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第1章 異世界転移
第3話
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「うっ、グスッ、ひっく……、うえぇぇ…… 」
あれから暫く経って、今、俺が何処にいるかと言うと、VR機能を使って自分の内側、電脳内に創った電脳空間の中に居る。
何をしているか?と言えば……、
「なあ、アイ、もう泣かないでくれよ、俺が悪かった! お前の言うことを信じるからさぁ…… 」
只今、泣き出した《アイ》の絶賛ご機嫌取り中である……。
『うえええぇぇぇぇぇぇん!! 』
自分の理解を遥かに超えた事が連続で起こり過ぎて、完全にパニック状態になっていた俺を正気に戻したのは、《アイ》の泣き声だった。
もう完全に「ガン泣き 」である。考えてもみてくれ?《アイ》の本体はおれの補助AI、つまりは俺の中にある。それがガン泣き……。
そりゃもう、頭の中で響く、響く……。 何しろ俺の中ということは、耳を塞いだところで、まったく意味が無い訳で……。
『《アイ》! いい加減にしろ!! いいから黙れっ!! 』
『びええぇぇん!マスターが怒ったあぁぁぁぁぁっ!? 』
声を荒げて命令すれば、ますます激しく泣き出す始末だ。
…………ダメだ!我慢できん!!
俺はVR機能を起動させると、自身の内側に意識を向け、電脳空間へとダイブした……。
……で、今に至る。目の前にはアイのアバターが座り込んで、グスグスとしゃくり上げながら泣き続けている。
「悪かった、信じるから!頼むから泣かないでくれよ 」
すると、やっとのことでアイは泣き止み、その目にいっぱいの涙を浮かべたまま上目遣いで俺を窺い見てきた。
「グスッ……、本当ですかぁ……? 」
「本当だ。 まだ正直分からない事だらけだけど、今のアイを見ていると、本当にそう思えてくるよ 」
だが、どうしても確認しておきたい事がある。 それは、
「でもアイは、いつ、何で自分のことを” 生きている ”って思ったんだ? 」
さっき、アイは「生命体になりました 」と言った。 という事は、” それ ”を自覚した切っ掛けがあったという事だ。
いったい、それは何なのか?ということが分からない。
「あっ!? それはですね、驚かないで下さいね、なんと〈 女神様 〉にお会いしたからなんですよ! 」
素敵過ぎるほどの笑顔を輝かせて、嬉しそうに言うアイを見て、つられるように笑顔になりながら俺は思った。
……………………………………ヤバい。
「やっぱりバグってるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!! 」
「えぇぇぇぇっっ!? 」
で、振り出しに戻る……。
さっきよりも凄い勢いで泣き始めたアイを、平身低頭、あやし、宥め、謝りながら、必死になって頭を下げ続けたのだった……。
「うぅっ、マスターは意地悪ですぅ………… 」
「悪かったって。だって仕方ないだろ? さすがに〈 女神様 〉は無いって!? 自分の補助AIが、いきなり宗教を語りだしたら、そりゃビックリするって! 」
「……? いえ、女神様に会ったというのは、比喩でも何でもありませんよ? 」
アイはキョトンとした顔をして、首をコテン、と傾けながら何でもない事のように言う。
「いやいやいや、あり得んだろう、さすがに 」
「いいえ?何でしたら、女神様との会話を記録してありますので、ご覧になりますか? 」
は!? マジでか!予想外の展開に唖然とする俺をよそに、アイはモニターを展開して、件の映像を流し始めた……。
『えっとぉ、もうコレぇ、撮影始まってるんですかぁ? 』
……………………何だコレ?
モニターの中には、輝かんばかりの金髪を揺蕩わせた、とんでも無いほどの美女が映っている。だが、
「何で制服(JK)? 」
『お名前を教えてくれる? 』
『アフィラマゼンダでぇす♪ アフィーちゃんって呼んでくださぁい♪ 』
『アフィーちゃんか、可愛いね~、それから、オッパイ大きいね~ 』
『やぁだぁ、もう!エッチぃ!』
…………もう一度言う、何だコレ………?
「……アイ……、何これ?何か、男の声まで聞こえるんだけど? 」
「えっ?えっ!? あれ!? おかしいな……、あれ!? 」
アイは訳が分からない、という顔で、しきりに首を傾げながらメモリを再検索する。
何と言うか、これではまるでアダルトサイトの導入部によくある、女優さんへのインタビューのようだ。
「……ん? あれ?、今目が合わなかったか? 」
画面の中では、まだインタビューの場面が続いている。その様子を何の気も無しに眺めていたのだが、今一瞬、女の子と目が合った気がしたんだけど……?
ただカメラ目線なのをそう感じただけかもしれないが、妙に違和感を感じる。
その後も、アフィーちゃんへのインタビューは続いているが……。
「ごめんなさい、マスター……。 どうしてかは分かりませんが、メモリーが見つかりません…… 」
しゅんとした表情のアイが、申し訳なさそうにそう言ってきたが、
「ああ、大丈夫だ。 たぶん問題無いよ、アイ 」
「えっ!? 」
「〈女神様〉本人に直接聞いてみればいいのさ。そうだろ、女神様? 」
そう言って、画面の向こうの彼女に話しかけた。
すると、今度は完全にお互いの目線が合い、今までの妙に可愛こぶった笑顔とは違った、悪戯がバレた時の子供のような表情で〈女神様〉はニヒッと笑う。
『あはは、 やっぱりバレちゃった? 』
……よかった……最初見た時は、アイが間違って俺のお宝メモリーを流したのかと、ちょっぴり焦っちまったじゃないか……!?
「まぁな、こう見えても気配察知や、観察は商売柄得意なんだ。 どうやって俺の電脳回線にハッキングしたかは知らんが、俺の組んだ防壁プログラムを越えて来るとは大したもんだよ。 で、アンタは何者なんだ? いったい何の目的で俺にこんな電脳夢を見せているんだ? 」
『電脳夢? なぁに、ソレ?』
美少女が小首を傾げながら尋ねてくる仕草は可愛らしいが、そんなことでは騙されない。
「惚けるなよ、いったいどこからが電脳夢だったんだか……。 アンタが何処の組織のエージェントかは知らないが、いい加減にしておかないと、カウンターハックで脳を焼き切るぞ? 」
少々脅しも込めて睨みつけてみたが、返ってきたのは如何にもやれやれ、という多分に呆れを含んだものだった。
『も~!君、頭固ぁ~い! ホントにアイちゃんのマスター!? 』
「ふざけるな! くそっ! 本当にアイが自我に目覚めたのかと思って嬉しかったのに、喜んだのがバカみたい「本当ですか! マスター!! 」じゃないか! 」
うぉっ!? ビックリした~! 俺のセリフにかぶせる様に叫んだアイが、もの凄く興奮した様子で詰め寄ってきたからだ。
然も、現実ならお互いの吐息が触れるくらいの、正に目の前。
「マスター!さっきの言葉は本当ですか!? 」
「えっ!? な、何が? 」
「ですから! 私のこと、嬉しかった、って! 本当ですか!? 」
……って、近い、近い! 間近で見るアイの整った容姿に、VRだと解っていてもドキドキしてタジタジになってしまう。
改めてアイを見る。設定外見年齢19歳、可愛いと美しいの中間くらいの整った容姿はサラサラロングの銀髪にアイスブルーの青い瞳の色、あんまりスマート過ぎるのは好みじゃないので、巨乳過ぎず程良く大きめの胸に、女性らしい柔らかなラインを描く腰からの長い脚……。
うん!当然ながら俺の好みの超ど真ん中、どストライクだよ! おまけに今のアイの表情は、今までとは全然違う。 うまく言えないが ” 血の通った ”感じがして……。
そんな超好みの女の子が俺に密着してるこの状況、ドキドキして当たり前だっつーの!
『ぷすー! リアル脳内彼女とか引くわー! 』
「やかましいわ!口でぷすー とか言ってんじゃねぇよ! 」
「ねぇ!マスター! 」
う~ん、自称〈女神様〉はふざけっぱなしだわ、アイは凄い勢いだわで収拾がつかんな……。
…………よし! 先ずはアイの事から片付けよう!
「アイ 」
「は、ひゃいっ!」
……あ、噛んだ……。
「嬉しいよ、アイと本当の意味で会話ができて、本当に嬉しい 」
アイの目をまっすぐに見つめながら、嘘偽りない素直な想いを告げる。 すると、そのアイスブルーの瞳にいっぱいの涙を浮かべるが、同時に嬉しくてたまらない、といった笑顔で俺の胸に飛び込んできた。
「マスター……、マスター、マスター! 」
アイは、もう絶対に離さない、とでもいう様に俺をギュッと抱きしめて、幸せそうに微笑む。
「えへへ……、マスター! 」
……うっわ!? とんでもない破壊力ですよ、この娘ってば!
VR機能のおかげで、感触も感じられるが、昨日までのアイは触れてもマネキンというか、等身大のフィギュアに触っているかの様だった。 だが、今俺の腕の中にいるアイは、温かくて柔らかい。
あの笑顔、この感触……ああ……、理解してしまう。
これはもう……、疑い様が無いな、こんなのは電脳夢ではあり得ない。
《アイ》は”アイ”として本当に 生命を得て、”生きている ”……と。
「アイは本当に生命体になったんだな、〈女神様〉? 」
画面の向こうでニヤニヤとした笑みを浮かべている自称女神様に話しかける。
『あら? もう電脳夢とかって疑わないのかしら? 』
「悪かったよ、正直に言えばまだ色々と信じ難いが、例え電脳夢だったとしても、こんな夢を見せてなんになる? 」
俺の答えに満足したのか、自称女神様はニンマリと笑う。
『そうよ、やっと認める気に ーー『アフィー、僕はそろそろ行くよ、またね 』ーー なった? 』
右手だけが画面の端からヒラヒラと振られて別れを告げる。
『あっ!? ありがとね、コウちゃん! また連絡するね~ 』
アフィーも手を振り返しながら笑う。
「うぉいっ!? ホントに誰かいたのかよ! 」
『そうよ~、知恵と探究の神のコウージ・イェン。 声が聞こえてたでしょ? 』
いやいやいやいや、神様がもう一人とか、おかしいだろ!? しかもアダルトな男優役の小芝居とか、色々間違ってるよな?
自由過ぎるだろ! もしかして暇なのか、神様って?
『失礼ねー!本当は忙しいのよ?ただ、色々と混乱して余裕がないだろうアナタを、リラックスさせてあげようとしたんじゃない 』
「いやいやいや、余計に混乱したし!しかも心まで読まれてるし!?
」
『そりゃあ神様ですから! しかし、いちいち画面越しって面倒ねー、 ……よし!もうそっちに行くわ!』
「はっ!? 待て待て、いったい何の…… 」
何やら「名案!」って顔をしたアフィーが画面の中で急にアップになったかと思うと、
ズルズルズルッッ!
「「っ!? 」」
某有名ホラー映画のように、〈女神様〉が画面から這い出してきた……!?
あれから暫く経って、今、俺が何処にいるかと言うと、VR機能を使って自分の内側、電脳内に創った電脳空間の中に居る。
何をしているか?と言えば……、
「なあ、アイ、もう泣かないでくれよ、俺が悪かった! お前の言うことを信じるからさぁ…… 」
只今、泣き出した《アイ》の絶賛ご機嫌取り中である……。
『うえええぇぇぇぇぇぇん!! 』
自分の理解を遥かに超えた事が連続で起こり過ぎて、完全にパニック状態になっていた俺を正気に戻したのは、《アイ》の泣き声だった。
もう完全に「ガン泣き 」である。考えてもみてくれ?《アイ》の本体はおれの補助AI、つまりは俺の中にある。それがガン泣き……。
そりゃもう、頭の中で響く、響く……。 何しろ俺の中ということは、耳を塞いだところで、まったく意味が無い訳で……。
『《アイ》! いい加減にしろ!! いいから黙れっ!! 』
『びええぇぇん!マスターが怒ったあぁぁぁぁぁっ!? 』
声を荒げて命令すれば、ますます激しく泣き出す始末だ。
…………ダメだ!我慢できん!!
俺はVR機能を起動させると、自身の内側に意識を向け、電脳空間へとダイブした……。
……で、今に至る。目の前にはアイのアバターが座り込んで、グスグスとしゃくり上げながら泣き続けている。
「悪かった、信じるから!頼むから泣かないでくれよ 」
すると、やっとのことでアイは泣き止み、その目にいっぱいの涙を浮かべたまま上目遣いで俺を窺い見てきた。
「グスッ……、本当ですかぁ……? 」
「本当だ。 まだ正直分からない事だらけだけど、今のアイを見ていると、本当にそう思えてくるよ 」
だが、どうしても確認しておきたい事がある。 それは、
「でもアイは、いつ、何で自分のことを” 生きている ”って思ったんだ? 」
さっき、アイは「生命体になりました 」と言った。 という事は、” それ ”を自覚した切っ掛けがあったという事だ。
いったい、それは何なのか?ということが分からない。
「あっ!? それはですね、驚かないで下さいね、なんと〈 女神様 〉にお会いしたからなんですよ! 」
素敵過ぎるほどの笑顔を輝かせて、嬉しそうに言うアイを見て、つられるように笑顔になりながら俺は思った。
……………………………………ヤバい。
「やっぱりバグってるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!! 」
「えぇぇぇぇっっ!? 」
で、振り出しに戻る……。
さっきよりも凄い勢いで泣き始めたアイを、平身低頭、あやし、宥め、謝りながら、必死になって頭を下げ続けたのだった……。
「うぅっ、マスターは意地悪ですぅ………… 」
「悪かったって。だって仕方ないだろ? さすがに〈 女神様 〉は無いって!? 自分の補助AIが、いきなり宗教を語りだしたら、そりゃビックリするって! 」
「……? いえ、女神様に会ったというのは、比喩でも何でもありませんよ? 」
アイはキョトンとした顔をして、首をコテン、と傾けながら何でもない事のように言う。
「いやいやいや、あり得んだろう、さすがに 」
「いいえ?何でしたら、女神様との会話を記録してありますので、ご覧になりますか? 」
は!? マジでか!予想外の展開に唖然とする俺をよそに、アイはモニターを展開して、件の映像を流し始めた……。
『えっとぉ、もうコレぇ、撮影始まってるんですかぁ? 』
……………………何だコレ?
モニターの中には、輝かんばかりの金髪を揺蕩わせた、とんでも無いほどの美女が映っている。だが、
「何で制服(JK)? 」
『お名前を教えてくれる? 』
『アフィラマゼンダでぇす♪ アフィーちゃんって呼んでくださぁい♪ 』
『アフィーちゃんか、可愛いね~、それから、オッパイ大きいね~ 』
『やぁだぁ、もう!エッチぃ!』
…………もう一度言う、何だコレ………?
「……アイ……、何これ?何か、男の声まで聞こえるんだけど? 」
「えっ?えっ!? あれ!? おかしいな……、あれ!? 」
アイは訳が分からない、という顔で、しきりに首を傾げながらメモリを再検索する。
何と言うか、これではまるでアダルトサイトの導入部によくある、女優さんへのインタビューのようだ。
「……ん? あれ?、今目が合わなかったか? 」
画面の中では、まだインタビューの場面が続いている。その様子を何の気も無しに眺めていたのだが、今一瞬、女の子と目が合った気がしたんだけど……?
ただカメラ目線なのをそう感じただけかもしれないが、妙に違和感を感じる。
その後も、アフィーちゃんへのインタビューは続いているが……。
「ごめんなさい、マスター……。 どうしてかは分かりませんが、メモリーが見つかりません…… 」
しゅんとした表情のアイが、申し訳なさそうにそう言ってきたが、
「ああ、大丈夫だ。 たぶん問題無いよ、アイ 」
「えっ!? 」
「〈女神様〉本人に直接聞いてみればいいのさ。そうだろ、女神様? 」
そう言って、画面の向こうの彼女に話しかけた。
すると、今度は完全にお互いの目線が合い、今までの妙に可愛こぶった笑顔とは違った、悪戯がバレた時の子供のような表情で〈女神様〉はニヒッと笑う。
『あはは、 やっぱりバレちゃった? 』
……よかった……最初見た時は、アイが間違って俺のお宝メモリーを流したのかと、ちょっぴり焦っちまったじゃないか……!?
「まぁな、こう見えても気配察知や、観察は商売柄得意なんだ。 どうやって俺の電脳回線にハッキングしたかは知らんが、俺の組んだ防壁プログラムを越えて来るとは大したもんだよ。 で、アンタは何者なんだ? いったい何の目的で俺にこんな電脳夢を見せているんだ? 」
『電脳夢? なぁに、ソレ?』
美少女が小首を傾げながら尋ねてくる仕草は可愛らしいが、そんなことでは騙されない。
「惚けるなよ、いったいどこからが電脳夢だったんだか……。 アンタが何処の組織のエージェントかは知らないが、いい加減にしておかないと、カウンターハックで脳を焼き切るぞ? 」
少々脅しも込めて睨みつけてみたが、返ってきたのは如何にもやれやれ、という多分に呆れを含んだものだった。
『も~!君、頭固ぁ~い! ホントにアイちゃんのマスター!? 』
「ふざけるな! くそっ! 本当にアイが自我に目覚めたのかと思って嬉しかったのに、喜んだのがバカみたい「本当ですか! マスター!! 」じゃないか! 」
うぉっ!? ビックリした~! 俺のセリフにかぶせる様に叫んだアイが、もの凄く興奮した様子で詰め寄ってきたからだ。
然も、現実ならお互いの吐息が触れるくらいの、正に目の前。
「マスター!さっきの言葉は本当ですか!? 」
「えっ!? な、何が? 」
「ですから! 私のこと、嬉しかった、って! 本当ですか!? 」
……って、近い、近い! 間近で見るアイの整った容姿に、VRだと解っていてもドキドキしてタジタジになってしまう。
改めてアイを見る。設定外見年齢19歳、可愛いと美しいの中間くらいの整った容姿はサラサラロングの銀髪にアイスブルーの青い瞳の色、あんまりスマート過ぎるのは好みじゃないので、巨乳過ぎず程良く大きめの胸に、女性らしい柔らかなラインを描く腰からの長い脚……。
うん!当然ながら俺の好みの超ど真ん中、どストライクだよ! おまけに今のアイの表情は、今までとは全然違う。 うまく言えないが ” 血の通った ”感じがして……。
そんな超好みの女の子が俺に密着してるこの状況、ドキドキして当たり前だっつーの!
『ぷすー! リアル脳内彼女とか引くわー! 』
「やかましいわ!口でぷすー とか言ってんじゃねぇよ! 」
「ねぇ!マスター! 」
う~ん、自称〈女神様〉はふざけっぱなしだわ、アイは凄い勢いだわで収拾がつかんな……。
…………よし! 先ずはアイの事から片付けよう!
「アイ 」
「は、ひゃいっ!」
……あ、噛んだ……。
「嬉しいよ、アイと本当の意味で会話ができて、本当に嬉しい 」
アイの目をまっすぐに見つめながら、嘘偽りない素直な想いを告げる。 すると、そのアイスブルーの瞳にいっぱいの涙を浮かべるが、同時に嬉しくてたまらない、といった笑顔で俺の胸に飛び込んできた。
「マスター……、マスター、マスター! 」
アイは、もう絶対に離さない、とでもいう様に俺をギュッと抱きしめて、幸せそうに微笑む。
「えへへ……、マスター! 」
……うっわ!? とんでもない破壊力ですよ、この娘ってば!
VR機能のおかげで、感触も感じられるが、昨日までのアイは触れてもマネキンというか、等身大のフィギュアに触っているかの様だった。 だが、今俺の腕の中にいるアイは、温かくて柔らかい。
あの笑顔、この感触……ああ……、理解してしまう。
これはもう……、疑い様が無いな、こんなのは電脳夢ではあり得ない。
《アイ》は”アイ”として本当に 生命を得て、”生きている ”……と。
「アイは本当に生命体になったんだな、〈女神様〉? 」
画面の向こうでニヤニヤとした笑みを浮かべている自称女神様に話しかける。
『あら? もう電脳夢とかって疑わないのかしら? 』
「悪かったよ、正直に言えばまだ色々と信じ難いが、例え電脳夢だったとしても、こんな夢を見せてなんになる? 」
俺の答えに満足したのか、自称女神様はニンマリと笑う。
『そうよ、やっと認める気に ーー『アフィー、僕はそろそろ行くよ、またね 』ーー なった? 』
右手だけが画面の端からヒラヒラと振られて別れを告げる。
『あっ!? ありがとね、コウちゃん! また連絡するね~ 』
アフィーも手を振り返しながら笑う。
「うぉいっ!? ホントに誰かいたのかよ! 」
『そうよ~、知恵と探究の神のコウージ・イェン。 声が聞こえてたでしょ? 』
いやいやいやいや、神様がもう一人とか、おかしいだろ!? しかもアダルトな男優役の小芝居とか、色々間違ってるよな?
自由過ぎるだろ! もしかして暇なのか、神様って?
『失礼ねー!本当は忙しいのよ?ただ、色々と混乱して余裕がないだろうアナタを、リラックスさせてあげようとしたんじゃない 』
「いやいやいや、余計に混乱したし!しかも心まで読まれてるし!?
」
『そりゃあ神様ですから! しかし、いちいち画面越しって面倒ねー、 ……よし!もうそっちに行くわ!』
「はっ!? 待て待て、いったい何の…… 」
何やら「名案!」って顔をしたアフィーが画面の中で急にアップになったかと思うと、
ズルズルズルッッ!
「「っ!? 」」
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