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前編
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プロローグ
皆さんは『九マイルは遠すぎる』という推理小説を知っているだろうか?
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。まして雨の中となるとなおさらだ」
――というたった一言から、主人公たちは推論のみで、とある事件の真相へたどり着く。
そんな有名なミステリー小説だ。
その魅力はやはり、純粋な論理的思考のみで謎を解く、その圧巻のカタルシスだろう。
実は……最近、俺も同じような経験をしたんだ。
たった一つの事象から、その背後にある事件を、推論のみで読み解くという、まさに推理小説のような経験を。
ただし――
俺の場合はたった一言じゃない。
俺が経験したのは――
たった一着の体操服(ブルマ仕様)だったんだ。
*
梅雨も明けて初夏の日差しが眩しいある日の朝。
授業も午後からという事で、暑さを避けクーラーの効いた自室でゴロゴロしていると、まだ午前中だというのに珍しくスマホが鳴った。
「ねぇ健太くん、今からデートしない?」
そう電話してきたのはバイトの同僚の優香先輩。
俺より二つ上、お嬢様大学の三年生だ。
さらには清楚美人に見えてすぐやらせてくれるビッチだというもっぱらの噂!
そんな優香さんからデートのお誘いが来るなんて――!
「はい! どこにでも行きます!」
俺はそう即答すると、いそいそと出かける準備を始めた。
もしかして今日、童貞卒業しちゃうかも? ……なんて期待に胸を膨らませながら。
童貞卒業――それは男の夢だ。
二十代の四分の一が童貞と言われる昨今、別に童貞であることに忌避感などはないし、「何が何でも童貞卒業したい!」なんてのはもう流行らない。
けれど……優香さんみたいな美人とヤれるんなら話は別だ!
――ヤッてやる! 今日で童貞卒業してみせる!
俺はそんな思いを胸に、その日あった大学の講義をサボって待ち合わせ場所に向かった。
*
待ち合わせの駅へ到着したのは、正午まであと十分と少しといった頃。
改札を抜けると、優香さんの姿があった。
どうやら先に着いていた様子。
「健太くん、早かったね」
そう言って俺を迎えてくれた優香さん。
黒髪ロングに大きな瞳が特徴的な清楚美人だ。
「そりゃもちろん! 優香さんを待たせるわけにはいかないっスから!」
俺は勢い込んでそう答え、今日の優香さんを観察する。
白いハイネックシャツにベージュのフレアスカート。
その出で立ちはまさに深窓の令嬢といった装いだ。
まさかこんな彼女が、誰でもやらせてくれるビッチだなんて信じられないなぁ。
……あ、いや。
あくまでそんな噂を聞いただけで、本当かどうかは知らないんだけど……。
「それじゃ行きましょうか」
優香さんが先導して歩き出す。
改札口を抜け、夏の日差しの強い駅の外へ。
そして向かった先は……
……え? ラブホ街?
朝っぱらから盛ったカップルが、怪しげなホテルから出たり入ったり……。
そんな街中を平気な顔で進む優香先輩。
電話では行きたいところがあるって言っていたけれど……それってここ?
もしかして噂は本当で、いまから俺の童貞が奪われちゃうんじゃ……。
や、やばい、緊張してきた……。
「どうしたの、健太くん。変な顔して?」
「い、いやその、優香先輩の目的地って……」
「ああ、この先にある映画館よ。今日封切りの映画がどうしても見たかったんだけど、一緒に行ってくれる人がいなくて……。付き合ってくれてありがとう、健太くん」
「……デスヨネー」
分かってた、そんな事だろうと分かってたさ。
噂なんて所詮はそんなものだよね……。
ゴメンよ息子、お前はまだ当分未使用のままみたいだ……。
「……なに、健太くん。もしかしてラブホテルに入りたかったの?」
ぬぁっ? どうしてバレた?
「い、いやいや、そんな滅相もない!」
「そう? それじゃ健太くんは私に魅力を感じないんだ……」
「はぇ? ち、違います! そういう意味じゃなくて……! 先輩はメッチャ魅力的っス!」
「ホント? 嬉しい。それじゃ……一緒にラブホに入る?」
……へ? 今何と?
「今日映画に付き合ってくれたお礼に、後でラブホテルに付き合ってあげてもいいよ?」
……マジで?
「……もしかして迷惑だった?」
「そ、そんな事ありません! 嬉しいっス!」
俺は慌てて否定する。
ままま、まさかあの噂は本当だったのか!
ありがとう、優香先輩、マジビッチで!
「……そう? それじゃ映画の後でね♡」
そう言って笑う優香先輩、マジ小悪魔的。
こんな可愛い人に童貞捧げられるなんて嬉し過ぎる!
俺がそんな幸せに感動していると――
「きゃぁあああっ! 変態!」
そんな叫び声がラブホ街に響き渡った。
声のした方へ注意を向けると、なんと――
ラブホ街の奥の道からこちらへ全力疾走してくる男がいる。
しかもその恰好だけど……なぜか変な体操着を着ていた。
「あれって……ブルマってやつじゃないか?」
昔はああいう下着みたいな恰好で運動をしていたと、テレビのバラエティか何かで見たことがあった。
しかもそれを穿いているのがマッチョな男で、取り合わせがとても変態感を醸し出している。
「きゃっ! なにあのへんな人?」
優香さんは慌ててオレの背中に隠れる。
ブルマ姿の変態男は、一直線にこちらへと走って来て――
「ちょっ、何でこっちに? うわぁあああああ……あ?」
――そのままブルマ男は、オレの横を走り抜けていった。
「な、何だ今の変態……?」
思わず振り返り、ブルマ男の走り去る後姿を目で追っていると……。
「おいお前! 何だそのブルマ姿は?」
あ、途中で警官に呼び止められた。
「君! 何でそんな恰好をしてるんだ?」
「知るか! こっちが聞きたいわ! 俺だって好きで穿いたんじゃねぇんだよ!」
「ともかくそんな恰好の人間を放っておくわけにはいかん。ちょっと来なさい!」
「急いでんだ、邪魔すんな!」
警官に連行されそうになったブルマ男は、勢いよくドンッと警官を突き飛ばす。
「うおっ!」
思わず声を上げて警官がよろめいた。
その隙をついてブルマ男は走り去る。
警官は「待てっ!」と追いかけようとしたが、あっという間に去っていったブルマ男に諦めた様子で、途中の交番へと帰っていった。
「な、何だ今の……?」
思わずそうつぶやくと、俺は首を横に振る。
嫌なものを見たから早く忘れたいと思ったのだ。
だが――
「これは……不思議だわ!」
ブルマ男の去っていった先を見つめ、キラキラと目を輝かせる優香さん。
どうやら優香さんはブルマ男に興味津々の様子。
「ねぇ健太くん、気にならない? いまの人が着てたの、ブルマってやつよね? 昔の女性用体操着の。男なのになんであんな格好してたの? というか、どうして令和の時代にそんな衣装が存在してるの?」
「……って、さぁ? 別にどうでもいいでしょ、そんな事」
「え、何で? 私、こんなに気になってるのに……」
プクゥっと可愛く頬を膨らます優香さんに、オレは慌ててフォローを入れる。
「い、いやホラ、だって映画見に行くんでしょう? あんな変態に関わってる場合じゃ……」
「健太くんつまんな~い。何か嫌いになりそ~」
「なっ! そんなぁ!」
それは困る! せっかくの童貞卒業のチャンスなのに!
「ねぇ、健太くんも考えてよ。さっきの人がどうしてブルマ姿だったのか?」
「どうしてって言われても……」
「私、気になる事があると、他の事がどうでもよくなっちゃうのよね。例えば映画とか、映画の後の事とか……」
「分かりました! 一生懸命考えましょう!」
正直ブルマ男の事なんてどうでもいいけど、童貞卒業が掛かってるなら話は別だ。
いつまでも二十代の四分の一に甘んじているわけにはいかないからな。
とはいえ……ブルマ姿の理由なんて何がある?
「うーん、そういう女装趣味の人だったから?」
――そのくらいしか思いつかないんだけど。
だけど優香さんはそれを否定してくる。
「違うわよ。だってあの人言ってたじゃない。呼び止めてきた警官を相手に、『好きでやってんじゃねぇから!』って」
そういえばそんな事を言っていたような……。
好きでやってんじゃないなら、当然個人の趣味とは考えられないな。
だとしたら他に考えられるのは……。
「じゃあ何かの罰ゲームとか? 『じゃんけんに負けたやつがブルマを穿け!』……みたいな?」
うん、これはありそうじゃね?
コレは正解かと喜んだのもつかの間――
「それもないんじゃない、健太くん?」
――と、これも裕子さんに却下されてしまった。
「ど、どうしてですか、優香さん?」
「だって、ちゃんと思い出してみてよ。あのブルマさんと警官のやり取り」
言われて記憶をたどってみる。
たしかあの時は――
〇警官の台詞
『君! 何でそんな恰好をしてるんだ?』
〇ブルマ男の台詞
『知るか! こっちが聞きたいわ! 俺だって好きで穿いたんじゃねぇんだよ!』
――って感じだったっけ。
……言われてみれば確かにおかしいな。
この時のブルマ男が言った『知るか! こっちが聞きたいわ!』には、この状況になった原因を知らないという意味が含まれている。
「どう、健太くん? もし罰ゲームでやらさせれているなら、自分がなぜブルマ姿なのかハッキリとした原因を把握していたハズよ。だったら『知るか! こっちが聞きたいわ!』とは答えなかったんじゃないかな?」
「ぐぬぬ……たしかに……」
正解だと思っていた俺は、そんな優香さんの意見に、思わずガックリと肩を落としてしまう。
「えー……。じゃあ分かんないっスよ、もう」
「何よ健太くん。せっかくの謎なのにノリ悪くない?」
「そう言われても……」
だってこれ以上手がかりもないし、推理のしようが無いと思うんだけど……。
そんな事より、早く映画行ってそのあとラブホに行きて~!
……そんな俺の本音を察したのか――
「じゃあこうしましょう」
――と、優香さんが提案してくる。
「もし健太くんがブルマの謎を解いたら、ご褒美にラブホテルに一緒に入ってあげる♡」
「……何ですと?」
「その代わり、解けなかったら今日は何もせず解散ね」
「そんな!」
それはアカンから! もうセッ〇スする気持ちになってるから!
「どうするの、健太くん?」
そう言うと挑戦的に笑う優香さん。
ぐぬぬ……この小悪魔系女子め!
俺だってここまで来て引き下がれるわけがない。
「わ、分かりました! ブルマの謎を解いて見せましょう!」
「ホント? 嬉しー! でも健太くんに解けるのかしら?」
その言葉に、俺は謎解きではなく謎かけを思いつく。
「ラブホテルとかけまして、このあとの俺の推理と解く」
「……? その心は?」
「どっちも『せいこう』するでしょう!」
俺の『性交』と『成功』をかけた渾身の謎かけに――
「……さ、行きましょう」
――優香さんはスルーすると決めたようだった。
皆さんは『九マイルは遠すぎる』という推理小説を知っているだろうか?
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。まして雨の中となるとなおさらだ」
――というたった一言から、主人公たちは推論のみで、とある事件の真相へたどり着く。
そんな有名なミステリー小説だ。
その魅力はやはり、純粋な論理的思考のみで謎を解く、その圧巻のカタルシスだろう。
実は……最近、俺も同じような経験をしたんだ。
たった一つの事象から、その背後にある事件を、推論のみで読み解くという、まさに推理小説のような経験を。
ただし――
俺の場合はたった一言じゃない。
俺が経験したのは――
たった一着の体操服(ブルマ仕様)だったんだ。
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梅雨も明けて初夏の日差しが眩しいある日の朝。
授業も午後からという事で、暑さを避けクーラーの効いた自室でゴロゴロしていると、まだ午前中だというのに珍しくスマホが鳴った。
「ねぇ健太くん、今からデートしない?」
そう電話してきたのはバイトの同僚の優香先輩。
俺より二つ上、お嬢様大学の三年生だ。
さらには清楚美人に見えてすぐやらせてくれるビッチだというもっぱらの噂!
そんな優香さんからデートのお誘いが来るなんて――!
「はい! どこにでも行きます!」
俺はそう即答すると、いそいそと出かける準備を始めた。
もしかして今日、童貞卒業しちゃうかも? ……なんて期待に胸を膨らませながら。
童貞卒業――それは男の夢だ。
二十代の四分の一が童貞と言われる昨今、別に童貞であることに忌避感などはないし、「何が何でも童貞卒業したい!」なんてのはもう流行らない。
けれど……優香さんみたいな美人とヤれるんなら話は別だ!
――ヤッてやる! 今日で童貞卒業してみせる!
俺はそんな思いを胸に、その日あった大学の講義をサボって待ち合わせ場所に向かった。
*
待ち合わせの駅へ到着したのは、正午まであと十分と少しといった頃。
改札を抜けると、優香さんの姿があった。
どうやら先に着いていた様子。
「健太くん、早かったね」
そう言って俺を迎えてくれた優香さん。
黒髪ロングに大きな瞳が特徴的な清楚美人だ。
「そりゃもちろん! 優香さんを待たせるわけにはいかないっスから!」
俺は勢い込んでそう答え、今日の優香さんを観察する。
白いハイネックシャツにベージュのフレアスカート。
その出で立ちはまさに深窓の令嬢といった装いだ。
まさかこんな彼女が、誰でもやらせてくれるビッチだなんて信じられないなぁ。
……あ、いや。
あくまでそんな噂を聞いただけで、本当かどうかは知らないんだけど……。
「それじゃ行きましょうか」
優香さんが先導して歩き出す。
改札口を抜け、夏の日差しの強い駅の外へ。
そして向かった先は……
……え? ラブホ街?
朝っぱらから盛ったカップルが、怪しげなホテルから出たり入ったり……。
そんな街中を平気な顔で進む優香先輩。
電話では行きたいところがあるって言っていたけれど……それってここ?
もしかして噂は本当で、いまから俺の童貞が奪われちゃうんじゃ……。
や、やばい、緊張してきた……。
「どうしたの、健太くん。変な顔して?」
「い、いやその、優香先輩の目的地って……」
「ああ、この先にある映画館よ。今日封切りの映画がどうしても見たかったんだけど、一緒に行ってくれる人がいなくて……。付き合ってくれてありがとう、健太くん」
「……デスヨネー」
分かってた、そんな事だろうと分かってたさ。
噂なんて所詮はそんなものだよね……。
ゴメンよ息子、お前はまだ当分未使用のままみたいだ……。
「……なに、健太くん。もしかしてラブホテルに入りたかったの?」
ぬぁっ? どうしてバレた?
「い、いやいや、そんな滅相もない!」
「そう? それじゃ健太くんは私に魅力を感じないんだ……」
「はぇ? ち、違います! そういう意味じゃなくて……! 先輩はメッチャ魅力的っス!」
「ホント? 嬉しい。それじゃ……一緒にラブホに入る?」
……へ? 今何と?
「今日映画に付き合ってくれたお礼に、後でラブホテルに付き合ってあげてもいいよ?」
……マジで?
「……もしかして迷惑だった?」
「そ、そんな事ありません! 嬉しいっス!」
俺は慌てて否定する。
ままま、まさかあの噂は本当だったのか!
ありがとう、優香先輩、マジビッチで!
「……そう? それじゃ映画の後でね♡」
そう言って笑う優香先輩、マジ小悪魔的。
こんな可愛い人に童貞捧げられるなんて嬉し過ぎる!
俺がそんな幸せに感動していると――
「きゃぁあああっ! 変態!」
そんな叫び声がラブホ街に響き渡った。
声のした方へ注意を向けると、なんと――
ラブホ街の奥の道からこちらへ全力疾走してくる男がいる。
しかもその恰好だけど……なぜか変な体操着を着ていた。
「あれって……ブルマってやつじゃないか?」
昔はああいう下着みたいな恰好で運動をしていたと、テレビのバラエティか何かで見たことがあった。
しかもそれを穿いているのがマッチョな男で、取り合わせがとても変態感を醸し出している。
「きゃっ! なにあのへんな人?」
優香さんは慌ててオレの背中に隠れる。
ブルマ姿の変態男は、一直線にこちらへと走って来て――
「ちょっ、何でこっちに? うわぁあああああ……あ?」
――そのままブルマ男は、オレの横を走り抜けていった。
「な、何だ今の変態……?」
思わず振り返り、ブルマ男の走り去る後姿を目で追っていると……。
「おいお前! 何だそのブルマ姿は?」
あ、途中で警官に呼び止められた。
「君! 何でそんな恰好をしてるんだ?」
「知るか! こっちが聞きたいわ! 俺だって好きで穿いたんじゃねぇんだよ!」
「ともかくそんな恰好の人間を放っておくわけにはいかん。ちょっと来なさい!」
「急いでんだ、邪魔すんな!」
警官に連行されそうになったブルマ男は、勢いよくドンッと警官を突き飛ばす。
「うおっ!」
思わず声を上げて警官がよろめいた。
その隙をついてブルマ男は走り去る。
警官は「待てっ!」と追いかけようとしたが、あっという間に去っていったブルマ男に諦めた様子で、途中の交番へと帰っていった。
「な、何だ今の……?」
思わずそうつぶやくと、俺は首を横に振る。
嫌なものを見たから早く忘れたいと思ったのだ。
だが――
「これは……不思議だわ!」
ブルマ男の去っていった先を見つめ、キラキラと目を輝かせる優香さん。
どうやら優香さんはブルマ男に興味津々の様子。
「ねぇ健太くん、気にならない? いまの人が着てたの、ブルマってやつよね? 昔の女性用体操着の。男なのになんであんな格好してたの? というか、どうして令和の時代にそんな衣装が存在してるの?」
「……って、さぁ? 別にどうでもいいでしょ、そんな事」
「え、何で? 私、こんなに気になってるのに……」
プクゥっと可愛く頬を膨らます優香さんに、オレは慌ててフォローを入れる。
「い、いやホラ、だって映画見に行くんでしょう? あんな変態に関わってる場合じゃ……」
「健太くんつまんな~い。何か嫌いになりそ~」
「なっ! そんなぁ!」
それは困る! せっかくの童貞卒業のチャンスなのに!
「ねぇ、健太くんも考えてよ。さっきの人がどうしてブルマ姿だったのか?」
「どうしてって言われても……」
「私、気になる事があると、他の事がどうでもよくなっちゃうのよね。例えば映画とか、映画の後の事とか……」
「分かりました! 一生懸命考えましょう!」
正直ブルマ男の事なんてどうでもいいけど、童貞卒業が掛かってるなら話は別だ。
いつまでも二十代の四分の一に甘んじているわけにはいかないからな。
とはいえ……ブルマ姿の理由なんて何がある?
「うーん、そういう女装趣味の人だったから?」
――そのくらいしか思いつかないんだけど。
だけど優香さんはそれを否定してくる。
「違うわよ。だってあの人言ってたじゃない。呼び止めてきた警官を相手に、『好きでやってんじゃねぇから!』って」
そういえばそんな事を言っていたような……。
好きでやってんじゃないなら、当然個人の趣味とは考えられないな。
だとしたら他に考えられるのは……。
「じゃあ何かの罰ゲームとか? 『じゃんけんに負けたやつがブルマを穿け!』……みたいな?」
うん、これはありそうじゃね?
コレは正解かと喜んだのもつかの間――
「それもないんじゃない、健太くん?」
――と、これも裕子さんに却下されてしまった。
「ど、どうしてですか、優香さん?」
「だって、ちゃんと思い出してみてよ。あのブルマさんと警官のやり取り」
言われて記憶をたどってみる。
たしかあの時は――
〇警官の台詞
『君! 何でそんな恰好をしてるんだ?』
〇ブルマ男の台詞
『知るか! こっちが聞きたいわ! 俺だって好きで穿いたんじゃねぇんだよ!』
――って感じだったっけ。
……言われてみれば確かにおかしいな。
この時のブルマ男が言った『知るか! こっちが聞きたいわ!』には、この状況になった原因を知らないという意味が含まれている。
「どう、健太くん? もし罰ゲームでやらさせれているなら、自分がなぜブルマ姿なのかハッキリとした原因を把握していたハズよ。だったら『知るか! こっちが聞きたいわ!』とは答えなかったんじゃないかな?」
「ぐぬぬ……たしかに……」
正解だと思っていた俺は、そんな優香さんの意見に、思わずガックリと肩を落としてしまう。
「えー……。じゃあ分かんないっスよ、もう」
「何よ健太くん。せっかくの謎なのにノリ悪くない?」
「そう言われても……」
だってこれ以上手がかりもないし、推理のしようが無いと思うんだけど……。
そんな事より、早く映画行ってそのあとラブホに行きて~!
……そんな俺の本音を察したのか――
「じゃあこうしましょう」
――と、優香さんが提案してくる。
「もし健太くんがブルマの謎を解いたら、ご褒美にラブホテルに一緒に入ってあげる♡」
「……何ですと?」
「その代わり、解けなかったら今日は何もせず解散ね」
「そんな!」
それはアカンから! もうセッ〇スする気持ちになってるから!
「どうするの、健太くん?」
そう言うと挑戦的に笑う優香さん。
ぐぬぬ……この小悪魔系女子め!
俺だってここまで来て引き下がれるわけがない。
「わ、分かりました! ブルマの謎を解いて見せましょう!」
「ホント? 嬉しー! でも健太くんに解けるのかしら?」
その言葉に、俺は謎解きではなく謎かけを思いつく。
「ラブホテルとかけまして、このあとの俺の推理と解く」
「……? その心は?」
「どっちも『せいこう』するでしょう!」
俺の『性交』と『成功』をかけた渾身の謎かけに――
「……さ、行きましょう」
――優香さんはスルーすると決めたようだった。
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