて、無防備に背中を曝していたのだから………。
素早さが特徴のスパイクウルフ。恐らくは私よりレベルも上だったのだろうが、決定的な隙を見せてしまってはどうしようもない。
「お見事。良い太刀筋です 」
「いえ、ノア様のお陰です。申し訳ありません、ヒロト様のお姿に目を奪われていました… 」
周囲を警戒しながら、ノア様に頭をさげる。しかし、ノア様は少しだけ口元を歪めて笑う。
「いえ、”アレ”は仕方ないでしょう………。我が主と決めた御方ながら、これほど凄まじいとは思いませんでした。あれでは私の出る幕が全くありません 」
歪めているのではなく、若干引きつっていたようだ。確かにノア様の仰る通り、”凄まじい”としか表現しようすがない。
「セイリア!ノアッ!! 」
いきなりヒロト様に名前を呼ばれ振り返ると、目の前には巨大な蟷螂、アーマードマンティスが既に鎌を大きく振り上げた状態で立っていた。
「しま…っ!? 」
「くっ!? 」
いけないっ!? 避けなければ!ッと頭では分かっていても体が動かない!…やがてその鎌が私に向かって振り下ろされ………っ!?
ーータタタッ!タタタッ!ーー
「キュォォォォォォォンッ!? 」
空気の破裂したような聞き慣れた音が響くと同時に、私を両断する筈だった魔獣の鎌が関節の部分から弾け飛び、アーマードマンティスが苦悶の悲鳴を上げる。
「痴れ者がっ!」
ノア様が風の刃を纏わせた触腕でもう一方の鎌を切り落とす。
まだヒロト様に教えて頂いた《魔震刀》は使えないけれど、私にはお祖父様から教わった《魔刃刀》がある!
ーー斬ッ!!ーー
裂帛の気合いを込めて、蟷螂の首を叩き斬った。首だけになっても、まだその鋭い大顎をギチギチと鳴らしながら転がって行く。
今のは本当に危なかった。ヒロト様に助けて頂けなければ私は………。安堵と心強さ、無理を言って付いて来たというのに、足を引っ張ってしまっている情け無さ、悔しさが胸いっぱいに広がっていく…。
「奥方、まだだ。まだこれからだ。悔しくとも前を見よ。我等は…いや、貴女はあの御方に背中を任されたのだ。ならば、今はただその剣を振り続けるのだ。これよりはこのノアも一瞬たりとも油断はしない。我の全てを”盾”として、我が主より託された貴女を必ず守り抜く。思うが侭に存分に戦われよ 」
ノア様の御言葉に思わず涙ぐみそうになるが、歯を食いしばって堪える。袖で目元を拭い夜叉姫を握りしめた。
決意を新たに前方を見遣れば、圧倒的な魔獣の群れにも一歩も退かないどころか、その魔獣共を逆に”圧倒”しているヒロト様の姿が。
そうだ、負けてなんていられない。私は自ら誓ったのだ。絶対にあの方に相応しい女になると。
「よろしくお願いします、ノア様! 」
先程仕留めた【スパイクウルフ】と【アーマードマンティス】の経験値のせいだろうか、身体が熱い。
また二匹、こちらへと向かってきたようだ。ヒロト様に心置きなく戦って頂くためにも、絶対に倒さなければ!
「ノア様!セイリア、参りますっ!! 」
私は決意を気合いへと変え、ノア様と共に魔獣に向かって駆けた…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ふぅ~~っ、さっきはちょっとヤバかった!?
目の前の魔獣の群れに《魔弾》の連射モード”アサルト”で魔力の弾丸を叩き込みながら、小さく安堵の溜息をつく。
さっきから一匹、二匹…と背後に抜かれているが、実はこれ、ワザとである。
実際に当たってみて、まだまだ余裕であった為、少しだけ手負いの状態にして弱らせた魔獣を、セイリアのレベリングの為にワザとリリースしていたのだ。
だが、思っていたよりもセイリアは緊張していたらしく、気合いはあるものの動きは硬く、予想より危ない場面になってしまった。
まあ、そのお陰かいい感じに緊張感も解れたようだから良しとしよう。気を抜いて油断したノアは後からお仕置きだがな!
(〈そんなぁ~~っ!? 〉)
ん?ああ、意識下で繋がっているんだったか?嘘じゃないぞ~、覚悟しとけ。
ーーシュシュシュシュシュシュシュシュシュッ!! ーー
突然、群れの後方から杭のようなモノが飛んでくる。魔法か毒針のようなモノか?
群れの後方、ティラノサウルスの姿のスズメバチ?とでもいった感じの群れが見えた。
鑑定してみると、【ワスプ・レックス】と言うらしい。【プテラゴン】といい、割とまんまだなこの世界のネーミング…。
冗談はさておき、中々に強そうではあるな?巨大な体躯にティラノサウルスのように発達した頭部、後肢。腹節尾部は尻尾のように更に太長くなり、先程の杭のような毒針を様々な角度に射出出来る様にかなりフレキシブルに可動するようだ。対して前肢中肢はそれ程大きくはなく、翅も背中の中程までしか無い。確か蜂はその羽搏きで会話らしきやり取りをするらしいから、陸上型に進化しても無くならなかったんだろう。反応は黄色、プテラゴンより強力らしい。
二十匹程の群れが煩く翅を鳴らすと、また尻尾の先端をこちらに向け、毒針杭を一斉射出して来た。
それ等は目の前に居た魔獣達をも巻き込み無数に飛来して来るが、逃げる必要も避ける必要すらなく、一瞬の内に俺の前面へと集結した”モノ”にその全てが甲高い音を立てて弾き返されてしまう。
毒針杭を防いだ”モノ”がゆっくりと分解して、俺の周りに展開する。
それは長さ二メートル、幅五十センチほどある岩塊の板…いや、アイによって圧縮、強化され鋼鉄以上の強度を持った柄のない剣のような形状をしていた。
どうも、俺が前に観た大昔のロボットアニメからアイは着想したらしいんだが、それ等が白兵戦に入ってすぐに俺の周囲を漂い始め、時に盾となり防御を、更には〈超振動〉まで付与しているらしく縦横無尽に飛び回っては魔獣達を粉砕、切断、圧殺、鏖殺…、「なんかもう俺、立っているだけでいんじゃね? 」って感じで大活躍しているのだ。
しかも完璧に俺の動きに合わせている為、俺の攻撃の邪魔には一切ならずに。おまけにアイの攻撃はそれだけじゃない、
ーーヴァゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!ーー
ーーバシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!ーー
主に”対空攻撃”だが、《魔弾》の”アサルト”をさらに高速、高威力で掃射する【バルカンファランクス】に、一メートル程の長さに設定した《炎矢》が地対空迎撃ミサイルの様に次々と夜空へと射出されていく。
おまけにそのミサイルは実弾では無く魔力弾、その全てがアイはよる誘導弾である為、翼や翅を羽ばたかせて飛来して来た魔獣達は、もう里を襲うどころではなく必死に空中を逃げ惑っている。しかし俺の《魔弾》が「銃弾」を模したものなら、アイの《炎矢》はジェット噴射の「ミサイル弾」だ。
この世界の飛行生物達は翼の生み出す”揚力”だけで飛ぶのではなく、魔力も駆使して空を飛んでいるようだ。その為、プテラゴンがあの巨体でも助走も何も必要とせずに重力の軛を振り払って空へと舞い上がったように、まるで物理法則を無視したかのようなトンデモない空中運動性能を持っているのだが、ジェット噴射のように高速で追撃してくる《炎矢》に次々と追いつかれて夜空に炎の華を咲かせていた。
時に何とか回避する個体もいるにはいたのだが、《炎矢》自体も物理法則で飛んでいる訳ではない。回避された瞬間には”直角”にその軌道を変えて襲い掛かり、やはり夜空の華と散っていた。
何というか、防御力に火力がトンデモない状態になっていて、まるで【要塞》でも背負って戦っているかのようだ。
『マスター、現戦域における航空戦力は全て撃墜、駆逐出来たようです 』
『了解、ご苦労様。厄介な連中を仕留めてくれてありがとうな。じゃあ、引き続き俺のサポートと、セイリア達への援護を頼むよ。ああ、セイリアの方に流す魔獣は適当に手負いにして、トドメはセイリアに。上手くレべリングをさせてやってくれ 』
『イエス、マイマスター 』
アイの返事と共にファ◯ネルモドキが三枚ほどセイリアの方に飛んで行く。ノアだけでもよっぽど大丈夫だと思うが、念には念を入れた方がいい。
アイがセイリアの護りに着いてくれるなら安心だ。
そうすれば俺は攻撃だけに専念出来る。【玖珂流魔闘術】の全てを久々に開放してやろう。
〈壱の牙 覚〉にて意識を拡大し、戦域全てを認識する。〈弐の牙 虚〉の緩急を極めた動きで敵の目を幻惑し、〈参の牙 疾〉で一瞬の隙を突き懐へと飛び込み、〈六の牙 轟〉による拳打、蹴撃や『颶風』や”糸”を使った〈七の牙 斬〉の斬撃に 〈八の牙 震〉の「超振動」を乗せて、堅牢な甲殻も強靱な筋肉も、区別無く見境無く、砕き、穿ち、貫き、断ち斬る。
赤色の反応は既に僅か、腕を、脚を、肩を《魔弾》で撃ち抜き砕き飛ばし、戦闘力を大きく削ぎ落とした状態にしてからセイリアへと流す。
やがて周りの反応は黄色だけとなり、最初にさっきの【ワスプ・レックス】達が群れを成して襲い掛かって来た。
肉食系の昆虫種は自身の数倍の獲物すら持ち上げる程の力を持つ。また、スズメバチなどの蜂類の大顎は兇悪な程大きく噛み千切る力も強い。そんな物が、更に大きく一メートルほどまで巨大化した顎をガチガチと鳴らしながら、体高五メートルの巨体とは思えない速さで噛み付いて来た。
一瞬の隙を突かれ左腕へと噛み付かれた。ガチガチと何度も大顎を噛み合わせる【ワスプ・レックス】だったが…、〈伍の牙 鎧〉で魔力の鎧を纏った腕は噛み千切るどころか傷付ける事すら出来ない。
そして、この世界に来て、大きく変わった事が一つある。〈伍の牙 鎧〉を発動した時だけ、強化外殻をイメージする事で、擬似的にではあるが〈四の牙 剛〉によるパワーブーストまで再現出来るようになったのだ。
「うらぁっ!! 」
ーーグシャリッ!!ーー
噛み付かれていた左腕を強引に振りほどき、そのまま頭部ごと地面に叩きつけ砕き潰す。そして…、
これも魔獣達の魔力による動きと強化外殻をイメージし、〈参の牙 疾〉と風系の魔力を組み合わせた事で可能となった魔導ブースター、名付けて〈魔力機動〉によって有り得ないほどの急発進、急制動や直角の回避による高機動で群れの外へと脱けだして”相棒”の新しい能力を解き放つ!
「行け!『颶風』!! 」
ーーパンッ!パンッ!パパンッ!!ーー
それは剣の鋒が”音速”を超えた時に出る空気の破裂した音、衝撃波の響き。
蒼く輝く『颶風』は七~八メートル程にまでその刀身を伸ばしていたが、その形状は曲がり、うねり、まるで”鞭”の如く自在にしなり魔獣達の中を駆け巡る!
これが爺さんも想像し得なかった『颶風』の新しい能力だ。
自在に「長さ」を変えられるのなら、その形状まで変えられるんじゃないか?と考えてみたのだが、これが実に「大当たり」だった。
鞭という武器を想像した時、誰でも強さよりもイロモノ感の方が強いと思う。しかし、達人の域に達した鞭となれば打撃だけで無く”突き”まで出来るという。また、先程言ったようにその先端の速度は数有る武器の中で唯一音速を超える。
つまり、視認して回避など絶対に不可能、だということだ。
ひと振りする度、蒼く美しい軌跡を描きながら、まるで歓喜の声を上げるかのように空気すら引き裂いて魔獣の群れに襲い掛かる『颶風』。
”鞭形態”とでも呼ぶべき『颶風』の新しい能力の最初の獲物は【ワスプ・レックス】達だった。
前肢が、兇悪大顎が逞しい後肢が巨大な腹節尾部が、次々と細切れに切断されていく。ひと断ちする度に『颶風』から”喜び”の魔力波動が伝わってくる。
やっぱり、相当鬱憤が溜まってたんだなぁ…、と周囲の状況に全くそぐわない事を呑気に考えるが、その間も一切動きを止めずに動き続ける。
《魔弾》が、『颶風』で、糸で、拳が、魔獣達を屠り続ける。最初に感じた大量の魔獣を倒した事による身体の熱さも痛みも既に感じなくなっている。後で確認してみるが、きっとトンデモないレベルまで上がっているんだろうな…? と考えながら、最後の魔獣だった頭部が五つあったヒドラ型の魔獣の首を全て刎ね飛ばしてトドメを差す。
気が付けば既に空には月は無く、辺りは薄っすらと明るくなり始めていた。まだ暗い森の向こう、遠く北の山々が暁に照らし出され赫緋と燃え上がっているようにも見える。
薄く朝靄に包まれ、冷んやりとした朝の空気を吸い込み、ゆっくりと息を吐き出しながら油断無く残心の構えを取る中で、巨大な魔力波動の反応が近付いて来るのを感知した。
『マスター!十二時の方角に感あり。距離五千三百、大きい? 推定全長七十メートル!? 時速約十五キロほどでこちらに接近中です!』
アイが広域サーチによる索敵結果を報告してくる。しかし七十メートルか、噂に聞く”巨獣”というヤツだろうか? 地球の常識で言うなら、そんな巨体は物理的に有り得ない。あの超有名な”放射能怪獣”だって、もし実在していたとしても、本当なら海から出て陸上に上がった途端に自重によって圧死してしまうからだ。
だが、ここは異世界、地球とは異なる「魔法物理学」とでも呼ぶべき物が存在する世界だ。恐らくその巨体には凄まじいまでの魔力が巡り、骨や筋肉を補強…いや、さらに強化しているんだろう。だとすれば、生半可な攻撃では小さな傷ひとつ付けられない筈だ。
「ヒロト様!」「ヒロトっ!」
声に振り返れば、セイリアと”爺さん”が駆け寄って来ていた。
「おはよう、爺さん。こっちに来たって事は南側はもう片付いたのか? 」
「おお、久々に愉しませてもらったわい。それほど強い魔獣共では無かったが数が数だったのでな、それなりには手こずったわ。じゃが、年寄りどもの鬱憤晴らしに、まだ戦を知らぬランドを含めた若武者どもには良い経験となったろうよ。それにしても、また派手にやったもんじゃなぁ…」
クックックッっと喉で笑いながら、爺さんがいつもの悪戯小僧のような表情で辺りを見渡す。が、直ぐに表情を引き締めてこちらを見てくる。
「じゃが、最後の最後に厄介な奴が出て来たもんじゃな? 」
「ああ、約七十メートル、大物だな。コイツが”巨獣”ってヤツなのか? 」
「なっ!七十メートルっ!? 」
俺の言葉にセイリアが驚きの声を上げる。疲れもあるだろうが、愕然としているのがありありと分かる。
「もしかして、相当の大物なのか? 」
そのままセイリアに尋ねると、唇を震わせながら答えを返して来た。
「は、はい。巨獣、と一口に言ってもその大きさ、形態は様々です。強い魔獣が、さらに濃い魔素の影響を受けて巨大化していくと言われていますが、濃過ぎる魔素のある場所には人は命の危険がある為入って行けませんので、実際のところは良く分かっていません。しかし、ただ一つ言えることは、最小、二十メートル程の〈中隊級〉と雖も、砦など簡単に破壊出来るほどの脅威である。という事です。その上には〈大隊級〉〈連隊級〉が存在しますが、七十メートル以上の物は〈旅団級〉と呼ばれ、最早”天災”と同意義、巨獣の種類によっては国家規模の軍隊ですら全滅を覚悟して討伐に臨まなければならないと言われるほどなのです 」
「実際、このロードベルクでは無く他の国の話じゃがな、五百年位前にアジャンタという西方の中堅国家の王都が、百二十メートル級の巨獣によって一夜にして壊滅しておる。人々は明るく、美しい都だったんじゃがのう……… 」
セイリアと爺さんが順番に”巨獣”について説明してくれるが、「種類によっては 」か…?
「ちなみに爺さん、そのアジャンタって国を滅ぼしたっていう巨獣はどんな種類だったんだ? 」
「うむ、【黒殻龍蟲】と呼ばれる奴じゃよ。黒曜石の如く輝く甲殻を持った、龍の様な姿の甲蟲といった、途轍もない防御力を持った巨獣じゃ 」
視覚モニターをズームにして確認していた俺は、ひとつ溜息を吐く。やれやれだな………。八割がた間違い無いだろうと思いつつ、立てた親指でチョイチョイと指差しながら爺さんに聞いてみる。
「そうか…、それって”あんな感じ”のヤツか? 」
「………っ!? バカな…、何故こんな奴がココにおるのじゃっ!? 」
ーーズズンッ…ズズンッ…ズズンッ…ーー
地響きと共に森の木々を薙ぎ倒しながら、ソイツは姿を現した。
爺さんの説明にあった通り、黒曜石の様に艶と輝きを放つ黒い甲殻、全体的なフォルムは甲虫のそれだが、本来なら角の生えている場所から延びるのは太く逞しい頸。
頭頂高も二十メートルはあるだろうか? まだ距離は四千以上あるにも関わらず、馬鹿げた巨体の為に小山が動いている様な錯覚さえ覚える。
其れは白み始めた空の下、ゆっくりと、だが確実にこの秀真に向かって移動をしていたのだった。
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