【第一章】‐壱‐ 彼は獣医師だった。

〈五節〉蛍

僕「……………」




老人「…あぁ、すまんな。ただの思い出話じゃよ。」










その老人は今にも消えそうな声で話してくれた。








きっと…____





僕「幸せだったでしょうね…。イタズラするのも、かまってほしかったんだと思います。」




老人「そうかのう……」














ペットは飼い主に依存していて、

その関係が保たれなければ生きていけない生き物たち…。



勿論、それが必ずしもイイ関係とは限らない。









少なくともペットたちはその生涯の中で「しあわせ」を得ている。




あの仔こにもあったはずだ。







怖かっただろう…


熱くて、苦しくて、朦朧もうろうとした中で



思っただろう…




















僕「君は幸せだったかい？」





犬「……………」


















君もきっと幸せな日々があったはずだ。


そうでなくとも、これから幸せになることだって…














その時、辺りが一瞬にして暗く…

且つ微かすかに舞う光が視界を支配する。










思わず両腕で顔を隠し、目を瞑つむる











恐る恐る目を開けると、








僕「……蛍ほたる…？」















老人「幸せにできず、すまなかった…」


犬「…ｸｩｰﾝ……」










先程の老人だろうか

少し若く見える




傍そばにいるのは真っ白な犬。



大きさや骨格から見て、あの痛々しい犬だろうか…










自分が置かれている状況を受け止めきれず、ただその光景を黙って見ていた。


老人だったであろう人物は静かに僕に近づくと、

















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