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〈三節〉老人
しおりを挟む老人「何かね?」
引き止めて何になる…
話したところで理解する…?
同意を得られる…?
いや、それ以前に…………
僕「……僕は…獣医師です。その子の治療をさせて下さい…!」
そう、僕は獣医師だ。
常に動物の味方でなければいけない。
勤務時間終わってるのに…
そんなの思うだけで、後々後悔する…
今すぐ治療しないと、
__あの仔はきっと死ぬ____
ずっと一緒にいるって事は、
あの老人に何かあるんだ。
傍にいたい理由があるんだ。
老人「…ほう。動物のお医者さんか。わしが飼っている訳ではないが…。流石に可哀想でのう。」
そう言うと老人は戻ってきた。
そして犬も方向転換して歩いてくる。
戻ってきてもらったのはいいが、
正直この状態の犬を素手で触れたくはない…。
僕が悩んでいると…
老人「昔、犬を飼っていてな…」
僕「え?」
老人は語り出した。
去年の話だそうだ……____
その老人は妻と二人で暮らしていた。
息子さん・娘さんは出て行ってしまい、寂しくなった二人は一匹の犬を知り合いから譲ってもらったらしい。
その犬の名は「雪」
真っ白な毛並みと、穏やかな性格の犬。
少しイタズラが過ぎる様で、怒ってしまう時も多々あったとか。
ある日の外出中。
携帯に着信が入る…
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