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後編
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「このホテルにしましょ」
優香さんが選んだのは、白とピンクの外壁が怪しい、分かりやすい外観のラブホテルだった。
「この部屋がいいんだけど……清掃に五分? 分かりました、待ってます」
優香さんがテキパキと受付を済ませている。
慣れてるなぁ、さすが清楚ビッチと噂の優香さん。
ぐへへ、年上のお姉さんに色々教えて貰っちゃうなんて、理想の童貞の捨て方じゃないか!
「部屋が空いてみたい。行きましょう、健太くん」
そう言ってエレベーターに乗り込む優香さん、俺も慌てて後を追う。
ついに俺も童貞卒業か……うぅう、緊張してきた。
男としての一大イベントだもんな、仕方ない。
今はこの瞬間に全身全霊を傾けないと!
だから――
(余計な事は考えるな! これ以上ブルマの謎の事は考えなくていいんだ!)
――俺は自分にそう言い聞かせた。
……………………
…………
……
海と空を思わせる青い壁紙と、太陽を思わせる黄色いライトアップ。
真ん中に大きなベッドがあり、周りにはモンステラの植木鉢がいくつもインテリアとして置かれている。
俺たちが倒されたのは、そんな南国風の部屋だ。
「あー! 見て見て、健太くん! ブルマのままテレビ出てるよ!」
優香さんが部屋に備え付けられた大型テレビを見てはしゃいでいる。
見るとテレビには昼の国民的生放送番組が流れていて、先ほど見たブルマ姿のまま出演しているクランキー土谷の姿があった。
それを見た俺は、少し嫌な気持ちになる。
あーダメだ、もう考えないって決めたのに……。
「やっぱり健太くんの推理が当たってたんだねー。って、聞いてる、健太くん?」
「あ……うん……」
「何でもいいけど先にシャワー浴びてね?」
「……分かりました」
優香さんに促され、オレはシャワーに向かう。
すると――
――俺が姿を消した後、先ほどまではしゃいでいた優香さんの様子が急に変わった。
神妙な面持ちでベットの横にしゃがみ込むと、ボックスシートをグイッと持ち上げる。
そして……優香さんはシートの下から男性用の服と鞄を取り出したのだった。
「それがクランキー土谷の服ですか? そんなところに隠してたんですね」
その様子を確認したオレは、優香さんに話しかける。
「――っ! けっ、健太くん!」
「やっぱり……そう言う事ですか、優香さん」
気付きたくはなかったけれど……気付いてしまったものはもうどうしようもない。
だから俺は真実を告げる。
「優香さん、貴方がフランキー土谷を陥れた犯人だったんですね」
俺のその言葉に、優香さんは激しい動揺を見せる。
「健太……どうして……いいえ、いつから気づいてたの?」
「おかしいと思ってたのは最初からです。急に俺をデートに誘うのも、こんなラブホ街をデートコースに選ぶのも、どう考えたって変でしょう?」
だからもしかしたら、デート以外に何か目的があるのかなって思ってたんだ。
「でもこれって、犯人が現場に戻る心理だったんですね」
「…………」
優香さんは沈黙で質問に答えた。
なので俺は推理を続ける。
「次に変だと思ったのは、優香さんがブルマ男をクランキー土谷だと見抜いた時です」
俺はブルマに目が行って、ブルマ男の顔なんて覚えてなかった。
でも優香さんは違った。
「あの一瞬すれ違っただけで、優香さんはすぐにクランキー土谷だと気づきましたよね? だからもしかして、優香さんは彼と知り合いなんじゃないかと思ったんです」
「……それだけ? それだけで私たちが知り合いだと見抜いたっていうの?」
「あ、いえ、その時はまだ疑問程度でしたね。確信したのは優香さんの失言ですよ」
「失言?」
優香さんは首を傾げる。どうやら心当たりはないようだ。
だが彼女は、たしかにこう言っていた。
『でも……じゃあどうして土谷くんはブルマ姿だったの?』
このとき彼女は、『クランキー土谷』の事を『土谷くん』と呼んでいる。
これは芸能人じゃなく知人を呼ぶときの呼称だ。
「優香さんが『クランキー土谷』の事を『土谷くん』と呼んでいるのを聞いて、俺は二人が知人だと確信したんです」
「……そうなんだ。私、そんな事言ってたのね。失敗したわ」
優香さんはそう言うと乾いた笑顔を見せる。
「だけど知人だというだけで犯人だとは思わないんじゃない? 他にまだあるのかな?」
「俺が犯人の動機を怨恨だと推理した時、優香さんは強引に昏睡強盗の仕業だという結論に持って行ったでしょう? あれを見て、優香さんは犯人の動機から目をそらそうとしているように感じました。それが優香さんを犯人じゃないかと疑った要因ですね。あとは……引っ掛けです」
「引っ掛け?」
「優香さんを疑った俺は、貴女を試す事にしました。『だとしたら犯人も馬鹿ですよね~』なんて言って、すぐにでも警察の介入があるように思わせた。もし優香さんが犯人なら、それで焦って何か行動を起こすんじゃないかと思って。そしたら案の定……」
その直後から優香さんは急にラブホ行きに積極的になった。
そして他には目もくれずにこのホテルへ入り、他に空き室があったのにもかかわらずこの部屋を選んだ。
それで俺は確信したんだ、優香さんが犯人だって。
「ここは昨日、クランキー土谷と来た部屋なんでしょう? だから優香さんはこの部屋を選んだ。隠した服を処分して証拠隠滅を図ると同時に、次の客として部屋に入っておくことで、現場に指紋があっても不自然ではない状況が出来上がりますからね」
つまり俺は、優香さんの隠蔽工作のために利用されたというわけだ。
黙ってしまった優香さんに、推理ではどうしてもわからなかった事を質問する。
「教えてくれませんか、優香さん。クランキー土谷と優香さん、いったいどういう関係なんですか?」
すると――「あーあ、失敗しちゃったわ」 ――と、肩をすくめる優香さん。
「つい好奇心に負けちゃって、悪戯半分に推理なんて言い出したのが間違いね」
そして優香さんは、自分の過去を語り始めた――。
「――私と土谷君は、小学校の同級生なの。
そして私はずっと土谷くんにいじめられてたわ。
面と向かった悪口や、肩や背中を小突かれたりと、された事は小さな事だった。
だけど何度も繰り返されるのが苦痛で、訴えてもだれも止めてくれず、卒業までずっと我慢を強いられていたのよ。
中学で彼と別の学校に通うことになってからは、普通の学園生活を送れるようになり、私も彼の存在をすっかり忘れていたわ。
それが……ある日のこと。テレビでそのいじめっ子を見つけたの。
どうやら彼は芸人になったようで、それから頻繁にテレビで見かけるようになった。
そのことに私は、とても腹立たしく感じていたわ。
タレントとして楽しくやってるのを見て、『私の事をいじめていた癖に』と悔しく思うようになっていたの。
とはいえテレビの中のタレントを相手に、私がいくら憤ったところでどうしようもなかったけれど。
だけど……昨日の事よ。
バイトからの帰り道、偶然彼と会ったの。
しかも私が誰だか分からない様子でナンパしてきたのよ。
その事がどうしても許せなくて、どうしても復讐したくなった。
それで――――後は健太くんの推理どおりよ。
私は不眠症改善に睡眠薬を処方されているの。
だからそれを使って土谷くんを眠らせて、昼の生放送に行けないよう服を隠してやったわ。
それが……まさかあんなブルマ姿で、テレビ局まで走っていくとは思わなかったけどね」
そこまで語ると、優香さんはフゥーっと大きく息をついた。
「それで……健太くん、どうするの? 私を警察に突き出すの?」
「い、いやいや! そんなは事考えてないですって!」
俺は慌てて否定する。
「俺、優香さんの気持ちすげー分かりますから! イジメ反対!」
そして(やっべ、夢中になりすぎた!)と、反省をする。
だって俺は童貞卒業したいだけなのに!
それがブルマの謎に夢中になってどうするんだよ、俺のバカ!
「…………」
無言になる優香さん。
どうしよう? なにかフォローしないと……。
と、そのとき――
『しかし土谷、お前もバカだなぁ~』
――テレビの中で、クランキー土谷に話しかけるMCの声が流れた。
『そんな変な女に騙されるなんて、何やってんだよお前』
『いやぁ、それがさっき思い出したんですけど……』
いまだにブルマ姿のままの、クランキー土谷が答える。
『アイツ、多分オレの同級生っスよ。随分とイジメちゃった事があるんで、それで仕返しされちゃったんすかねぇ?』
『なんだ、お前が悪かったの?』
『そうそう、自業自得っスね。だからこの事はもう忘れてください。こうしてネタになっただけでオッケーすよ』
そう言いへらへら笑うクランキー土谷。
どうやら警察に訴えたり、大事にする気は無いようだ。
「ほ、ほら優香さん、聞きました、今の?」
俺は精一杯フォローするため、テレビを食い入るように見る優香さんに話しかける。
「騙された相手もこう言ってますし……このことはもう忘れてしまいましょうよ」
「……そう、覚えてたんだアイツ……」
「というわけで優香さん、気持ちを切り替えましょうよ! ここがどこだと思ってるんですか? ラブホですよラブホ! 元気に楽しくヤることヤって、嫌なことはパーッと忘れてしまいましょう! ってことでまずは一緒にシャワーを……」
「……御免なさい、健太くん。今はそんな気分になれないわ」
そういうと優香さんは、そそくさと荷物をまとめて――
「今日は帰る。さよなら」
――そのまま部屋を出て行ってしまった。
「……デスヨネー」
そして、一人ラブホに取り残された俺。
「チクショー! 童貞捨てられなかったじゃねーか!」
やっぱりブルマ男の謎なんて放っておけばよかった!
そんな反省をしつつ、行き場をなくした性欲に悶々とするのであった。
エピローグ
――以上。
これが俺の体験した『ブルマ男の謎』にまつわるミステリーだ。
……どうだっただろうか?
恥を忍んで語った話だ、少しでも楽しんでもらえたら救われるよ。
あれから優香さんはクランキー土谷の元へ謝罪に行ったようだ。
どうなったか詳しくは聞いていないけど、吹っ切れた様子の優香さんを見ると、いい落としどころを見つけたようだ。
ちなみに俺と優香さんは、変わりない関係が続いている。
今までどおりバイトの先輩後輩で、それ以上の関係にはなれていない。
当然俺はいまだに童貞で……。
優香さん、なんとかもうワンチャンお願いします!
――それじゃ話ははこれでおしまいだ。
最後は謎かけで締めようと思う。
ブルマとかけまして――
童貞卒業の夢と解く――
その心は――
どちらも『はかない(穿かないor儚い)』ものでしょう。
――お後がよろしいようで。
優香さんが選んだのは、白とピンクの外壁が怪しい、分かりやすい外観のラブホテルだった。
「この部屋がいいんだけど……清掃に五分? 分かりました、待ってます」
優香さんがテキパキと受付を済ませている。
慣れてるなぁ、さすが清楚ビッチと噂の優香さん。
ぐへへ、年上のお姉さんに色々教えて貰っちゃうなんて、理想の童貞の捨て方じゃないか!
「部屋が空いてみたい。行きましょう、健太くん」
そう言ってエレベーターに乗り込む優香さん、俺も慌てて後を追う。
ついに俺も童貞卒業か……うぅう、緊張してきた。
男としての一大イベントだもんな、仕方ない。
今はこの瞬間に全身全霊を傾けないと!
だから――
(余計な事は考えるな! これ以上ブルマの謎の事は考えなくていいんだ!)
――俺は自分にそう言い聞かせた。
……………………
…………
……
海と空を思わせる青い壁紙と、太陽を思わせる黄色いライトアップ。
真ん中に大きなベッドがあり、周りにはモンステラの植木鉢がいくつもインテリアとして置かれている。
俺たちが倒されたのは、そんな南国風の部屋だ。
「あー! 見て見て、健太くん! ブルマのままテレビ出てるよ!」
優香さんが部屋に備え付けられた大型テレビを見てはしゃいでいる。
見るとテレビには昼の国民的生放送番組が流れていて、先ほど見たブルマ姿のまま出演しているクランキー土谷の姿があった。
それを見た俺は、少し嫌な気持ちになる。
あーダメだ、もう考えないって決めたのに……。
「やっぱり健太くんの推理が当たってたんだねー。って、聞いてる、健太くん?」
「あ……うん……」
「何でもいいけど先にシャワー浴びてね?」
「……分かりました」
優香さんに促され、オレはシャワーに向かう。
すると――
――俺が姿を消した後、先ほどまではしゃいでいた優香さんの様子が急に変わった。
神妙な面持ちでベットの横にしゃがみ込むと、ボックスシートをグイッと持ち上げる。
そして……優香さんはシートの下から男性用の服と鞄を取り出したのだった。
「それがクランキー土谷の服ですか? そんなところに隠してたんですね」
その様子を確認したオレは、優香さんに話しかける。
「――っ! けっ、健太くん!」
「やっぱり……そう言う事ですか、優香さん」
気付きたくはなかったけれど……気付いてしまったものはもうどうしようもない。
だから俺は真実を告げる。
「優香さん、貴方がフランキー土谷を陥れた犯人だったんですね」
俺のその言葉に、優香さんは激しい動揺を見せる。
「健太……どうして……いいえ、いつから気づいてたの?」
「おかしいと思ってたのは最初からです。急に俺をデートに誘うのも、こんなラブホ街をデートコースに選ぶのも、どう考えたって変でしょう?」
だからもしかしたら、デート以外に何か目的があるのかなって思ってたんだ。
「でもこれって、犯人が現場に戻る心理だったんですね」
「…………」
優香さんは沈黙で質問に答えた。
なので俺は推理を続ける。
「次に変だと思ったのは、優香さんがブルマ男をクランキー土谷だと見抜いた時です」
俺はブルマに目が行って、ブルマ男の顔なんて覚えてなかった。
でも優香さんは違った。
「あの一瞬すれ違っただけで、優香さんはすぐにクランキー土谷だと気づきましたよね? だからもしかして、優香さんは彼と知り合いなんじゃないかと思ったんです」
「……それだけ? それだけで私たちが知り合いだと見抜いたっていうの?」
「あ、いえ、その時はまだ疑問程度でしたね。確信したのは優香さんの失言ですよ」
「失言?」
優香さんは首を傾げる。どうやら心当たりはないようだ。
だが彼女は、たしかにこう言っていた。
『でも……じゃあどうして土谷くんはブルマ姿だったの?』
このとき彼女は、『クランキー土谷』の事を『土谷くん』と呼んでいる。
これは芸能人じゃなく知人を呼ぶときの呼称だ。
「優香さんが『クランキー土谷』の事を『土谷くん』と呼んでいるのを聞いて、俺は二人が知人だと確信したんです」
「……そうなんだ。私、そんな事言ってたのね。失敗したわ」
優香さんはそう言うと乾いた笑顔を見せる。
「だけど知人だというだけで犯人だとは思わないんじゃない? 他にまだあるのかな?」
「俺が犯人の動機を怨恨だと推理した時、優香さんは強引に昏睡強盗の仕業だという結論に持って行ったでしょう? あれを見て、優香さんは犯人の動機から目をそらそうとしているように感じました。それが優香さんを犯人じゃないかと疑った要因ですね。あとは……引っ掛けです」
「引っ掛け?」
「優香さんを疑った俺は、貴女を試す事にしました。『だとしたら犯人も馬鹿ですよね~』なんて言って、すぐにでも警察の介入があるように思わせた。もし優香さんが犯人なら、それで焦って何か行動を起こすんじゃないかと思って。そしたら案の定……」
その直後から優香さんは急にラブホ行きに積極的になった。
そして他には目もくれずにこのホテルへ入り、他に空き室があったのにもかかわらずこの部屋を選んだ。
それで俺は確信したんだ、優香さんが犯人だって。
「ここは昨日、クランキー土谷と来た部屋なんでしょう? だから優香さんはこの部屋を選んだ。隠した服を処分して証拠隠滅を図ると同時に、次の客として部屋に入っておくことで、現場に指紋があっても不自然ではない状況が出来上がりますからね」
つまり俺は、優香さんの隠蔽工作のために利用されたというわけだ。
黙ってしまった優香さんに、推理ではどうしてもわからなかった事を質問する。
「教えてくれませんか、優香さん。クランキー土谷と優香さん、いったいどういう関係なんですか?」
すると――「あーあ、失敗しちゃったわ」 ――と、肩をすくめる優香さん。
「つい好奇心に負けちゃって、悪戯半分に推理なんて言い出したのが間違いね」
そして優香さんは、自分の過去を語り始めた――。
「――私と土谷君は、小学校の同級生なの。
そして私はずっと土谷くんにいじめられてたわ。
面と向かった悪口や、肩や背中を小突かれたりと、された事は小さな事だった。
だけど何度も繰り返されるのが苦痛で、訴えてもだれも止めてくれず、卒業までずっと我慢を強いられていたのよ。
中学で彼と別の学校に通うことになってからは、普通の学園生活を送れるようになり、私も彼の存在をすっかり忘れていたわ。
それが……ある日のこと。テレビでそのいじめっ子を見つけたの。
どうやら彼は芸人になったようで、それから頻繁にテレビで見かけるようになった。
そのことに私は、とても腹立たしく感じていたわ。
タレントとして楽しくやってるのを見て、『私の事をいじめていた癖に』と悔しく思うようになっていたの。
とはいえテレビの中のタレントを相手に、私がいくら憤ったところでどうしようもなかったけれど。
だけど……昨日の事よ。
バイトからの帰り道、偶然彼と会ったの。
しかも私が誰だか分からない様子でナンパしてきたのよ。
その事がどうしても許せなくて、どうしても復讐したくなった。
それで――――後は健太くんの推理どおりよ。
私は不眠症改善に睡眠薬を処方されているの。
だからそれを使って土谷くんを眠らせて、昼の生放送に行けないよう服を隠してやったわ。
それが……まさかあんなブルマ姿で、テレビ局まで走っていくとは思わなかったけどね」
そこまで語ると、優香さんはフゥーっと大きく息をついた。
「それで……健太くん、どうするの? 私を警察に突き出すの?」
「い、いやいや! そんなは事考えてないですって!」
俺は慌てて否定する。
「俺、優香さんの気持ちすげー分かりますから! イジメ反対!」
そして(やっべ、夢中になりすぎた!)と、反省をする。
だって俺は童貞卒業したいだけなのに!
それがブルマの謎に夢中になってどうするんだよ、俺のバカ!
「…………」
無言になる優香さん。
どうしよう? なにかフォローしないと……。
と、そのとき――
『しかし土谷、お前もバカだなぁ~』
――テレビの中で、クランキー土谷に話しかけるMCの声が流れた。
『そんな変な女に騙されるなんて、何やってんだよお前』
『いやぁ、それがさっき思い出したんですけど……』
いまだにブルマ姿のままの、クランキー土谷が答える。
『アイツ、多分オレの同級生っスよ。随分とイジメちゃった事があるんで、それで仕返しされちゃったんすかねぇ?』
『なんだ、お前が悪かったの?』
『そうそう、自業自得っスね。だからこの事はもう忘れてください。こうしてネタになっただけでオッケーすよ』
そう言いへらへら笑うクランキー土谷。
どうやら警察に訴えたり、大事にする気は無いようだ。
「ほ、ほら優香さん、聞きました、今の?」
俺は精一杯フォローするため、テレビを食い入るように見る優香さんに話しかける。
「騙された相手もこう言ってますし……このことはもう忘れてしまいましょうよ」
「……そう、覚えてたんだアイツ……」
「というわけで優香さん、気持ちを切り替えましょうよ! ここがどこだと思ってるんですか? ラブホですよラブホ! 元気に楽しくヤることヤって、嫌なことはパーッと忘れてしまいましょう! ってことでまずは一緒にシャワーを……」
「……御免なさい、健太くん。今はそんな気分になれないわ」
そういうと優香さんは、そそくさと荷物をまとめて――
「今日は帰る。さよなら」
――そのまま部屋を出て行ってしまった。
「……デスヨネー」
そして、一人ラブホに取り残された俺。
「チクショー! 童貞捨てられなかったじゃねーか!」
やっぱりブルマ男の謎なんて放っておけばよかった!
そんな反省をしつつ、行き場をなくした性欲に悶々とするのであった。
エピローグ
――以上。
これが俺の体験した『ブルマ男の謎』にまつわるミステリーだ。
……どうだっただろうか?
恥を忍んで語った話だ、少しでも楽しんでもらえたら救われるよ。
あれから優香さんはクランキー土谷の元へ謝罪に行ったようだ。
どうなったか詳しくは聞いていないけど、吹っ切れた様子の優香さんを見ると、いい落としどころを見つけたようだ。
ちなみに俺と優香さんは、変わりない関係が続いている。
今までどおりバイトの先輩後輩で、それ以上の関係にはなれていない。
当然俺はいまだに童貞で……。
優香さん、なんとかもうワンチャンお願いします!
――それじゃ話ははこれでおしまいだ。
最後は謎かけで締めようと思う。
ブルマとかけまして――
童貞卒業の夢と解く――
その心は――
どちらも『はかない(穿かないor儚い)』ものでしょう。
――お後がよろしいようで。
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